2007年 01月 13日
「紳士協定」の終焉? |
既にご存知の方も多いかと思いますが、史上最大のLBOとして昨年の11月に発表された商業用不動産運用会社(REIT)最大手Equity Office PropertiesのBlackstoneによるLBOに、対抗ビッドが現れたようです。
Equity Office Propertiesは、昨年末のエントリーでご紹介した、今の世界の状況を歌った興味深いホリデーカードの送り手であるSamuel Zell氏が運用する会社で、米国最大のオフィスビルの管理会社と言われています。
Blackstoneの買収価格は、$36bn(約4.3兆円)というそれ以前では最大の案件だったHCAのLBO(2006年発表)を上回るものとして注目を集めたのは、記憶の新しいところです。
1月11日のメディアの報道によると、今回買収提案をしているのは日本でもよく名前を聞く大手投資ファンドCerberus(サーベラス)を中心としたグループで、$38bn(約4.6兆円)の金額を提示しているそうです。言うまでもありませんが、このビッドが成立した場合、再びLBOの規模の記録が塗り替えられることになりそうです。
以前にも書いたことがありますが、アメリカのプライベートエクイティの世界では、特定のファンドまたはコンソーシアムが買収に至った案件に対抗ビッドを入れないという暗黙のルールがあり、これは業界で「紳士協定」などと呼ばれて守られてきたと言われています。
それが最近のPEへの大量の資金流入に伴って、この内輪のルールも徐々にほころびつつあるようで、昨年は半導体会社FreescaleのLBOにおいて、対抗ビッドがなされたことが注目を集めました。今回の案件も当然ウォールストリートや金融メディアの注目を集めており、CNBCでも早速大々的に報道していたようです。
NY Timesによると、Blackstoneへの売値は安すぎるとの批判が株主から出ていたとされ、対抗ビッドの可能性は予想されていたそうです。それにしてもこれだけの規模の案件での対抗ビッドというのは、やはり異例と言える気がします。そんなこともあってか、CNBCはFreescaleのLBOで同業他社から対抗ビッドされた経験のあるCarlyleの共同創業者David Rubenstein氏を招いて、「紳士協定」について聞いていました。
同氏はインタビューの中で、「プロスポーツの選手は勝利に貪欲で必死に競争しているが、プライベートエクイティ業界のプレーヤーはそれを上回る勝利への貪欲さがあり、過酷な競争は日ごろから行われている」とした上で、「対抗ビッドがあまり成されなかったのは、その方が効率的と判断されて来たからだ」と言った趣旨の発言をしていたようです。
Freescaleの時には、Rubenstein氏は「紳士協定」を破ったKKRを批判していたと記憶していますが、これもまた以前に書いた通り、その後政府がこの業界の暗黙の協定を独禁法違反の疑いで捜査しているとの話もあり、今回はだいぶトーンダウンしたインタビューだったとの印象を受けました。会社、ひいてはPE業界のスポークスマンとも言える立場なので、そのようなポジションを取るのは当然とも言えるかもしれませんが、内心は競争激化を心配していることは間違いない気がします。
ビッド競争は一般のM&Aでは何も珍しいことではなく、そのような事態に対処する措置もいろいろ講じられています。今回もBlackstoneは、万が一売り手との合意が破談になった場合には、ブレイクアップフィーの$200mm(約240億円)を手にすることができます。それでもFreescaleに続いてどんどん「紳士協定破り」の前例が出来て行くことを業界のトッププレーヤー達がどう考えているのか、興味深いところです。
余談ですが、Rubenstein氏はCNBCへのインタビューの中で、先日も書いたマネジメントへの高額報酬の問題についても言及していました。詳しくは聞いていませんでしたが、PEファンドはリターン(報酬)に見合う働きをしてくれるマネジメントには幾らでも払う準備があり、それは投資家が得ている価値を考えると妥当な判断だと思う、と述べていたようです。
この議論はもっともであり、経営者という専門職の人材不足を反映しているのかもしれません。またこの辺りが、IBM元会長など大物経営者が未上場企業の経営に積極的に携わるようになった(と同時に上場企業の経営者“業界”から流出してしまった)理由とも言われているようです。
今回の案件はまた、住宅市場が弱含んでいる中で好調を続ける商業用不動産の買収案件であることも、注目を集める要因となっている気がします。一般には、アメリカの住宅バブルがいつ崩壊するか、それが米国経済ひいては世界経済にどういう影響を与えるかと言った記事が多く見られるようですが、不動産投資信託REITの世界には、今のところそのような心配はあまり当てはまらないようです。
その要因として言われているのは、企業業績が好調を続けているため賃料が上昇していることや、ビルの建設コストが上昇しているため既存のビルの価値が上昇していることなどが挙げられていますが、今後の展開が注目されるところです。
Equity Office Propertiesは、昨年末のエントリーでご紹介した、今の世界の状況を歌った興味深いホリデーカードの送り手であるSamuel Zell氏が運用する会社で、米国最大のオフィスビルの管理会社と言われています。Blackstoneの買収価格は、$36bn(約4.3兆円)というそれ以前では最大の案件だったHCAのLBO(2006年発表)を上回るものとして注目を集めたのは、記憶の新しいところです。
1月11日のメディアの報道によると、今回買収提案をしているのは日本でもよく名前を聞く大手投資ファンドCerberus(サーベラス)を中心としたグループで、$38bn(約4.6兆円)の金額を提示しているそうです。言うまでもありませんが、このビッドが成立した場合、再びLBOの規模の記録が塗り替えられることになりそうです。
以前にも書いたことがありますが、アメリカのプライベートエクイティの世界では、特定のファンドまたはコンソーシアムが買収に至った案件に対抗ビッドを入れないという暗黙のルールがあり、これは業界で「紳士協定」などと呼ばれて守られてきたと言われています。
それが最近のPEへの大量の資金流入に伴って、この内輪のルールも徐々にほころびつつあるようで、昨年は半導体会社FreescaleのLBOにおいて、対抗ビッドがなされたことが注目を集めました。今回の案件も当然ウォールストリートや金融メディアの注目を集めており、CNBCでも早速大々的に報道していたようです。
NY Timesによると、Blackstoneへの売値は安すぎるとの批判が株主から出ていたとされ、対抗ビッドの可能性は予想されていたそうです。それにしてもこれだけの規模の案件での対抗ビッドというのは、やはり異例と言える気がします。そんなこともあってか、CNBCはFreescaleのLBOで同業他社から対抗ビッドされた経験のあるCarlyleの共同創業者David Rubenstein氏を招いて、「紳士協定」について聞いていました。
同氏はインタビューの中で、「プロスポーツの選手は勝利に貪欲で必死に競争しているが、プライベートエクイティ業界のプレーヤーはそれを上回る勝利への貪欲さがあり、過酷な競争は日ごろから行われている」とした上で、「対抗ビッドがあまり成されなかったのは、その方が効率的と判断されて来たからだ」と言った趣旨の発言をしていたようです。Freescaleの時には、Rubenstein氏は「紳士協定」を破ったKKRを批判していたと記憶していますが、これもまた以前に書いた通り、その後政府がこの業界の暗黙の協定を独禁法違反の疑いで捜査しているとの話もあり、今回はだいぶトーンダウンしたインタビューだったとの印象を受けました。会社、ひいてはPE業界のスポークスマンとも言える立場なので、そのようなポジションを取るのは当然とも言えるかもしれませんが、内心は競争激化を心配していることは間違いない気がします。
ビッド競争は一般のM&Aでは何も珍しいことではなく、そのような事態に対処する措置もいろいろ講じられています。今回もBlackstoneは、万が一売り手との合意が破談になった場合には、ブレイクアップフィーの$200mm(約240億円)を手にすることができます。それでもFreescaleに続いてどんどん「紳士協定破り」の前例が出来て行くことを業界のトッププレーヤー達がどう考えているのか、興味深いところです。
余談ですが、Rubenstein氏はCNBCへのインタビューの中で、先日も書いたマネジメントへの高額報酬の問題についても言及していました。詳しくは聞いていませんでしたが、PEファンドはリターン(報酬)に見合う働きをしてくれるマネジメントには幾らでも払う準備があり、それは投資家が得ている価値を考えると妥当な判断だと思う、と述べていたようです。
この議論はもっともであり、経営者という専門職の人材不足を反映しているのかもしれません。またこの辺りが、IBM元会長など大物経営者が未上場企業の経営に積極的に携わるようになった(と同時に上場企業の経営者“業界”から流出してしまった)理由とも言われているようです。
今回の案件はまた、住宅市場が弱含んでいる中で好調を続ける商業用不動産の買収案件であることも、注目を集める要因となっている気がします。一般には、アメリカの住宅バブルがいつ崩壊するか、それが米国経済ひいては世界経済にどういう影響を与えるかと言った記事が多く見られるようですが、不動産投資信託REITの世界には、今のところそのような心配はあまり当てはまらないようです。
その要因として言われているのは、企業業績が好調を続けているため賃料が上昇していることや、ビルの建設コストが上昇しているため既存のビルの価値が上昇していることなどが挙げられていますが、今後の展開が注目されるところです。
by harry_g
| 2007-01-13 08:24
| LBO・プライベートエクイティ


