2007年 09月 04日
投資銀行のハゲタカファンド? |
90年代後半に邦銀の不良債権を積極的に買い取った外資ファンドは「ハゲタカファンド」などと呼ばれ、日本では小説とドラマもヒットしたようですが、債権を額面から大幅なディスカウントで買い取って利益を上げる投資手法は「ディストレスト投資」と呼ばれて、オルタナティブ投資手法の一つです。
クレジットクランチによってデット市場が傷ついている現在は、こうしたディストレスト投資家にとってチャンスの時であり、大手バイアウトファンドやヘッジファンドの中でディストレストに強みをもっているファンド(Apollo、Fortressなど)は、積極的に投資機会を探っていると言われています。
元々デット業務に強みを持つ投資銀行も、ディストレスト投資には積極的であり、そのノウハウは相当期間蓄積していると言える気がします。03年頃からの好況を受けてディストレスト投資は鳴りを潜めていましたが、今回のクレジットクランチを受けて、大手の投資銀行が再びディストレスト投資を開始したようです。
8月30日のThe Deal.comによると、GoldmanとLehmanが、ディストレストファンドの調達に動き出したそうです。
GoldmanとLehmanは、元々積極的にオルタナティブ投資ファンドを運営しており、Goldmanについては、プライベートエクイティとヘッジファンドの両分野で業界最大手であったことは以前にも書いた通りです。(但しクオンツファンドGlobal Alphaが大きな損失を被った後、AUMは多少下がってしまったかもしれません。)
またLehmanも、企業のバイアウトではGoldmanほど積極的でなかったものの、PE、HFと並ぶアセットクラスである不動産の投資ファンドとしては、最大手の一つであったと言える気がします。よってこれら投資銀行が今回ディストレスト投資を始めても、何ら驚くことではないと言える気がします。
ただ純粋な投資ファンドと比較して、投資銀行がディストレスト投資を行う際に気をつけないといけないのは、今回のクレジットクランチはLBO関連業務を相当痛めており、GoldmanとLehmanもレバレッジドファイナンス関連部門では、ロスが拡大しているかもしれないという点です。
以前にも書きましたが、アメリカでLabor Day後に市場に出てくると言われているレバレッジドファイナンスの総額は、$300bn(約35兆円)に上ると言われています。そして今回のThe Dealの記事によると、GoldmanとLehmanはその中のかなりの額を引き受けているそうです。
例えばKKR、Citigroup、Goldmanが7月6日に$7.7bn(約8,900億円)で買収したDollar Generalのファイナンシングでは、ファンディングストラクチャーの中でリスクが高いPIKボンドのうち、$725mm(約840億円)は投資家に販売する事が出来ずに、Goldman、Lehmanなどの投資銀行が抱えることになってしまったそうです。今後クレジットクランチが悪化すると、このようなケースは増えてしまうかもしれません。
記事の中で取り上げられていたUBSのアナリストの予想によると、GoldmanとLehmanはそれぞれ$71.5bn(約8.2兆円)、$43.9bn(約5兆円)のファイナンシングを引き受けているそうで、それぞれ資産総額に対して8%、7%という規模だそうです。これは自己資本比率で言えば相当の額でしょうから、転売出来ないデットの割合が増えると、問題は深刻化するかもしれません。

話を投資ファンドと投資銀行の比較に戻しますが、ディストレスト投資は、価値の下がってしまったデットを安値で「買い叩く」ことで利益を上げようとする投資であることは、今更言うまでもありません。
よって投資銀行がローン引受業務やトレーディング業務で損失を出している時に、外部の投資家を募ったファンドがそのデットを買い叩いて利益を上げるのは「利益相反」ではないか、と指摘する向きもあるそうです。
ただ大手投資銀行がこのような問題点を把握していないわけもなく、そのような問題が表面化しないような上手いストラクチャーを考えるのではという気がします。現時点ではファンドのストラクチャーは不明ですが、自己資本をファンドの大部分にしたり、利益相反の恐れのある案件へは投資しないなどの対策がとられるのかもしれません。
不良債権投資は何かと悪いイメージが付きまといがちですが、ディストレスト投資家は市場に流動性を供給し、塩漬けになりかねない資産に命を吹き込む存在であることは言うまでもありません。
また一般的に、マーケットは混乱している時こそミスプライシングが多発して投資機会が拡大するため、そのような機会を見逃さずに貪欲に利益を上げようとするGoldmanとLehmanの行動は、最終的には株主利益に資するのではという気がします。

元々デット業務に強みを持つ投資銀行も、ディストレスト投資には積極的であり、そのノウハウは相当期間蓄積していると言える気がします。03年頃からの好況を受けてディストレスト投資は鳴りを潜めていましたが、今回のクレジットクランチを受けて、大手の投資銀行が再びディストレスト投資を開始したようです。
8月30日のThe Deal.comによると、GoldmanとLehmanが、ディストレストファンドの調達に動き出したそうです。
GoldmanとLehmanは、元々積極的にオルタナティブ投資ファンドを運営しており、Goldmanについては、プライベートエクイティとヘッジファンドの両分野で業界最大手であったことは以前にも書いた通りです。(但しクオンツファンドGlobal Alphaが大きな損失を被った後、AUMは多少下がってしまったかもしれません。)
またLehmanも、企業のバイアウトではGoldmanほど積極的でなかったものの、PE、HFと並ぶアセットクラスである不動産の投資ファンドとしては、最大手の一つであったと言える気がします。よってこれら投資銀行が今回ディストレスト投資を始めても、何ら驚くことではないと言える気がします。
ただ純粋な投資ファンドと比較して、投資銀行がディストレスト投資を行う際に気をつけないといけないのは、今回のクレジットクランチはLBO関連業務を相当痛めており、GoldmanとLehmanもレバレッジドファイナンス関連部門では、ロスが拡大しているかもしれないという点です。
以前にも書きましたが、アメリカでLabor Day後に市場に出てくると言われているレバレッジドファイナンスの総額は、$300bn(約35兆円)に上ると言われています。そして今回のThe Dealの記事によると、GoldmanとLehmanはその中のかなりの額を引き受けているそうです。
例えばKKR、Citigroup、Goldmanが7月6日に$7.7bn(約8,900億円)で買収したDollar Generalのファイナンシングでは、ファンディングストラクチャーの中でリスクが高いPIKボンドのうち、$725mm(約840億円)は投資家に販売する事が出来ずに、Goldman、Lehmanなどの投資銀行が抱えることになってしまったそうです。今後クレジットクランチが悪化すると、このようなケースは増えてしまうかもしれません。
記事の中で取り上げられていたUBSのアナリストの予想によると、GoldmanとLehmanはそれぞれ$71.5bn(約8.2兆円)、$43.9bn(約5兆円)のファイナンシングを引き受けているそうで、それぞれ資産総額に対して8%、7%という規模だそうです。これは自己資本比率で言えば相当の額でしょうから、転売出来ないデットの割合が増えると、問題は深刻化するかもしれません。

よって投資銀行がローン引受業務やトレーディング業務で損失を出している時に、外部の投資家を募ったファンドがそのデットを買い叩いて利益を上げるのは「利益相反」ではないか、と指摘する向きもあるそうです。
ただ大手投資銀行がこのような問題点を把握していないわけもなく、そのような問題が表面化しないような上手いストラクチャーを考えるのではという気がします。現時点ではファンドのストラクチャーは不明ですが、自己資本をファンドの大部分にしたり、利益相反の恐れのある案件へは投資しないなどの対策がとられるのかもしれません。
不良債権投資は何かと悪いイメージが付きまといがちですが、ディストレスト投資家は市場に流動性を供給し、塩漬けになりかねない資産に命を吹き込む存在であることは言うまでもありません。
また一般的に、マーケットは混乱している時こそミスプライシングが多発して投資機会が拡大するため、そのような機会を見逃さずに貪欲に利益を上げようとするGoldmanとLehmanの行動は、最終的には株主利益に資するのではという気がします。
by harry_g
| 2007-09-04 08:50
| 投資銀行