2007年 07月 02日
LBOブーム終焉の序曲? |
先日、大手バイアウトファンドのBlackstoneのIPOが、投資家からの強い需要を集めて大成功に終わったという話を書きましたが、同社の株価(正確にはユニット価格)は翌週火曜日の26日には$30.75というIPO価格を下回る水準まで下落し、金曜日の終値は$29.27となっているようです。
株価下落の原因について議論することは避けて、あくまで欧米でのニュースフローだけ見てみると、今年の始め頃と比べて、ここ最近LBOに対してネガティブな話が増えていることは間違い気がします。
例えば7月2日号のBusinessWeekは、「KKR: A Deal Too Far?」(1ディール踏み込みすぎ)と言う記事を載せ、同社が$29bn(約3.5兆円)で買収しようとしているクレジットカードプロセス会社のFirst Data Corpの案件が、デットの資金調達面で苦労するかもしれないという話を書いていました。
言うまでもないですが、レバレッジドバイアウトの際のエクイティの出し手であるLBOファンドにとっては、企業買収の際に、より多くのレバレッジをより有利な条件で使うことが出来れば、「頭金」を減らしてリターンを改善することが期待できます。ただ、これは「逆もまた真」であるため、デットマーケットの減速は業界にとって大きな懸念材料であると言える気がします。
First Data Corpのバイアウトには、史上最大の$8bn(約9,800億円)のハイイールドボンドと$14bn(約1.7兆円)のリスクの高いレバレッジド・ローンによる資金調達が用いられる予定だそうで、2年前に同じくKKRが行った巨大案件SunGardのLBOと比べると、EBITDAに対するレバレッジレシオはSunGardの7倍に対して10倍、エクイティ比率はSunGardの31%に対して25%だそうです。
ちなみに2004年ごろまでに投資銀行に入社した人たちは、アナリスト・アソシエイト研修で、LBOの一般的なレバレッジレシオは、業界(キャッシュフローの安定度と見通し)にもよるが、最高でも7倍程度である、と習っていると思います。この話については2年前のエントリー「レバレッジのかけやすさ」で詳しく述べましたが、レバレッジは拡大の一途を辿っているようです。
また2004年頃と比べると、ここ数年のレバレッジド・ローンの市場には、ハイイールド債のような緩いコベナントを持ち、貸し手にとってはよりリスクの高い「コベナント・ライト・ディール」などと言われるローンが増えていると言われます。そのようなローンの割合は、BusinessWeekによるとローン市場全体の19%、他のデータによると最近の案件の7割近くに及んでいるそうです。
そんなレバレッジド・ファイナンスのブームが続く中、6月26日のNY Timesや6月29日のFTによると、最近市場では、投資家が以前と比べるとクレジットリスクに対してより慎重になる傾向が見られるようになったそうです。
FTの記事で取り上げられていたCitigroup債券資本市場部の方の発言によると、最近「デットの売り手と買い手のバランスが均衡してきた」そうで、以前のような有利な条件での資金調達は、徐々に難しくなって来ているようです。
これらの記事によると、Thomson LearningのLBOに係わる$7.75bn(約9,500億円)の資金調達や、US Foodserviceの$7.1bn(約8,700億円)の案件が予定通りに行えなかったそうで、また米リテールチェーンDollar Generalも$725mm(約890億円)のデットによる資金調達を行うために、予定していたストラクチャーを変更し、比較的厳しいコベナントを飲まざるを得なくなったそうです。

このようなクレジットマーケットの変化をもたらした原因については、各紙とも色々な推察をしており、大手証券のBear Stearnsが運用するヘッジファンドがサブプライムローン投資の失敗によって破綻に追い込まれたことが原因ではないかとか、BlackstoneのIPOに対して増税案など厳しい声が上がっているせいではないかとか、色々な論調を見かけます。
ただ上記のNY Timesの記事の中で、米最大手の商業銀行の一つであるBank of AmericaのCEOが述べていたように、別に世の中からお金(リクイディティ)がなくなったわけではなく、金利が徐々に上昇する環境の中、銀行を含むデットの投資家が今までよりも慎重になって来た、ということなのかもしれません。
デット市場の冷え込みがLBOに与える影響の例として先のBusinessWeekに挙げられていたところによると、1989年10月13日に、米航空大手United Airlinesの親会社のバイアウトがデット調達に失敗して頓挫したことは、1980年代のバイアウトブーム終焉の序曲となったそうです。
もちろん昨今のデット市場の環境が80年代と同じの結果を招くかは全く分かりませんし、LBOファンドはそのような事態の対処方法も色々検討しているとは思います。
実際業界各社は 、かなり前からデット市場のバブル感に警鐘をならしており、最大手の一角であるCarlyleは07年初に従業員に対して、「今のような状況は長く続くはずはないので案件は厳正に審査すべし」といった趣旨の達しを出すなどしていたようです。
ただ今後、CerberusによるChryslerの案件やKKRのFirst Dataの案件、今年後半には史上最大のバイアウトとなりそうなTXUの案件など巨大案件が目白押しなだけに、レバレッジド・ファイナンス市場がどの程度勢いを回復して来るか、今後の展開が注目されます。
株価下落の原因について議論することは避けて、あくまで欧米でのニュースフローだけ見てみると、今年の始め頃と比べて、ここ最近LBOに対してネガティブな話が増えていることは間違い気がします。
例えば7月2日号のBusinessWeekは、「KKR: A Deal Too Far?」(1ディール踏み込みすぎ)と言う記事を載せ、同社が$29bn(約3.5兆円)で買収しようとしているクレジットカードプロセス会社のFirst Data Corpの案件が、デットの資金調達面で苦労するかもしれないという話を書いていました。言うまでもないですが、レバレッジドバイアウトの際のエクイティの出し手であるLBOファンドにとっては、企業買収の際に、より多くのレバレッジをより有利な条件で使うことが出来れば、「頭金」を減らしてリターンを改善することが期待できます。ただ、これは「逆もまた真」であるため、デットマーケットの減速は業界にとって大きな懸念材料であると言える気がします。
First Data Corpのバイアウトには、史上最大の$8bn(約9,800億円)のハイイールドボンドと$14bn(約1.7兆円)のリスクの高いレバレッジド・ローンによる資金調達が用いられる予定だそうで、2年前に同じくKKRが行った巨大案件SunGardのLBOと比べると、EBITDAに対するレバレッジレシオはSunGardの7倍に対して10倍、エクイティ比率はSunGardの31%に対して25%だそうです。
ちなみに2004年ごろまでに投資銀行に入社した人たちは、アナリスト・アソシエイト研修で、LBOの一般的なレバレッジレシオは、業界(キャッシュフローの安定度と見通し)にもよるが、最高でも7倍程度である、と習っていると思います。この話については2年前のエントリー「レバレッジのかけやすさ」で詳しく述べましたが、レバレッジは拡大の一途を辿っているようです。
また2004年頃と比べると、ここ数年のレバレッジド・ローンの市場には、ハイイールド債のような緩いコベナントを持ち、貸し手にとってはよりリスクの高い「コベナント・ライト・ディール」などと言われるローンが増えていると言われます。そのようなローンの割合は、BusinessWeekによるとローン市場全体の19%、他のデータによると最近の案件の7割近くに及んでいるそうです。
そんなレバレッジド・ファイナンスのブームが続く中、6月26日のNY Timesや6月29日のFTによると、最近市場では、投資家が以前と比べるとクレジットリスクに対してより慎重になる傾向が見られるようになったそうです。
FTの記事で取り上げられていたCitigroup債券資本市場部の方の発言によると、最近「デットの売り手と買い手のバランスが均衡してきた」そうで、以前のような有利な条件での資金調達は、徐々に難しくなって来ているようです。
これらの記事によると、Thomson LearningのLBOに係わる$7.75bn(約9,500億円)の資金調達や、US Foodserviceの$7.1bn(約8,700億円)の案件が予定通りに行えなかったそうで、また米リテールチェーンDollar Generalも$725mm(約890億円)のデットによる資金調達を行うために、予定していたストラクチャーを変更し、比較的厳しいコベナントを飲まざるを得なくなったそうです。

ただ上記のNY Timesの記事の中で、米最大手の商業銀行の一つであるBank of AmericaのCEOが述べていたように、別に世の中からお金(リクイディティ)がなくなったわけではなく、金利が徐々に上昇する環境の中、銀行を含むデットの投資家が今までよりも慎重になって来た、ということなのかもしれません。
デット市場の冷え込みがLBOに与える影響の例として先のBusinessWeekに挙げられていたところによると、1989年10月13日に、米航空大手United Airlinesの親会社のバイアウトがデット調達に失敗して頓挫したことは、1980年代のバイアウトブーム終焉の序曲となったそうです。
もちろん昨今のデット市場の環境が80年代と同じの結果を招くかは全く分かりませんし、LBOファンドはそのような事態の対処方法も色々検討しているとは思います。
実際業界各社は 、かなり前からデット市場のバブル感に警鐘をならしており、最大手の一角であるCarlyleは07年初に従業員に対して、「今のような状況は長く続くはずはないので案件は厳正に審査すべし」といった趣旨の達しを出すなどしていたようです。
ただ今後、CerberusによるChryslerの案件やKKRのFirst Dataの案件、今年後半には史上最大のバイアウトとなりそうなTXUの案件など巨大案件が目白押しなだけに、レバレッジド・ファイナンス市場がどの程度勢いを回復して来るか、今後の展開が注目されます。
by harry_g
| 2007-07-02 07:41
| LBO・プライベートエクイティ


