2007年 01月 20日
「ジャンクボンドは世界を救う」? |
LBOがこれだけホットになっている今日においては、誰かが「ジャンクボンドは世界を救う」と言ってもあまり驚かないかもしれません。実際そこまで行かなくても、「ジャンクボンドはアメリカを健全化させる」とは、ウォールストリートでレバレッジドファイナンス業務に携わる人が今でも口にする言葉です。
ジャンクボンドは最近ではハイイールド債やシニアサブデットなどと呼ばれていますが、信用格付の低い(非投資適格の)企業が市場からデットの資金調達を行うことを可能にした金融商品です。
Lev Finバンカーが主張するのは、企業がレバレッジ(多額の借入金)を用いることは経営のミスを許さない状況を作り出し、それが経営を「健全化」させると言う話なのですが、少々ストレッチな感じがするものの、この商売に係わる人たちのアグレッシブな性格を上手く表していて興味深いと思います。
そのハイイールド債ですが、1980年代に「ジャンクボンドの帝王」と呼ばれたMichael Milken氏が発明したものと言われています。
今はなき投資銀行Drexel Burnhamのジャンクボンド部門を率いて、同社に多額の利益をもたらしたMilken氏については、ご存知の方も多いと思います。
同氏はジャンクボンドの引き受けで華やかなキャリアを飾った後、キャリアの後半には少々行き過ぎて色々な非合法行為に手を出したと言われており、最終的には逮捕されてカリフォルニア州プレザントンにある連邦矯正施設に収容されることになります。
この時期はMilken氏の他にも多くの著名な金融業界人が捕まっており、例えばハリウッドスターゆかりのホテルであるビバリーヒルズホテルの所有者にもなっていた投資家のIvan Boesky氏などはその筆頭かと思います。(同氏がシカゴ大か何かで行ったスピーチが映画「Wall Street」の中でGordon Gekkoが行う有名な「Greed is good」のスピーチの題材になったと言われています。)
Milken氏の大物ぶりは業界では広く知られている所であり、現在でも投資銀行のレバレッジドファイナンス部門には、同氏の下で働いていた人たちが活躍していると言われています。例えば同氏が率いていたDrexelのビバリーヒルズ支店のメンバーの多くは、後にDLJに移って同社のジャンクボンドビジネスを支え、DLJがCSFBに買収された後には、DLJのメンバーの多くを吸収したUBSなどで活躍しているようです。
またMilken氏の実績は今でも色々なところで見られ、西海岸の大手スーパーであるSafewayは同氏の行ったファンディングのおかげでここまで拡大したと言われているそうですし、またLas Vegasを現在の姿に変容させた巨大ホテルプロジェクトも、元々はMilken氏がファンディングのアレンジをしたそうです。(本当かどうか分かりませんが。)
そんなMilken氏ですが、逮捕されたときには「自分は誤解された社会科学者」だと主張し、ジャンクボンドを用いれば世界中の貧困問題も解消できるはずだと考えていたと言われています。まさに「ジャンクボンドは世界を救う」と言うわけで、実際釈放後の同氏の仕事は、専ら社会福祉活動だそうです。
1月18日のBloombergに同氏がロンドンで行った講演会の話が載っていたので紹介すると、Milken氏は「世界が抱える問題の一部を金融を通じて解決できるチャンスは極めて大きい」と述べていたそうです。
これはどういう話かというと、途上国が住宅ローン債券(MBS、CMOなど)を用いることで住宅問題を解決したり、その他の証券化やデリバティブ手法を用いることで文字通り途上国に「資金を融通」し、経済活動の活性化の手助けをすることが出来ることが出来る、という話のようです。
確かに欧米以外のデット市場は発達が大幅に遅れており、私が知る限りでは日本でさえも債券市場の9割以上が国債や地方債で占められていたと記憶しています。(7年ほど前の話なので、直近の統計と違っていたらすいません。)それに対して米国では国債残高はエージェンシー債や住宅ローン債券を下回る規模になっていて、その違いに驚いた記憶があります。
デット市場を成長させることで、世界中に余っていると言われるリクイディティを途上国に向ける仕組みを作り出せば、それが同地域の経済に大きなメリットを与えることは確かに可能かもしれません。Milken氏はまさにそのことを主張しているのでしょうが、なかなかクリエイティブなアイデアと言える気がします。
ちなみにBloombergによると、Milken氏はこの講演で他にも興味深い例を出しており、90年代に失業に苦しんでいた欧州で、英国が金融市場の発達を進めたことで失業率を10%から4%に低下させることが出来たという点を指摘して、金融業の活性化の重要性を訴えていたそうです。
またシンガポールとジャマイカを比較して、1960年代に国民一人辺りのGDPが同じであった両国が、金融を用いて発展した前者は現在$26,835までGDPを増加させているのに対して、観光とコモディティ事業に注力した後者のGDPは現在でも$3,583に過ぎない、などと述べていたそうです。
これらの例が経済学や経済政策面から見てどうかや、シンガポールとジャマイカの違いを産業だけで説明できるかという話はともかく、「ジャンクボンドは世界を救う」ならぬ「ハイファイナンスは世界を救う」は、Milken氏の最近の合言葉なのかもしれません。
ジャンクボンドは最近ではハイイールド債やシニアサブデットなどと呼ばれていますが、信用格付の低い(非投資適格の)企業が市場からデットの資金調達を行うことを可能にした金融商品です。
Lev Finバンカーが主張するのは、企業がレバレッジ(多額の借入金)を用いることは経営のミスを許さない状況を作り出し、それが経営を「健全化」させると言う話なのですが、少々ストレッチな感じがするものの、この商売に係わる人たちのアグレッシブな性格を上手く表していて興味深いと思います。
そのハイイールド債ですが、1980年代に「ジャンクボンドの帝王」と呼ばれたMichael Milken氏が発明したものと言われています。今はなき投資銀行Drexel Burnhamのジャンクボンド部門を率いて、同社に多額の利益をもたらしたMilken氏については、ご存知の方も多いと思います。
同氏はジャンクボンドの引き受けで華やかなキャリアを飾った後、キャリアの後半には少々行き過ぎて色々な非合法行為に手を出したと言われており、最終的には逮捕されてカリフォルニア州プレザントンにある連邦矯正施設に収容されることになります。
この時期はMilken氏の他にも多くの著名な金融業界人が捕まっており、例えばハリウッドスターゆかりのホテルであるビバリーヒルズホテルの所有者にもなっていた投資家のIvan Boesky氏などはその筆頭かと思います。(同氏がシカゴ大か何かで行ったスピーチが映画「Wall Street」の中でGordon Gekkoが行う有名な「Greed is good」のスピーチの題材になったと言われています。)
Milken氏の大物ぶりは業界では広く知られている所であり、現在でも投資銀行のレバレッジドファイナンス部門には、同氏の下で働いていた人たちが活躍していると言われています。例えば同氏が率いていたDrexelのビバリーヒルズ支店のメンバーの多くは、後にDLJに移って同社のジャンクボンドビジネスを支え、DLJがCSFBに買収された後には、DLJのメンバーの多くを吸収したUBSなどで活躍しているようです。
またMilken氏の実績は今でも色々なところで見られ、西海岸の大手スーパーであるSafewayは同氏の行ったファンディングのおかげでここまで拡大したと言われているそうですし、またLas Vegasを現在の姿に変容させた巨大ホテルプロジェクトも、元々はMilken氏がファンディングのアレンジをしたそうです。(本当かどうか分かりませんが。)そんなMilken氏ですが、逮捕されたときには「自分は誤解された社会科学者」だと主張し、ジャンクボンドを用いれば世界中の貧困問題も解消できるはずだと考えていたと言われています。まさに「ジャンクボンドは世界を救う」と言うわけで、実際釈放後の同氏の仕事は、専ら社会福祉活動だそうです。
1月18日のBloombergに同氏がロンドンで行った講演会の話が載っていたので紹介すると、Milken氏は「世界が抱える問題の一部を金融を通じて解決できるチャンスは極めて大きい」と述べていたそうです。
これはどういう話かというと、途上国が住宅ローン債券(MBS、CMOなど)を用いることで住宅問題を解決したり、その他の証券化やデリバティブ手法を用いることで文字通り途上国に「資金を融通」し、経済活動の活性化の手助けをすることが出来ることが出来る、という話のようです。
確かに欧米以外のデット市場は発達が大幅に遅れており、私が知る限りでは日本でさえも債券市場の9割以上が国債や地方債で占められていたと記憶しています。(7年ほど前の話なので、直近の統計と違っていたらすいません。)それに対して米国では国債残高はエージェンシー債や住宅ローン債券を下回る規模になっていて、その違いに驚いた記憶があります。デット市場を成長させることで、世界中に余っていると言われるリクイディティを途上国に向ける仕組みを作り出せば、それが同地域の経済に大きなメリットを与えることは確かに可能かもしれません。Milken氏はまさにそのことを主張しているのでしょうが、なかなかクリエイティブなアイデアと言える気がします。
ちなみにBloombergによると、Milken氏はこの講演で他にも興味深い例を出しており、90年代に失業に苦しんでいた欧州で、英国が金融市場の発達を進めたことで失業率を10%から4%に低下させることが出来たという点を指摘して、金融業の活性化の重要性を訴えていたそうです。
またシンガポールとジャマイカを比較して、1960年代に国民一人辺りのGDPが同じであった両国が、金融を用いて発展した前者は現在$26,835までGDPを増加させているのに対して、観光とコモディティ事業に注力した後者のGDPは現在でも$3,583に過ぎない、などと述べていたそうです。
これらの例が経済学や経済政策面から見てどうかや、シンガポールとジャマイカの違いを産業だけで説明できるかという話はともかく、「ジャンクボンドは世界を救う」ならぬ「ハイファイナンスは世界を救う」は、Milken氏の最近の合言葉なのかもしれません。
by harry_g
| 2007-01-20 12:59
| LBO・プライベートエクイティ


