2006年 10月 31日
ヘッジファンド規制の再燃 |
マルチストラテジーの大手ヘッジファンドAmaranthの破綻により、アメリカではヘッジファンドの規制問題がにわかに注目を集めています。少々前になりますが、10月15日のFTにも、「US rethink on hedge fund rules」と題してそのことが触れられていました。
また10月12日のWSJの「Getting a Grip on Hedge Fund Risk」によると、同社が行った調査に回答した41人の民間のエコノミストのうちの23人がヘッジファンドの規制を強化すべきであると答え、60%がヘッジファンドは金融市場にリスクをもたらしていると回答したそうです。
「我々はヘッジファンドがどれくらい危険であるかわからない。金融市場においては、この『わからない』は絶対に禁物である」と言うあるエコノミストのコメントが、その背景の思考を上手く表している気がします。
オルタナティブ投資の代表的手法であるヘッジファンドには、年金基金や大学基金など大手の機関投資家からの資金流入が続き、市場規模は$1.5tn(約200兆円)とも言われています。ヘッジファンドが何者かということについては昔のエントリー「ヘッジファンドのイメージ」などを参照して頂きたいのですが、規模の拡大やリスクの増大と相まって、当局が規制強化を検討しているのは確かなようです。
よく誤解があるのですが、昔「ヘッジファンドの運用スタイル」でも書いた通り、現在ヘッジファンド業界の大半を占める「ロングショート」の手法は、市場が上下するリスクをヘッジしながら安定的リターンを目指す投資手法で、典型的なHFのアグレッシブなイメージとはかなり異なる存在です。
それに対してLTCMやAmaranthを破綻に追い込んだのは、いわゆる「グローバルマクロ」と呼ばれる手法で、金利やコモディティなど特定の投資対象の値上がりか値下がりに純粋にベットする手法です。この「賭け」をデリバティブやレバレッジを用いて何倍にも膨らませて行うため、失敗した時のリスクの高さはご想像の通りとなります。
このグローバルマクロの手法は、為替の投機で有名なGeorge Soros氏が用いた手法ですが、そのリスク量の大きさから、1997年のアジア通貨危機や1998年のLTCMの破綻後に急速に衰退したと言われています。
それでもAmaranthの件でも明らかな通り、このようなグローバルマクロのファンドは引き続き世の中に存在するようです。その背景については詳しくは分かりませんが、想像するに、巨額の資金を運用する機関投資家にとっては、資金の一部をそのようなハイリスク・ハイリターンの投資手法に振り分けるインセンティブがあるのかもしれません。
そして「そんな危険な存在は規制すべきだ」と言うのは実に分かりやすい議論なのですが、FTなどによると、米国内で規制を強化すると、ファンドがオフショアに出て行ってしまうという問題などがあり、現実的にはそう簡単ではないようです。最近SECの規制強化の動きに連邦裁が待ったをかけるなど、先行きは引き続き不透明な感じがします。
ではそもそもヘッジファンドが「危険だ」と言う議論の背景は何なのかと言うと、まず考えられるのは、投資家の保護の問題です。
ただヘッジファンドに出資できるのはプロの投資家(機関投資家や富裕層)に限られており、これらの投資家はリスク管理の知識や実践の能力を備えています。またヘッジファンドのほとんどがパートナーシップ制を取っており、投資家は有限責任のリミテッドパートナーの立場を取っているため、潜在的な最大の損失は、詐欺など例外的な事態を除いては出資額に限られると言えると思います。
それよりも規制当局が恐れているのは、これもFTやWSJにあった通りですが、「カウンターパーティリスク」、つまりヘッジファンドと取引をしている大手金融機関の破綻のリスクだと言えるかもしれません。
ヘッジファンドに信用を供与するのは基本的には大手の金融機関なので、それら大手銀行や投資銀行が十分なコラテラル(マージン)を取らずにアグレッシブな「貸出し競争(?)」に走ると、一つのヘッジファンドが破綻することで、連鎖的に金融機関全体にリスクが及ぶ可能性があると言えると思います。
LTCMの破綻はまさにその代表的なケースであり、当時「スーパースター集団」と考えられていたLTCMには、代表的金融機関のほとんどが15倍とも20倍とも言われる信用供与を行っていたと言われています。そのLTCMが破綻した結果、中央銀行が救済に乗り出すような事態に至ったのはご存知の通りです。
よって現在FEDやSEC、米財務省などが考えているのが、ヘッジファンドから発生し得るリスクをカウンターパート(金融機関)の側から管理する、と言うことのようです。これはリスク管理の目的から見ても、また実効性から見ても、最もメイクセンスする方法なのかもしれません。
ヘッジファンドを含む運用会社は、いわば「リスクを管理しながら取ることでリターンを上げる」のが仕事なので、例えばリスク量などに対する過剰な規制は、市場の発展を妨げたり、資金が目の行き届かないオフショアに流出したりと言う事態を招いてしまうことが懸念されます。
だからと言って、大きなリスクを誰にも知られずに取っておいて後で破綻して市場全体に大きな影響を与えるという事態は絶対に回避すべきだ、と言う主張はその通りであり、今後の規制当局の動きが注目されます。
また10月12日のWSJの「Getting a Grip on Hedge Fund Risk」によると、同社が行った調査に回答した41人の民間のエコノミストのうちの23人がヘッジファンドの規制を強化すべきであると答え、60%がヘッジファンドは金融市場にリスクをもたらしていると回答したそうです。
「我々はヘッジファンドがどれくらい危険であるかわからない。金融市場においては、この『わからない』は絶対に禁物である」と言うあるエコノミストのコメントが、その背景の思考を上手く表している気がします。
オルタナティブ投資の代表的手法であるヘッジファンドには、年金基金や大学基金など大手の機関投資家からの資金流入が続き、市場規模は$1.5tn(約200兆円)とも言われています。ヘッジファンドが何者かということについては昔のエントリー「ヘッジファンドのイメージ」などを参照して頂きたいのですが、規模の拡大やリスクの増大と相まって、当局が規制強化を検討しているのは確かなようです。
よく誤解があるのですが、昔「ヘッジファンドの運用スタイル」でも書いた通り、現在ヘッジファンド業界の大半を占める「ロングショート」の手法は、市場が上下するリスクをヘッジしながら安定的リターンを目指す投資手法で、典型的なHFのアグレッシブなイメージとはかなり異なる存在です。
それに対してLTCMやAmaranthを破綻に追い込んだのは、いわゆる「グローバルマクロ」と呼ばれる手法で、金利やコモディティなど特定の投資対象の値上がりか値下がりに純粋にベットする手法です。この「賭け」をデリバティブやレバレッジを用いて何倍にも膨らませて行うため、失敗した時のリスクの高さはご想像の通りとなります。このグローバルマクロの手法は、為替の投機で有名なGeorge Soros氏が用いた手法ですが、そのリスク量の大きさから、1997年のアジア通貨危機や1998年のLTCMの破綻後に急速に衰退したと言われています。
それでもAmaranthの件でも明らかな通り、このようなグローバルマクロのファンドは引き続き世の中に存在するようです。その背景については詳しくは分かりませんが、想像するに、巨額の資金を運用する機関投資家にとっては、資金の一部をそのようなハイリスク・ハイリターンの投資手法に振り分けるインセンティブがあるのかもしれません。
そして「そんな危険な存在は規制すべきだ」と言うのは実に分かりやすい議論なのですが、FTなどによると、米国内で規制を強化すると、ファンドがオフショアに出て行ってしまうという問題などがあり、現実的にはそう簡単ではないようです。最近SECの規制強化の動きに連邦裁が待ったをかけるなど、先行きは引き続き不透明な感じがします。
ではそもそもヘッジファンドが「危険だ」と言う議論の背景は何なのかと言うと、まず考えられるのは、投資家の保護の問題です。
ただヘッジファンドに出資できるのはプロの投資家(機関投資家や富裕層)に限られており、これらの投資家はリスク管理の知識や実践の能力を備えています。またヘッジファンドのほとんどがパートナーシップ制を取っており、投資家は有限責任のリミテッドパートナーの立場を取っているため、潜在的な最大の損失は、詐欺など例外的な事態を除いては出資額に限られると言えると思います。
それよりも規制当局が恐れているのは、これもFTやWSJにあった通りですが、「カウンターパーティリスク」、つまりヘッジファンドと取引をしている大手金融機関の破綻のリスクだと言えるかもしれません。
ヘッジファンドに信用を供与するのは基本的には大手の金融機関なので、それら大手銀行や投資銀行が十分なコラテラル(マージン)を取らずにアグレッシブな「貸出し競争(?)」に走ると、一つのヘッジファンドが破綻することで、連鎖的に金融機関全体にリスクが及ぶ可能性があると言えると思います。LTCMの破綻はまさにその代表的なケースであり、当時「スーパースター集団」と考えられていたLTCMには、代表的金融機関のほとんどが15倍とも20倍とも言われる信用供与を行っていたと言われています。そのLTCMが破綻した結果、中央銀行が救済に乗り出すような事態に至ったのはご存知の通りです。
よって現在FEDやSEC、米財務省などが考えているのが、ヘッジファンドから発生し得るリスクをカウンターパート(金融機関)の側から管理する、と言うことのようです。これはリスク管理の目的から見ても、また実効性から見ても、最もメイクセンスする方法なのかもしれません。
ヘッジファンドを含む運用会社は、いわば「リスクを管理しながら取ることでリターンを上げる」のが仕事なので、例えばリスク量などに対する過剰な規制は、市場の発展を妨げたり、資金が目の行き届かないオフショアに流出したりと言う事態を招いてしまうことが懸念されます。
だからと言って、大きなリスクを誰にも知られずに取っておいて後で破綻して市場全体に大きな影響を与えるという事態は絶対に回避すべきだ、と言う主張はその通りであり、今後の規制当局の動きが注目されます。
by harry_g
| 2006-10-31 01:19
| ヘッジファンド・株式投資


