2007年 01月 04日
「リクイディティ」の善悪論 |
年末年始には興味深い記事を色々なところで見かけましたが、そのうちの一つに、元旦のFTの「Why Bears Are Scared of Bubbles」というのがありました。ちょうど都合よく、その記事の冒頭が「米国市場に関するブル派とベア派の議論の焦点は、『リクイディティ』の一言に集約される」と言う、去年の最後のエントリーに関連する内容でもあったので、若干薄い内容でしたが、簡単にご紹介します。
この記事によると、世の中がリクイディティで溢れていることについては議論の無いところであるそうですが、そのリクイディティを生み出している要因が何だと考えるかによっては、今年の市場はブルにもベアにも見えるそうです。
まず、リクイディティが米国経済を引っ張る最大の要因になっているのは間違いないようで、企業のネットキャッシュフローと家計貯蓄の合計をリクイディティと定義すると、その数字は年利9%という、GDPを上回る勢いで成長しているそうです。経済成長とリクイディティの拡大がここまで乖離するのは極めて稀だそうで、これは不動産市場などには確実にプラスに働いている気がします。
ここでブル(強気)派は、リクイディティは一般に考えられているよりも遥かに効率的な経済活動から生み出されており、その証拠は政府に支払われている税金の額の伸び率などで確認できる、と考えているそうです。
また企業も、フリーキャッシュフローを投資に回さずに温存するか株主に還元する傾向を強めているそうで、FEDの17回にわたる合計4.25%の利上げにも屈せず企業はバランスシートを改善しており、そのより強固なバランスシートが更なる経済発展の支えになるとも考えることが出来るようです。
それに対してベア(弱気)派は、リクイディティは投機的取引によって生み出されており、リスクの拡大傾向はバブルが破綻するまで続くと考えているようです。
その一例として、円キャリートレード、つまり低金利の円で借り入れをして高金利のオーストラリアドルのような通貨で運用すること、の人気の過熱が上げられていましたが、このトレードは過去にも最終局面で大きな為替調整をもたらしたことで知られる、リスクの高い取引と言われています。
為替以外にも、クレジットデリバティブの発達などによって膨張しているクレジットマーケットの過熱感もリスク要因として挙げられていました。クレジットデリバティブによって信用リスク自体の取引が可能になり、結果として市場が効率化しているわけですが、その結果M&AやLBOに使われるデットの調達が極めて容易になっており、そのことが直接的なクレジットリスクの拡大のみならず、株式のバリュエーションに与えているインパクトも看過できないかもしれません。
しかしFTの記事によると、このリクイディティの投機性を考えなければ、米国株式市場の先行きは明るく見えるそうです。企業のバランスシートは引き続き健全であること、そして利益成長も続いていることが、その原因として挙げられていました。
しかしリクイディティが急に枯渇するようなことになれば、市場の健全な機能が失われる可能性は否定できません。ともかくベア派が心配しているような、キャリートレードのアンワインドの動き、米国でのデフォルト率の上昇、また住宅市場の更なる冷え込みによる住宅ローン市場の破綻などに、今年を通じて注目が集まるのは間違いない気がします。
そしてFTも最後に挙げていましたが、FEDが広く期待されているような利下げを行わず、リクイディティを枯渇させる目的で利上げを続けたとすれば、それも大きなリスクになっていくかもしれません。
ウォールストリートから見ても、上記のようなリスクが一つでも顕在化すると、例えば借り入れコストが上昇すればキャッシュディールのM&AやLBOは当然影響を受けますし、最悪の場合には証券会社のプロップデスクがクレジットデリバティブやモーゲージ債のトレーディングの失敗で直接打撃を受ける可能性もあります。
投資銀行サイドから見ても、M&AやLBOの減少は当然アドバイザリーフィー収入の減少に結びつきますし、また結果として株式市場が軟調に推移すると、IPOやエクイティオファリングと行った案件の減少にもつながります。
また急速なリクイディティの枯渇が起こったとすると、それはバイサイド(運用者)にはより深刻な問題であり、その結果ヘッジファンドなどが窮地に追い込まれたり、LBOファンドがポートフォリオ企業のエグジットが思うように出来なくなったり、最悪のケースではデフォルトする可能性も懸念されます。
このように考えると、リクイディティは行き過ぎさえしなければ経済活動の「潤滑油」としてプラスに作用する反面、物事が行き過ぎがちなのが市場メカニズムの常であり、確実に拡大しているリスクには敏感になりすぎるということは無い、というのが2007年の妥当なテーマと言えるかもしれません。
この記事によると、世の中がリクイディティで溢れていることについては議論の無いところであるそうですが、そのリクイディティを生み出している要因が何だと考えるかによっては、今年の市場はブルにもベアにも見えるそうです。まず、リクイディティが米国経済を引っ張る最大の要因になっているのは間違いないようで、企業のネットキャッシュフローと家計貯蓄の合計をリクイディティと定義すると、その数字は年利9%という、GDPを上回る勢いで成長しているそうです。経済成長とリクイディティの拡大がここまで乖離するのは極めて稀だそうで、これは不動産市場などには確実にプラスに働いている気がします。
ここでブル(強気)派は、リクイディティは一般に考えられているよりも遥かに効率的な経済活動から生み出されており、その証拠は政府に支払われている税金の額の伸び率などで確認できる、と考えているそうです。
また企業も、フリーキャッシュフローを投資に回さずに温存するか株主に還元する傾向を強めているそうで、FEDの17回にわたる合計4.25%の利上げにも屈せず企業はバランスシートを改善しており、そのより強固なバランスシートが更なる経済発展の支えになるとも考えることが出来るようです。
それに対してベア(弱気)派は、リクイディティは投機的取引によって生み出されており、リスクの拡大傾向はバブルが破綻するまで続くと考えているようです。
その一例として、円キャリートレード、つまり低金利の円で借り入れをして高金利のオーストラリアドルのような通貨で運用すること、の人気の過熱が上げられていましたが、このトレードは過去にも最終局面で大きな為替調整をもたらしたことで知られる、リスクの高い取引と言われています。
為替以外にも、クレジットデリバティブの発達などによって膨張しているクレジットマーケットの過熱感もリスク要因として挙げられていました。クレジットデリバティブによって信用リスク自体の取引が可能になり、結果として市場が効率化しているわけですが、その結果M&AやLBOに使われるデットの調達が極めて容易になっており、そのことが直接的なクレジットリスクの拡大のみならず、株式のバリュエーションに与えているインパクトも看過できないかもしれません。
しかしFTの記事によると、このリクイディティの投機性を考えなければ、米国株式市場の先行きは明るく見えるそうです。企業のバランスシートは引き続き健全であること、そして利益成長も続いていることが、その原因として挙げられていました。
しかしリクイディティが急に枯渇するようなことになれば、市場の健全な機能が失われる可能性は否定できません。ともかくベア派が心配しているような、キャリートレードのアンワインドの動き、米国でのデフォルト率の上昇、また住宅市場の更なる冷え込みによる住宅ローン市場の破綻などに、今年を通じて注目が集まるのは間違いない気がします。
そしてFTも最後に挙げていましたが、FEDが広く期待されているような利下げを行わず、リクイディティを枯渇させる目的で利上げを続けたとすれば、それも大きなリスクになっていくかもしれません。
ウォールストリートから見ても、上記のようなリスクが一つでも顕在化すると、例えば借り入れコストが上昇すればキャッシュディールのM&AやLBOは当然影響を受けますし、最悪の場合には証券会社のプロップデスクがクレジットデリバティブやモーゲージ債のトレーディングの失敗で直接打撃を受ける可能性もあります。
投資銀行サイドから見ても、M&AやLBOの減少は当然アドバイザリーフィー収入の減少に結びつきますし、また結果として株式市場が軟調に推移すると、IPOやエクイティオファリングと行った案件の減少にもつながります。
また急速なリクイディティの枯渇が起こったとすると、それはバイサイド(運用者)にはより深刻な問題であり、その結果ヘッジファンドなどが窮地に追い込まれたり、LBOファンドがポートフォリオ企業のエグジットが思うように出来なくなったり、最悪のケースではデフォルトする可能性も懸念されます。
このように考えると、リクイディティは行き過ぎさえしなければ経済活動の「潤滑油」としてプラスに作用する反面、物事が行き過ぎがちなのが市場メカニズムの常であり、確実に拡大しているリスクには敏感になりすぎるということは無い、というのが2007年の妥当なテーマと言えるかもしれません。
by harry_g
| 2007-01-04 11:02
| 世界経済・市場トレンド


