2007年 05月 24日
中国政府のPE投資? |
日本でも既に報道されているかもしれませんが、5月21日のNY Timesによると、1.2兆ドル(約145兆円)の外貨準備高を誇る中国政府が、アメリカの投資ファンド最大手で近々IPOを行う予定のBlackstoneに$3bn(約3,600億円)の投資することを発表したそうです。
中国政府は、プライベートエクイティ投資のリミテッドパートナーとしてBlackstoneが運営するファンドに出資するのではなく、上場無議決権株式の約8%をIPOの直前にIPO価格から若干のディスカウントで取得するという形で、いわば投資顧問である本体への投資を行うようです。
Blackstoneの共同設立者であるSchwarzman氏はNY Timesとのインタビューの中で、今回の中国政府の動きを「歴史的な変化であり、グローバルな資本の流れのパラダイムシフトである」と述べた上で、今回の動きは非常に「大きく」、また自身もすごく「驚いた」そうです。
NY Timesもその記事の中で、今回の中国政府の動きを、活況に沸くプライベートエクイティ業界が中国との関係を深める大きなステップになる、といった趣旨で書いていたと思います。
ただ、かつてプロの投資家だけに門戸が開かれていたLBOファンドが、上場を通じて政府や一般個人に上場の機会を提供することについては、必ずしも歓迎する声ばかりではないというのが現実かもしれません。
クレジットスプレッドの歴史的低下に支えられてLBOはかつてない規模に拡大しているわけですが、その動きは同時にリスク許容量の拡大(期待IRRの低下)を伴っていることはいつも書いている通りであり、そんな中でファンドのオーナー達がキャッシュアウトしようとする動きを、業界の「過熱感」を象徴するものだと指摘する人もいるようです。
またTH Leeなどかつて大手・名門と呼ばれたファンドの名前を最近あまり見かけない理由について、それらのファンドがBlackstoneなどと比べて勢いを失っているからではなく、過剰な資金の受け入れやリスクの高い大規模なディールへの参加を意図的に避け、専ら投資先企業の売却に専念しているためだと言う話も聞こえてきます。
そんな中で発表された中国政府によるBlackstone株への投資ですが、アメリカの政治経済関係者の間でも、色々な憶測を呼んでいるようです。同日付のNY Timesの別の記事によると、中国政府はBlackstoneのような投資ファンドへの出資を通じて、外国企業のコントロールを強めようとしているのではないかと懸念する声が上がっているそうです。
その記事によると、今回の中国の動きを1980年代に日本企業が「アメリカ人の心」と書き立てられたNYCのロックフェラーセンターやアメリカ有数のゴルフコースであるペブルビーチを買収した時の事になぞらえたり、数年前に中国政府が所有する石油大手CnoocがアメリカのUnocolを買収しようとした際にアメリカ議会が買収をブロックした事に対抗する動きではないかと指摘したりする人もいるそうです。
もちろん中国政府はこのような指摘を否定しており、今回の投資も、外貨準備高を米国債以外の外国資産に分散する動きの一貫であると主張しているそうです。
実際NY Timesによると、外貨準備高のほぼ全額を米国債で保有している日本と異なり、中国は以前から積極的に米国のモーゲージ債やユーロ建資産の購入なども進めているそうです。
また将来的には、インデックスファンドのような海外の株式市場全般への投資意欲も見せているそうで、株式投資の世界でも、中東や東南アジアの政府が有する投資部門が、主要なプレーヤーとして大きな存在感を示しているケースは珍しくありません。そう考えると今回の動きも、純粋な投資行動の一貫と考える方が自然な気がします。
また中国では、IPO直前に企業に投資するのはよくあることだそうで、CitigroupやGoldman Sachsなど米国の大手金融機関も、実際にそのような形態で中国企業への投資を行った事例が見られます。今回の中国政府のBlackstoneへの投資も、IPO価格から4.5%のディスカウントで株式が購入できるという仕組みになっており、ある意味では通例の投資慣行になぞった行動と言えるかもしれません。
BlackstoneのIPOは、当初$4bn(約4,800億円)を上回る規模になると噂されていましたが、最新のファイリングによるとプライスレンジは$29から$31、オファリング株式数は1.3億株だそうで、若干$4bnを下回る規模になるかもしれません。ただこの金額は中国政府からの出資額を含まないため、最終的には同社は8,000億円超の規模の資金調達をすることになりそうです。
ちなみにIPO価格が$30で決まった場合には、Blackstoneの時価総額は大手証券のBear Stearnsを上回り、Lehman Brothersの時価総額に迫る規模になるそうです。同社のIPOは、未回収投資の評価にブラックショールズモデルを使うなど色々物議を醸しているようですが、プライベートエクイティ業界の歴史の中で最も注目される「案件」の一つになることだけは間違いない気がします。
中国政府は、プライベートエクイティ投資のリミテッドパートナーとしてBlackstoneが運営するファンドに出資するのではなく、上場無議決権株式の約8%をIPOの直前にIPO価格から若干のディスカウントで取得するという形で、いわば投資顧問である本体への投資を行うようです。
Blackstoneの共同設立者であるSchwarzman氏はNY Timesとのインタビューの中で、今回の中国政府の動きを「歴史的な変化であり、グローバルな資本の流れのパラダイムシフトである」と述べた上で、今回の動きは非常に「大きく」、また自身もすごく「驚いた」そうです。
NY Timesもその記事の中で、今回の中国政府の動きを、活況に沸くプライベートエクイティ業界が中国との関係を深める大きなステップになる、といった趣旨で書いていたと思います。
ただ、かつてプロの投資家だけに門戸が開かれていたLBOファンドが、上場を通じて政府や一般個人に上場の機会を提供することについては、必ずしも歓迎する声ばかりではないというのが現実かもしれません。
クレジットスプレッドの歴史的低下に支えられてLBOはかつてない規模に拡大しているわけですが、その動きは同時にリスク許容量の拡大(期待IRRの低下)を伴っていることはいつも書いている通りであり、そんな中でファンドのオーナー達がキャッシュアウトしようとする動きを、業界の「過熱感」を象徴するものだと指摘する人もいるようです。
またTH Leeなどかつて大手・名門と呼ばれたファンドの名前を最近あまり見かけない理由について、それらのファンドがBlackstoneなどと比べて勢いを失っているからではなく、過剰な資金の受け入れやリスクの高い大規模なディールへの参加を意図的に避け、専ら投資先企業の売却に専念しているためだと言う話も聞こえてきます。
そんな中で発表された中国政府によるBlackstone株への投資ですが、アメリカの政治経済関係者の間でも、色々な憶測を呼んでいるようです。同日付のNY Timesの別の記事によると、中国政府はBlackstoneのような投資ファンドへの出資を通じて、外国企業のコントロールを強めようとしているのではないかと懸念する声が上がっているそうです。
その記事によると、今回の中国の動きを1980年代に日本企業が「アメリカ人の心」と書き立てられたNYCのロックフェラーセンターやアメリカ有数のゴルフコースであるペブルビーチを買収した時の事になぞらえたり、数年前に中国政府が所有する石油大手CnoocがアメリカのUnocolを買収しようとした際にアメリカ議会が買収をブロックした事に対抗する動きではないかと指摘したりする人もいるそうです。
もちろん中国政府はこのような指摘を否定しており、今回の投資も、外貨準備高を米国債以外の外国資産に分散する動きの一貫であると主張しているそうです。
実際NY Timesによると、外貨準備高のほぼ全額を米国債で保有している日本と異なり、中国は以前から積極的に米国のモーゲージ債やユーロ建資産の購入なども進めているそうです。
また将来的には、インデックスファンドのような海外の株式市場全般への投資意欲も見せているそうで、株式投資の世界でも、中東や東南アジアの政府が有する投資部門が、主要なプレーヤーとして大きな存在感を示しているケースは珍しくありません。そう考えると今回の動きも、純粋な投資行動の一貫と考える方が自然な気がします。
また中国では、IPO直前に企業に投資するのはよくあることだそうで、CitigroupやGoldman Sachsなど米国の大手金融機関も、実際にそのような形態で中国企業への投資を行った事例が見られます。今回の中国政府のBlackstoneへの投資も、IPO価格から4.5%のディスカウントで株式が購入できるという仕組みになっており、ある意味では通例の投資慣行になぞった行動と言えるかもしれません。
BlackstoneのIPOは、当初$4bn(約4,800億円)を上回る規模になると噂されていましたが、最新のファイリングによるとプライスレンジは$29から$31、オファリング株式数は1.3億株だそうで、若干$4bnを下回る規模になるかもしれません。ただこの金額は中国政府からの出資額を含まないため、最終的には同社は8,000億円超の規模の資金調達をすることになりそうです。
ちなみにIPO価格が$30で決まった場合には、Blackstoneの時価総額は大手証券のBear Stearnsを上回り、Lehman Brothersの時価総額に迫る規模になるそうです。同社のIPOは、未回収投資の評価にブラックショールズモデルを使うなど色々物議を醸しているようですが、プライベートエクイティ業界の歴史の中で最も注目される「案件」の一つになることだけは間違いない気がします。
by harry_g
| 2007-05-24 11:25
| LBO・プライベートエクイティ