2008年 01月 23日
ウォールストリートの遠い夜明け? |
2007年はサブプライム問題を発端としたクレジットクランチの発生により、LBOブームを謳歌していたウォールストリートにとっては、「春」の終焉が告げられた年となりました。しかしクレジットの問題が金融機関だけに留まらない事実が徐々に明らかになってきて、年明けのウォールストリートには「夜明けが更に遠のいた」と言った暗いムードが漂っています。
そもそも年末辺りから、投資銀行のボーナスが何%カットされたという話題や、どの部門で何人のクビが切られたという話題が、頻繁に聞かれるようになっていました。
しかし12月時点ではCNBCなどでも景気の先行きに楽観的な見解が多く聞かれ、また年明けの株式相場も、二週間くらいは暴落と言えるほどではなかった気がします。
しかし1月15日にCitigroupとMerrill Lynchが、昨年末に続いて追加で巨額の資金支援を外国の投資家から仰ぐことが発表されると、「状況はそんなに悪いのか」という認識が一気に広がったようで、株式市場が下げのスピードを加速して行ったのは、ご存知の通りです。
外国資本による欧米金融界への資本注入のニュースは昨年末から続いていますが、15日のBloombergによると、欧米の大手金融機関が住宅ローン関連で被った損失は$100bn(約10.5兆円)以上に及ぶそうで、資金援助額の合計も、既に$59bn(約6.3兆円)に上っているそうです。
その資金の大半は、石油価格の値上がり益を享受している湾岸各国や急成長を遂げているアジア各国から出ており、好調なアメリカ経済の恩恵などを受けてそれら地域に蓄積されていた富が、ドル安や株安を利用する形で米国に逆流していると言えるかもしれません。
しかしここまで大手金融機関の損失が拡大し、海外からの投資資金が本格的に流入し始めると、サブプライム問題もそろそろ終わりなのではと期待したくなるかもしれません。
それでも株価が下げ止まらないのは、金融セクターの損失にまだ底が見えない上、その後に控えている「より大きな問題」、つまり景気の減速に、焦点が当たり始めているためだと言える気がします。
1月28日のBusiness Weekによると、今年に入って$18bn(約1.9兆円)の追加損失を発表したCitigroupは、まだ$37bn(約4兆円)のサブプライムローンをバランスシートに抱えているそうです。また大手銀行・投資銀行各社には、未販売のLBO関連のローンや債券も相当溜まっていると聞きます。
これらのデットからどの程度の追加損失が発生するかは、経営者でも正直読みきれないのかもしれません。そのような損失拡大の懸念が、より大きな問題、つまりアメリカの個人消費への深刻な影響、ということにつながっている気がします。
戦後の世界経済は、アメリカが一貫して輸入大国、消費大国であったことで支えられて来たことは、今更言うまでもありません。この個人消費が落ち込むと、輸出大国である日本やEUは言うに及ばず、先進国にコモディティなどを輸出している発展途上国にも、その悪影響が広がることが懸念されます。
そんな世界経済の原動力であるアメリカの個人消費は、「金融セクター」と「住宅市場」に大きく依存している現状があると言える気がします。
アメリカでは消費者金融が大きく発展しており、個人消費を支える要因となっていることは、色々なところで指摘されている通りです。
代表的なものは、家の値上がり部分を担保にした「ホームエクイティローン」と、クレジットカード支払いをリボ払いにすることによる「クレジットカードローン」であり、特にホームエクイティローンは担保付なため条件がよく(金利が安く)、昨今の住宅価格の値上がりを受けて、多くのアメリカ人が利用していると言われています。
そのホームエクイティローンについて上記のBusiness Weekが、住宅価格の下落がデフォルト率の悪化を招く可能性について言及していました。その記事によると、ホームエクイティローンのデフォルト額は、住宅市場が軟調になり始めた2006年から急速に増えており、2007年は9月末までで$14.7bn(約1.6兆円)に達しているそうです。
ホームエクイティローン市場は$850bn(約91兆円)と言われており、デフォルトは2%程度と今のところ大した数字ではないかもしれませんが、今後住宅価格の下落が加速するようだと、デフォルトが拡大して、銀行は貸出基準を厳格化させるかもしれません。そうなると個人消費の資金源のひとつが大きく減少することになり、景気にマイナスの影響が広がることが懸念されます。
アメリカの個人消費は、11月末のサンクスギビング辺りまでは比較的堅調で、「サブプライム問題の影響は消費には及ばない」などと言った声も色々なところで聞かれていました。しかし年が明けて、クリスマスをまたぐ年末商戦が全体的に低調だったことが数字で確認されて来たり、大手クレジットカード会社各社が消費の先行きに懸念を示したことで、「やはり駄目か」という失望感が急速に広がっている気がします。
また1月に入ってからCitigroup、JP Morgan Chase、Wells Fargoの大手行3行が、合計で$7bn(約7,500億円)の消費者ローンへの引当金積み増しを発表したことも、金融機関への損失拡大懸念は言うに及ばず、個人消費の弱さを確認させることになってしまった気がします。
このような状況を受けて、世界の株式市場は年初から大幅に値下がりしています。NY時間の1月22日現在で、米国のダウ平均は9.8%、S&P 500は10.8%、ナスダックは13.6%下落しており、また欧州でもFTSE 100が11%、独仏の株価指数も14-16%超の下落となっており、アジアでは日経225と香港のハンセン指数が15%以上下がるなど、軒並み大幅安となっています。
株式市場は「不確実要素」を強く嫌う傾向があり、また半年から一年先を見越して上下すると言われていることを考えると、投資家が今年の景気見通しに対して悲観的になっていることを映し出していると言える気がします。
市場が自信を取り戻すには、アメリカの金融市場と住宅市場が落ち着きを取り戻す必要があると思われますが、住宅市場は金利動向は言うに及ばず、労働市場や為替レートなどの動向とも緊密に関係しているため、いつ頃底入れするかの判断は、非常に難しいものとなっている気がします。
なんとも暗い年明けですが、市場や景気には常に上下があるものなので、状況を冷静に分析しながら投資チャンスを探ることが大切かもしれません。
そもそも年末辺りから、投資銀行のボーナスが何%カットされたという話題や、どの部門で何人のクビが切られたという話題が、頻繁に聞かれるようになっていました。しかし12月時点ではCNBCなどでも景気の先行きに楽観的な見解が多く聞かれ、また年明けの株式相場も、二週間くらいは暴落と言えるほどではなかった気がします。
しかし1月15日にCitigroupとMerrill Lynchが、昨年末に続いて追加で巨額の資金支援を外国の投資家から仰ぐことが発表されると、「状況はそんなに悪いのか」という認識が一気に広がったようで、株式市場が下げのスピードを加速して行ったのは、ご存知の通りです。
外国資本による欧米金融界への資本注入のニュースは昨年末から続いていますが、15日のBloombergによると、欧米の大手金融機関が住宅ローン関連で被った損失は$100bn(約10.5兆円)以上に及ぶそうで、資金援助額の合計も、既に$59bn(約6.3兆円)に上っているそうです。
その資金の大半は、石油価格の値上がり益を享受している湾岸各国や急成長を遂げているアジア各国から出ており、好調なアメリカ経済の恩恵などを受けてそれら地域に蓄積されていた富が、ドル安や株安を利用する形で米国に逆流していると言えるかもしれません。
しかしここまで大手金融機関の損失が拡大し、海外からの投資資金が本格的に流入し始めると、サブプライム問題もそろそろ終わりなのではと期待したくなるかもしれません。
それでも株価が下げ止まらないのは、金融セクターの損失にまだ底が見えない上、その後に控えている「より大きな問題」、つまり景気の減速に、焦点が当たり始めているためだと言える気がします。
1月28日のBusiness Weekによると、今年に入って$18bn(約1.9兆円)の追加損失を発表したCitigroupは、まだ$37bn(約4兆円)のサブプライムローンをバランスシートに抱えているそうです。また大手銀行・投資銀行各社には、未販売のLBO関連のローンや債券も相当溜まっていると聞きます。
これらのデットからどの程度の追加損失が発生するかは、経営者でも正直読みきれないのかもしれません。そのような損失拡大の懸念が、より大きな問題、つまりアメリカの個人消費への深刻な影響、ということにつながっている気がします。
戦後の世界経済は、アメリカが一貫して輸入大国、消費大国であったことで支えられて来たことは、今更言うまでもありません。この個人消費が落ち込むと、輸出大国である日本やEUは言うに及ばず、先進国にコモディティなどを輸出している発展途上国にも、その悪影響が広がることが懸念されます。
そんな世界経済の原動力であるアメリカの個人消費は、「金融セクター」と「住宅市場」に大きく依存している現状があると言える気がします。
アメリカでは消費者金融が大きく発展しており、個人消費を支える要因となっていることは、色々なところで指摘されている通りです。代表的なものは、家の値上がり部分を担保にした「ホームエクイティローン」と、クレジットカード支払いをリボ払いにすることによる「クレジットカードローン」であり、特にホームエクイティローンは担保付なため条件がよく(金利が安く)、昨今の住宅価格の値上がりを受けて、多くのアメリカ人が利用していると言われています。
そのホームエクイティローンについて上記のBusiness Weekが、住宅価格の下落がデフォルト率の悪化を招く可能性について言及していました。その記事によると、ホームエクイティローンのデフォルト額は、住宅市場が軟調になり始めた2006年から急速に増えており、2007年は9月末までで$14.7bn(約1.6兆円)に達しているそうです。
ホームエクイティローン市場は$850bn(約91兆円)と言われており、デフォルトは2%程度と今のところ大した数字ではないかもしれませんが、今後住宅価格の下落が加速するようだと、デフォルトが拡大して、銀行は貸出基準を厳格化させるかもしれません。そうなると個人消費の資金源のひとつが大きく減少することになり、景気にマイナスの影響が広がることが懸念されます。
アメリカの個人消費は、11月末のサンクスギビング辺りまでは比較的堅調で、「サブプライム問題の影響は消費には及ばない」などと言った声も色々なところで聞かれていました。しかし年が明けて、クリスマスをまたぐ年末商戦が全体的に低調だったことが数字で確認されて来たり、大手クレジットカード会社各社が消費の先行きに懸念を示したことで、「やはり駄目か」という失望感が急速に広がっている気がします。
また1月に入ってからCitigroup、JP Morgan Chase、Wells Fargoの大手行3行が、合計で$7bn(約7,500億円)の消費者ローンへの引当金積み増しを発表したことも、金融機関への損失拡大懸念は言うに及ばず、個人消費の弱さを確認させることになってしまった気がします。
このような状況を受けて、世界の株式市場は年初から大幅に値下がりしています。NY時間の1月22日現在で、米国のダウ平均は9.8%、S&P 500は10.8%、ナスダックは13.6%下落しており、また欧州でもFTSE 100が11%、独仏の株価指数も14-16%超の下落となっており、アジアでは日経225と香港のハンセン指数が15%以上下がるなど、軒並み大幅安となっています。
株式市場は「不確実要素」を強く嫌う傾向があり、また半年から一年先を見越して上下すると言われていることを考えると、投資家が今年の景気見通しに対して悲観的になっていることを映し出していると言える気がします。
市場が自信を取り戻すには、アメリカの金融市場と住宅市場が落ち着きを取り戻す必要があると思われますが、住宅市場は金利動向は言うに及ばず、労働市場や為替レートなどの動向とも緊密に関係しているため、いつ頃底入れするかの判断は、非常に難しいものとなっている気がします。
なんとも暗い年明けですが、市場や景気には常に上下があるものなので、状況を冷静に分析しながら投資チャンスを探ることが大切かもしれません。
by harry_g
| 2008-01-23 12:55
| 世界経済・市場トレンド


