2007年 07月 04日
KKRとファンドIPOの行方 |
先日のブログで、米国議会がプライベートエクイティファンドに対する増税案を検討しているという話や、バブル感のあったレバレッジド・ファイナンス市場が減速気味であり、LBOブームの終焉を懸念する声が聞かれるようになっている、という話を書きました。
そんな中、LBOファンド各社が以前から噂されていた通りにIPOを実行していくのかが注目されていましたが、WSJの速報(米国時間7月3日夕方)によると、Blackstoneと並ぶ業界最大手のKKRも、IPOのファイリングを行ったようです。
詳しいことは機会があればまた書きますが、案件規模は$1.25bn(約1,500億円)であり、NYSEに「KKR」のティッカーコードで上場予定のようです。また、パートナーが多額のキャッシュを手に入れたことで話題となったBlackstoneの案件と異なり、KKRのオーナーは一切売り出しを行わない(よってキャッシュアウトをしない)ようです。
KKRが上場を検討していることについては、BlackstoneのIPOプライシング当日にメディア各社が大々的に報じて、IPOの祭りムードを更に盛り上げていたのは記憶に新しいところです。
BlackstoneとKKRは、業界最大手としてファンドサイズや投資案件規模で競合しており、それは両者のパートナー間の個人的な競い合いに発展しているということは、有名な話のようです。
少々ゴシップ的ですが、先に各界の名士・淑女を集めて開催されたBlackstoneのSchwarzman氏の豪華絢爛な60歳の誕生パーティに、LBOを発明したとされるKKRの創業者パートナーであるKravis氏は、招待されなかったそうです。
6月22日付のWSJの別の記事によると、少なくともIPOに関してはBlackstoneに先を越された感のあったKKRは、したたかに同社のIPOの成功と投資家需要の強さを見極めていたそうで、IPOの手続き面の準備は着々と進めていたそうです。Blackstoneの株価は上場後に弱含んでしまったようですが、その中でKKRが上場に踏み切ったことで、同業他社も勇気付けられているかもしれません。
大手ファンド各社がIPOを検討しているのは広く知られているところであり、4月終わりにLAで開かれた業界カンファレンス、「Miklen Global Conference」について書いた4月25日のFTの記事によると、Carlyle Groupの共同設立者であるDavid Rubenstein氏などが、大手ファンドの全てが今後4、5年で全て上場していたとしても驚かない、と述べていたそうです。
NYに本拠を置くLBOファンド大手のApolloを率いるLeon Black氏も、具体的な計画についての言及は避けた上で、上場またはプライベートプレースメントによる市場からの資金調達の可能性を認めていたそうです。また日本でも名の知れているTPGも、投資家への持分の一部売却を検討していると言われており、近い将来のIPOの有力な候補と言える気がします。
PEファンド各社がIPOを検討している最大の理由の一つは、「競合上必要だから」だと言えるかもしれません。CarlyleのRubenstein氏も、上記のカンファレンスで、優秀な従業員を惹きつけ維持するためには株式上場が必要だと強調していたそうです。
プライベートエクイティ業界は、資産運用業界の中でも少々特殊な業界で、トップを走る一握りのファンドに資金のみならず案件と人材が集中する傾向があり、そのことがトップのファンドを更に際立たせる結果となっている気がします。
Morgan Stanleyの資産運用部門を立ち上げたBarton Biggs氏がヘッジファンド・資産運用業界の内情をつづった「ヘッジホッグ」(日本経済新聞出版社、原著名「Hedgehogging」)の中で述べているところによると、バイアウトファンドの業界では、上位25%と下位25%のファンドのリターンを比較すると、差が20%以上に及ぶそうです。
(ちなみに同著によると、債券ファンドでは、この差は3%程度だそうです。)
実際、トップ15社程度の大手バイアウトファンドになると、投資銀行が巨額のファイナンシングに惹かれてどんどん案件のソーシングを行うため、投資案件に対して有利にアクセスできることは、間違いない気がします。Blackstoneのパートナーの発言がどこかで取り上げられていましたが、まさに「どんな案件でも最初と最後に必ず電話をもらえる」立場にある、ということなのかもしれません。
そんな業界において上場を果たしたBlackstoneは、自社株(ユニット)を従業員への報酬手段として使えるようになるため、競合上非常に有利な立場にいると言える気がします。実際同社は、最近同業から優秀な人材をどんどん引き抜いていると噂されてます。
そのような事態をKKRを筆頭とした同業他社が見過ごすはずもなく、それであれば多少の困難があっても自分達も追随しよう、という流れになるのは、極めて自然な流れなのかもしれません。
もちろん中には、各社のオーナーが業界の過熱感を懸念していて、利益確定を急いでいるだけだと主張する人もいるようですが、この批判はオーナーが売り出しを行わなかったFortressや、KKRには当てはまらないかもしれません。
それでも前から書いている通り、世の中に溢れるリクイディティが信用リスクの膨張に対する懸念を抑え続けて来たことが、LBOブームを支えているのは確かな気がします。
そんな中で、今後アメリカの“株式”市場の投資家が、LBOファンドの将来性をどのように評価して行くかは、非常に興味深い注目点と言えるかもしれません。
余談ですが、WSJに載っていた「数字で比べるKKR vs. Blackstone」は以下の通りです。
オファリングサイズ
KKR: $1.3 billion (約1,500億円)
Blackstone: $4.1 billion (約5,040億円)
運用資産額
KKR: $53 billion (約6.5兆円)
Blackstone: $88 billion (約10.8兆円)
設立年次
KKR: 1976年
Blackstone: 1985年
従業員(投資プロフェッショナル)数
KKR: 139人
Blackstone: 400人
フィーと投資収益(2006年)
KKR: $4.4 billion (約5,400億円)
Blackstone: $8.7 billion (約1.1兆円)
純利益(2006年)
KKR: $1.1 billion (約1,350億円)
Blackstone: $2.27 billion (約2,800億円)
平均年利(リターン)
KKR: 20.2%
Blackstone: 22.6%
パートナー持分(IPO前)
KKR (Kravis氏/Roberts氏) : それぞれ37.5%
Blackstone (Schwarzman氏): 30%
上場目論見書のページ数(補遺を除く)
KKR: 204ページ
Blackstone: 270ページ
そんな中、LBOファンド各社が以前から噂されていた通りにIPOを実行していくのかが注目されていましたが、WSJの速報(米国時間7月3日夕方)によると、Blackstoneと並ぶ業界最大手のKKRも、IPOのファイリングを行ったようです。
詳しいことは機会があればまた書きますが、案件規模は$1.25bn(約1,500億円)であり、NYSEに「KKR」のティッカーコードで上場予定のようです。また、パートナーが多額のキャッシュを手に入れたことで話題となったBlackstoneの案件と異なり、KKRのオーナーは一切売り出しを行わない(よってキャッシュアウトをしない)ようです。
KKRが上場を検討していることについては、BlackstoneのIPOプライシング当日にメディア各社が大々的に報じて、IPOの祭りムードを更に盛り上げていたのは記憶に新しいところです。BlackstoneとKKRは、業界最大手としてファンドサイズや投資案件規模で競合しており、それは両者のパートナー間の個人的な競い合いに発展しているということは、有名な話のようです。
少々ゴシップ的ですが、先に各界の名士・淑女を集めて開催されたBlackstoneのSchwarzman氏の豪華絢爛な60歳の誕生パーティに、LBOを発明したとされるKKRの創業者パートナーであるKravis氏は、招待されなかったそうです。
6月22日付のWSJの別の記事によると、少なくともIPOに関してはBlackstoneに先を越された感のあったKKRは、したたかに同社のIPOの成功と投資家需要の強さを見極めていたそうで、IPOの手続き面の準備は着々と進めていたそうです。Blackstoneの株価は上場後に弱含んでしまったようですが、その中でKKRが上場に踏み切ったことで、同業他社も勇気付けられているかもしれません。
大手ファンド各社がIPOを検討しているのは広く知られているところであり、4月終わりにLAで開かれた業界カンファレンス、「Miklen Global Conference」について書いた4月25日のFTの記事によると、Carlyle Groupの共同設立者であるDavid Rubenstein氏などが、大手ファンドの全てが今後4、5年で全て上場していたとしても驚かない、と述べていたそうです。
NYに本拠を置くLBOファンド大手のApolloを率いるLeon Black氏も、具体的な計画についての言及は避けた上で、上場またはプライベートプレースメントによる市場からの資金調達の可能性を認めていたそうです。また日本でも名の知れているTPGも、投資家への持分の一部売却を検討していると言われており、近い将来のIPOの有力な候補と言える気がします。
PEファンド各社がIPOを検討している最大の理由の一つは、「競合上必要だから」だと言えるかもしれません。CarlyleのRubenstein氏も、上記のカンファレンスで、優秀な従業員を惹きつけ維持するためには株式上場が必要だと強調していたそうです。
プライベートエクイティ業界は、資産運用業界の中でも少々特殊な業界で、トップを走る一握りのファンドに資金のみならず案件と人材が集中する傾向があり、そのことがトップのファンドを更に際立たせる結果となっている気がします。
Morgan Stanleyの資産運用部門を立ち上げたBarton Biggs氏がヘッジファンド・資産運用業界の内情をつづった「ヘッジホッグ」(日本経済新聞出版社、原著名「Hedgehogging」)の中で述べているところによると、バイアウトファンドの業界では、上位25%と下位25%のファンドのリターンを比較すると、差が20%以上に及ぶそうです。(ちなみに同著によると、債券ファンドでは、この差は3%程度だそうです。)
実際、トップ15社程度の大手バイアウトファンドになると、投資銀行が巨額のファイナンシングに惹かれてどんどん案件のソーシングを行うため、投資案件に対して有利にアクセスできることは、間違いない気がします。Blackstoneのパートナーの発言がどこかで取り上げられていましたが、まさに「どんな案件でも最初と最後に必ず電話をもらえる」立場にある、ということなのかもしれません。
そんな業界において上場を果たしたBlackstoneは、自社株(ユニット)を従業員への報酬手段として使えるようになるため、競合上非常に有利な立場にいると言える気がします。実際同社は、最近同業から優秀な人材をどんどん引き抜いていると噂されてます。
そのような事態をKKRを筆頭とした同業他社が見過ごすはずもなく、それであれば多少の困難があっても自分達も追随しよう、という流れになるのは、極めて自然な流れなのかもしれません。
もちろん中には、各社のオーナーが業界の過熱感を懸念していて、利益確定を急いでいるだけだと主張する人もいるようですが、この批判はオーナーが売り出しを行わなかったFortressや、KKRには当てはまらないかもしれません。それでも前から書いている通り、世の中に溢れるリクイディティが信用リスクの膨張に対する懸念を抑え続けて来たことが、LBOブームを支えているのは確かな気がします。
そんな中で、今後アメリカの“株式”市場の投資家が、LBOファンドの将来性をどのように評価して行くかは、非常に興味深い注目点と言えるかもしれません。
余談ですが、WSJに載っていた「数字で比べるKKR vs. Blackstone」は以下の通りです。
オファリングサイズ
KKR: $1.3 billion (約1,500億円)
Blackstone: $4.1 billion (約5,040億円)
運用資産額
KKR: $53 billion (約6.5兆円)
Blackstone: $88 billion (約10.8兆円)
設立年次
KKR: 1976年
Blackstone: 1985年
従業員(投資プロフェッショナル)数
KKR: 139人
Blackstone: 400人
フィーと投資収益(2006年)
KKR: $4.4 billion (約5,400億円)
Blackstone: $8.7 billion (約1.1兆円)
純利益(2006年)
KKR: $1.1 billion (約1,350億円)
Blackstone: $2.27 billion (約2,800億円)
平均年利(リターン)
KKR: 20.2%
Blackstone: 22.6%
パートナー持分(IPO前)
KKR (Kravis氏/Roberts氏) : それぞれ37.5%
Blackstone (Schwarzman氏): 30%
上場目論見書のページ数(補遺を除く)
KKR: 204ページ
Blackstone: 270ページ
by harry_g
| 2007-07-04 07:45
| LBO・プライベートエクイティ


