2007年 05月 01日
優良ファンド発掘の「難」 |
世界をリクイディティが満たしている現在、もはやプライベートエクイティやヘッジファンドと言った代替的投資(オルタナティブインベストメント)は特段珍しい存在ではなくなった感がありますが、資金を運用する投資家や富裕層にとって、無数に存在するこれらのファンドのどこに投資すべきかを判断するのは、簡単な作業ではないようです。
4月24日にCNNのウェブサイトに掲載されていたロイターの記事によると、投資信託のように広く一般に情報が開示されている存在に比べて、ヘッジファンドなどは規制上情報開示が少なく、マネージャーの善し悪しを見極めるのは一苦労なのだそうです。写真は後で述べるNew Yorkマガジンの記事からですが、まさに「Behind the Hedge(生垣の裏側)」という印象なのかもしれません。
投資家業界については正直専門ではないためあくまで素人意見になってしまいますが、このファンド選定作業を難しくしている理由に、そもそも「優良」ファンドとは何なのか、という命題が絡んでいるのかもしれません。伝統的投資であれば、これは単純にインデックスに対する相対リターンとなるのでしょうが、オルタナティブ投資に関しては、そこまで明快なガイドラインは存在していないのではという気がします。
この辺りは是非、実際にオルタナティブ投資にかかわっている方のご意見を伺いたいところですが、例えば期待リターンについて考えてみると、株式であればインフレ率を上回る成長、アクティブファンドであればインデックスを上回る成長、ということになるのでしょうが、オルタナティブファンドについては色々言われるところを聞いている限りでは、「株式市場のリターンを大きく超えたレベル」と言ったイメージ以外に明確な定義をあまり聞いたことがない気がします。
もちろんプライベートエクイティであれば、金利環境にもよりますが、教科書的にはIRRで20%から30%が求められると言われます。ヘッジファンドについてもPEと同様のフィーストラクチャーであることを考えると、こちらにもそれと同様のリターンが期待されており、投資家はそういったファンド群から「相対的に」優れたリターンを上げるファンドを探し出すことを命題としている、と考えれば妥当なのかもしれません。
ただ現状はどうかと言うと、最近の業界ブームを受けてプライベートエクイティファンドも目標IRRを15%程度まで下げていると言われていますし、ヘッジファンド業界全体のリターンも、2006年は15%程度と、米国の主要株式指標であるS&P 500を若干上回る程度であったと言われます。
これらの数字だけを単純に見て、オルタナティブ投資の魅力が無くなったと指摘する向きもあるようですが、オルタナティブ投資に求められる最大の特性である、市場が下落局面に入っても絶対リターン(プラスの数字)を上げることが期待される点を考えると、議論はそう単純ではない気がします。
例えばヘッジファンドに関しては、その名の通り市場リスクをヘッジしたポートフォリオが組まれていることが期待されるわけで、その状態で市場と同じかそれを超えるリターンを上げているとすると、市場リターンとの単純比較でお粗末な結果とは決して言えない気がします。
それでも情報開示が限定的であり、かつマネージャーに大きな投資裁量が認められているオルタナティブ投資の世界に投資をするのが難しい作業であることは、想像に難くありません。また最近であれば、大手ヘッジファンドであったAmaranthが天然ガス投資に失敗して破綻したことは記憶に新しいところであり、投資家はより慎重になっているのかもしれません。
ロイターの記事によると、このような状況を受けて最近投資家の間では、純粋に極大な絶対リターンを追及するのではなく、ヘッジファンドであればしっかりとリスクをヘッジした形で資金を運用しているファンドを好む傾向が強まっているそうです。
この話を読んでいて思い出したのですが、以前に某大手機関投資家に勤務している友人に聞いた話も、投資家業界で一流と言われるところは「今年は50%だがその次は5%」といったリターンのボラティリティを嫌い、市場環境に拘らず15%であれば15%のリターンを安定的に出せるところを強く嗜好する傾向がある、と言う事だったと思います。
ちなみに、ヘッジファンドやPEファンドはよく「つかみ所のない、顔の見えない存在」などと言われますが、少なくともアメリカの金融界にいるとそういう感覚は全くなく、むしろ常に話題を集めるメジャーな存在になっていると言えるかもしれません。その例を端的に示しているのがメディアカバレッジの量と言える気がします。
最近ではNY Timesでプライベートエクイティ業界のディールメイカー達の世界について誰がどのディールにどう関与しているのかといったゴシップ的な(それでも相当詳しい)特集が組まれていました。
ヘッジファンドについても、最近のNew Yorkマガジンで、ヘッジファンドとは何者で、オフィスはなぜマンハッタンの特定地域とグリニッヂに集中しており、どういう種別の投資家があり、どういう人が運用しており、その奥さんはどんな人で、どういう物品を買い集めているかなどといった、一般向けの特集が組まれていました。
(NY TimesのPE業界に関する記事は、「Masters of the New Universe」という目を引くタイトルで4月4日付のブログ、New Yorkマガジンのヘッジファンド業界に関する記事は上の写真のもので、「Behind the Hedge」と言うヘッドラインです。)
まあこれらの特集がファンドへの投資判断の役に立つことはないのでしょうが、業界への知識が一般に広って行く中で、オルタナティブファンド投資のノウハウや基準なども、今後一層整備されて行くのかもしれません。
投資家業界については正直専門ではないためあくまで素人意見になってしまいますが、このファンド選定作業を難しくしている理由に、そもそも「優良」ファンドとは何なのか、という命題が絡んでいるのかもしれません。伝統的投資であれば、これは単純にインデックスに対する相対リターンとなるのでしょうが、オルタナティブ投資に関しては、そこまで明快なガイドラインは存在していないのではという気がします。
この辺りは是非、実際にオルタナティブ投資にかかわっている方のご意見を伺いたいところですが、例えば期待リターンについて考えてみると、株式であればインフレ率を上回る成長、アクティブファンドであればインデックスを上回る成長、ということになるのでしょうが、オルタナティブファンドについては色々言われるところを聞いている限りでは、「株式市場のリターンを大きく超えたレベル」と言ったイメージ以外に明確な定義をあまり聞いたことがない気がします。
もちろんプライベートエクイティであれば、金利環境にもよりますが、教科書的にはIRRで20%から30%が求められると言われます。ヘッジファンドについてもPEと同様のフィーストラクチャーであることを考えると、こちらにもそれと同様のリターンが期待されており、投資家はそういったファンド群から「相対的に」優れたリターンを上げるファンドを探し出すことを命題としている、と考えれば妥当なのかもしれません。
ただ現状はどうかと言うと、最近の業界ブームを受けてプライベートエクイティファンドも目標IRRを15%程度まで下げていると言われていますし、ヘッジファンド業界全体のリターンも、2006年は15%程度と、米国の主要株式指標であるS&P 500を若干上回る程度であったと言われます。
これらの数字だけを単純に見て、オルタナティブ投資の魅力が無くなったと指摘する向きもあるようですが、オルタナティブ投資に求められる最大の特性である、市場が下落局面に入っても絶対リターン(プラスの数字)を上げることが期待される点を考えると、議論はそう単純ではない気がします。
例えばヘッジファンドに関しては、その名の通り市場リスクをヘッジしたポートフォリオが組まれていることが期待されるわけで、その状態で市場と同じかそれを超えるリターンを上げているとすると、市場リターンとの単純比較でお粗末な結果とは決して言えない気がします。
それでも情報開示が限定的であり、かつマネージャーに大きな投資裁量が認められているオルタナティブ投資の世界に投資をするのが難しい作業であることは、想像に難くありません。また最近であれば、大手ヘッジファンドであったAmaranthが天然ガス投資に失敗して破綻したことは記憶に新しいところであり、投資家はより慎重になっているのかもしれません。
ロイターの記事によると、このような状況を受けて最近投資家の間では、純粋に極大な絶対リターンを追及するのではなく、ヘッジファンドであればしっかりとリスクをヘッジした形で資金を運用しているファンドを好む傾向が強まっているそうです。
この話を読んでいて思い出したのですが、以前に某大手機関投資家に勤務している友人に聞いた話も、投資家業界で一流と言われるところは「今年は50%だがその次は5%」といったリターンのボラティリティを嫌い、市場環境に拘らず15%であれば15%のリターンを安定的に出せるところを強く嗜好する傾向がある、と言う事だったと思います。
ちなみに、ヘッジファンドやPEファンドはよく「つかみ所のない、顔の見えない存在」などと言われますが、少なくともアメリカの金融界にいるとそういう感覚は全くなく、むしろ常に話題を集めるメジャーな存在になっていると言えるかもしれません。その例を端的に示しているのがメディアカバレッジの量と言える気がします。
最近ではNY Timesでプライベートエクイティ業界のディールメイカー達の世界について誰がどのディールにどう関与しているのかといったゴシップ的な(それでも相当詳しい)特集が組まれていました。
ヘッジファンドについても、最近のNew Yorkマガジンで、ヘッジファンドとは何者で、オフィスはなぜマンハッタンの特定地域とグリニッヂに集中しており、どういう種別の投資家があり、どういう人が運用しており、その奥さんはどんな人で、どういう物品を買い集めているかなどといった、一般向けの特集が組まれていました。
(NY TimesのPE業界に関する記事は、「Masters of the New Universe」という目を引くタイトルで4月4日付のブログ、New Yorkマガジンのヘッジファンド業界に関する記事は上の写真のもので、「Behind the Hedge」と言うヘッドラインです。)
まあこれらの特集がファンドへの投資判断の役に立つことはないのでしょうが、業界への知識が一般に広って行く中で、オルタナティブファンド投資のノウハウや基準なども、今後一層整備されて行くのかもしれません。
by harry_g
| 2007-05-01 12:03
| ヘッジファンド・株式投資