2008年 07月 05日
Lehmanと謎のヘッジファンド? |
先月に、投資銀行大手のLehman BrothersのCFOと、自らのショートポジションについて公言する珍しい戦略を取っているヘッジファンド、Greenlight Capitalとの対峙の話を書きましたが、あれから1ヶ月の間に色々な変化がありました。
既に広く報道された所ですが、まずLehmanのCFOは、6月の早い時点で退任に追い込まれました。彼女はもともとバンカーであったのを、CFOのポジションに抜擢されていたのですが、株価急落の責任を取る形で、同社の社長と共に職を去ることになったようです。(と言っても解雇されたわけではなく、とりあえず元のバンカー職に戻るそうですが。)

そしてLehmanの株価を見る限りでは、GreenlightのEinhorn氏は、今のところその賭けに勝ち続けているようです。同社は6月に弱気の業績予想や追加のエクイティ調達を発表し、株価は6月頭の$30前後から、Bear Stearnsが事実上の破綻に追い込まれた3月の場中につけた、$20レベルまで低下しています。(3月当時も終値は$30を越えていたと思います。)
しかし今日触れたかったのはその話ではなく、7月3日のBloombergのコラムに掲載された、「Lehman's Hedge-Fund Deals Leave Public in Dark(Lehmanのヘッジファンド取引は一般株主をけむに巻く)」という話についてです。
『あなたがLehman Brothersの幹部だったとして、同社が次のBear Stearnsになるのを何とか防ごうとしているとします。株価は暴落し、市場はあなたのバランスシートの健全さを疑っているようです。さあ、あなたならどうしますか?』・・・そのような語りかけで始まっているこのコラムでは、続いてこのように言っています。
『これだけは避けた方が良いというステップがあります。それは会社の財務状況について、不必要な疑義を作り出すことです。と言うのは、一般株主が一番恐れるのは「Unknown(未知数さ)」だからです。』
・・・しかしこのコラムや別のBloombergの記事によると、Lehmanは、$4.5bn(約4700億円)の同社資産を、以下のような条件で設立された新規のヘッジファンド、R3 Capital Partnersに売却することを決めたそうです。
1)Lehmanが主要な投資家の1社である
2)Lehmanの元幹部たち7人によって管理される
3)Lehmanが賃借しているオフィス内で運営される
同ファンドは6月12日時点で、「匿名のある一名の投資家」から$1.08bn(約1130億円)を調達し、追加で$4bn(約4200億円)を別の投資家から募る予定だそうです。LehmanとR3は「両者は全く独立して経営されている」としており、売却された資産は、R3の創立者達がもともとLehman時代に管理していたものであり、LehmanからR3への資産売却は、いわゆる「関連会社取引」には当たらないと主張しているそうです。
しかしこのコラムニストは、このような両社の主張に強い疑問を呈しています。(と言うよりも、「私じゃなくても何かおかしいと感じませんか?」といった主張をしていると言った方が正しいかもしれません。)
同氏は、Lehmanのスポークスパーソンが、$4.5bnという価格がLehmanがバランスシート上でその資産を評価していた額なのか、R3がつけたマーケット価格なのかについてコメント出来ないとしている点、また、Lehmanはこのヘッジファンドの受動的投資家の一人に過ぎず、いかなる取引に対しても経営権の影響力を及ぼしていないと主張している点に、以下のように言っています。
『これをどう考えるべきかって?さあね』
同氏はコラムの中で、『我々には、Lehmanがこの資産売却で利益か損失を計上するのか、R3がその資産に幾ら払ったのか、そもそも買収資金をどこから得たのか、いつ取引が行われたのかなどについて、一切知る由がない。Lehmanがそうした事実を開示する予定があるかすらわからず、これが関連会社取引かどうか判断出来る材料がないのである』と続けています。
そのような同コラムニストの疑問に対して、Lemanに21年間勤めていたベテラントレーダーで、R3のCEOであるRick Rieder氏は、以下のような書簡を送ったそうです。
『このファンドの設立は何年も前から検討されていたことであり』、『私は今年この会社からボーナスはもらわず(←なぜかは分かりませんが)』、『将来の利益の大部分は、これから設立される教育環境を改善するための慈善団体に寄付される予定である。』
・・・この取引がLehmanやR3が主張するようなものであるのか、それとも全く別の意図や目的があるのかは、外部には知り得ないと言える気がします。ただ一つ言えることは、Lehmanの株式の3割が従業員に所有されており、そうした人が最も恐れるのは、LehmanがBearのような末路を辿ることだと言うことです。それがこのコラムニストを含む色々な人から、疑義の目を向けられる理由になっている気がします。
特にRieder氏のような同社のベテランになると、ボーナスの一部などとして長年受け取って来た株式の総額は相当額になっているものと思われます。それがBearの時のように、価値が激減して個人資産のほとんどが消失するといった事態は何としても避けたいところであることは、想像に難くありません。
とは言えLehmanは、Bearと比べて規模も大きく、財務基盤や流動性もしっかりしている(Fedのサポートも受けられる)上、トップに長年君臨してるDick Fuld氏の優れた経営手腕は、業界内外で広く知られるところです。
そのLehmanが、このコラムニストが明らかに疑っているような、「資産の飛ばし」を目的としてこのヘッジファンドとの取引を行ったとは、考えにくい気がします。
それでもCFOが更迭された直後であることや、株価が急落している事実を鑑みると、不必要に疑義や不信感を煽るような行為は避けた方がよいという点は、一理あるかもしれません。
(ちなみにBloombergのコラムは、コラムニストによって非常に意見が偏っていることがあり、中にはウォールストリートについて、全般に批判的な人もいることを、お断りしておきます。)
既に広く報道された所ですが、まずLehmanのCFOは、6月の早い時点で退任に追い込まれました。彼女はもともとバンカーであったのを、CFOのポジションに抜擢されていたのですが、株価急落の責任を取る形で、同社の社長と共に職を去ることになったようです。(と言っても解雇されたわけではなく、とりあえず元のバンカー職に戻るそうですが。)

しかし今日触れたかったのはその話ではなく、7月3日のBloombergのコラムに掲載された、「Lehman's Hedge-Fund Deals Leave Public in Dark(Lehmanのヘッジファンド取引は一般株主をけむに巻く)」という話についてです。
『あなたがLehman Brothersの幹部だったとして、同社が次のBear Stearnsになるのを何とか防ごうとしているとします。株価は暴落し、市場はあなたのバランスシートの健全さを疑っているようです。さあ、あなたならどうしますか?』・・・そのような語りかけで始まっているこのコラムでは、続いてこのように言っています。
『これだけは避けた方が良いというステップがあります。それは会社の財務状況について、不必要な疑義を作り出すことです。と言うのは、一般株主が一番恐れるのは「Unknown(未知数さ)」だからです。』
・・・しかしこのコラムや別のBloombergの記事によると、Lehmanは、$4.5bn(約4700億円)の同社資産を、以下のような条件で設立された新規のヘッジファンド、R3 Capital Partnersに売却することを決めたそうです。
1)Lehmanが主要な投資家の1社である
2)Lehmanの元幹部たち7人によって管理される
3)Lehmanが賃借しているオフィス内で運営される
同ファンドは6月12日時点で、「匿名のある一名の投資家」から$1.08bn(約1130億円)を調達し、追加で$4bn(約4200億円)を別の投資家から募る予定だそうです。LehmanとR3は「両者は全く独立して経営されている」としており、売却された資産は、R3の創立者達がもともとLehman時代に管理していたものであり、LehmanからR3への資産売却は、いわゆる「関連会社取引」には当たらないと主張しているそうです。
しかしこのコラムニストは、このような両社の主張に強い疑問を呈しています。(と言うよりも、「私じゃなくても何かおかしいと感じませんか?」といった主張をしていると言った方が正しいかもしれません。)
同氏は、Lehmanのスポークスパーソンが、$4.5bnという価格がLehmanがバランスシート上でその資産を評価していた額なのか、R3がつけたマーケット価格なのかについてコメント出来ないとしている点、また、Lehmanはこのヘッジファンドの受動的投資家の一人に過ぎず、いかなる取引に対しても経営権の影響力を及ぼしていないと主張している点に、以下のように言っています。
『これをどう考えるべきかって?さあね』
同氏はコラムの中で、『我々には、Lehmanがこの資産売却で利益か損失を計上するのか、R3がその資産に幾ら払ったのか、そもそも買収資金をどこから得たのか、いつ取引が行われたのかなどについて、一切知る由がない。Lehmanがそうした事実を開示する予定があるかすらわからず、これが関連会社取引かどうか判断出来る材料がないのである』と続けています。
そのような同コラムニストの疑問に対して、Lemanに21年間勤めていたベテラントレーダーで、R3のCEOであるRick Rieder氏は、以下のような書簡を送ったそうです。
『このファンドの設立は何年も前から検討されていたことであり』、『私は今年この会社からボーナスはもらわず(←なぜかは分かりませんが)』、『将来の利益の大部分は、これから設立される教育環境を改善するための慈善団体に寄付される予定である。』
・・・この取引がLehmanやR3が主張するようなものであるのか、それとも全く別の意図や目的があるのかは、外部には知り得ないと言える気がします。ただ一つ言えることは、Lehmanの株式の3割が従業員に所有されており、そうした人が最も恐れるのは、LehmanがBearのような末路を辿ることだと言うことです。それがこのコラムニストを含む色々な人から、疑義の目を向けられる理由になっている気がします。
特にRieder氏のような同社のベテランになると、ボーナスの一部などとして長年受け取って来た株式の総額は相当額になっているものと思われます。それがBearの時のように、価値が激減して個人資産のほとんどが消失するといった事態は何としても避けたいところであることは、想像に難くありません。
とは言えLehmanは、Bearと比べて規模も大きく、財務基盤や流動性もしっかりしている(Fedのサポートも受けられる)上、トップに長年君臨してるDick Fuld氏の優れた経営手腕は、業界内外で広く知られるところです。そのLehmanが、このコラムニストが明らかに疑っているような、「資産の飛ばし」を目的としてこのヘッジファンドとの取引を行ったとは、考えにくい気がします。
それでもCFOが更迭された直後であることや、株価が急落している事実を鑑みると、不必要に疑義や不信感を煽るような行為は避けた方がよいという点は、一理あるかもしれません。
(ちなみにBloombergのコラムは、コラムニストによって非常に意見が偏っていることがあり、中にはウォールストリートについて、全般に批判的な人もいることを、お断りしておきます。)
by harry_g
| 2008-07-05 06:54
| 投資銀行


