2006年 10月 23日
PE投資の期待リターン |
アメリカでは引き続きLBOが活況を呈しており、案件の大型化が進んでいるというのはいつも書いている通りです。
しかし多すぎるお金が少なすぎる案件を追っかけていたら、リターンはどうなっているのかと言う疑問がわきます。その点について、最近知人から聞いた話がなかなか興味深かったので、ちらっと書いて見ます。
その知人は先日、とあるブレックファーストミーティングで、とある最大手LBOショップの創業者の方のスピーチを聞く機会があったそうです。
業界の重鎮である同氏によると、いわゆるメガファンドが最近積極的に行っている大型案件の期待リターンは、一般的に知られているようなLBOの期待リターンより大分低いのだそうです。ではそのマジックナンバーは何かと言うと、ずばり「13%」だそうです。
教科書的なLBOでは、期待IRRは25%から35%などといわれます。そのレンジはエクイティ、デットの両市場の状況によって変化するのですが、13%というリターンの根拠も、簡単に言うと現在のエクイティマーケットの期待リターンである8%に、5%のプレミアムを乗せたもの、なのだそうです。
もちろん13%でも絶対的には大変なリターンであり、ファンドの運用額の拡大とあいまって、ジェネラルパートナーである同氏がハッピーなのは理解できます。しかしPEファンドに投資しているリミテッドパートナー(年金や大学基金などの一般投資家)は、なぜ過去のようなもっと高いリターンを期待しないのか、と一瞬疑問に感じます。
その理由としてそのスピーチで説明されたのは、いわゆるメガディールに関しては、その絶対リターンの額に鑑みて、%ベースでのIRRは多目に見られているというのが現状だそうです。
ちなみに、かつて頻繁にみられたような規模の案件、例えば1000億円以下程度の規模となると、期待リターンは引き続き20%程度だそうで、実際にボストンなどにある中・小型ファンドにいる友人からは、相当高いIRRを期待してソーシングしているという話を聞いています。
また、このスピーチの内容で更に興味深かったのは、LBOのターゲットの条件として当然と考えられるような、「低成長」で「キャッシュフローが安定した」企業と言う点も、最近では明確に変化して来ているそうです。
ではどういう会社がターゲットになっているかと言うと、ある程度の成長が見込める企業で、その成長が景気全体の成長から主にもたらされるような企業、と言うことです。
もちろんLBOと言うくらいですから当然デットを用いているわけで、そのためには潤沢なキャッシュフローがあることが期待されるでしょうから、あまりに資金需要の強い成長企業は投資対象から外れるのかもしれません。
それにしても「マクロのトレンドから成長を得る企業」とは、正直驚きです。と言うのもデットの投資家はリターンの確実性を期待する傾向があり、マクロトレンドと言うものは、確実性とは相対的な位置にある気がするからです。
残念ながら、なぜこのような方向に投資対象が広がってきたかについては明確でなかったため、後日この友人にまた聞いてみたいと思うのですが、一つ考えられるのは、やはり巨額の資金流入と競争の激化による、投資対象の減少である気がします。
これを単純に過去と比較して、PEファンドのリターンが下がっていることを批判することも出来ますが、個人的には、絶対的リターンとしてみれば13%はかなり魅力的なリターンですし、資金需要の大きさとファンド間の競合状況に鑑みれば、大型案件のリターンが下がっているのは当然であり、仕方のないことと言える気がします。
更に考えを進めてみると、バイアウトファンドが成長株に投資してはいけない決まりは一切なく、何らかのノウハウで確実なリターンが期待できるなら、今後その動きは加速するのかもしれません。言い換えれば、今まで超成長株に投資するVCと超安定株に投資するPEに分かれていたのが、両者がお互いに接近してきているだけなのかもしれません。
アクティビスト・ヘッジファンドの存在も、流動性リスクを限定しながら投資を行ってきた伝統的なロングショートのヘッジファンド戦略と、流動性リスクを完全に受け入れ、しかし企業経営に手を入れるプライベートエクイティの戦略の間で生まれたのかもしれません。
まあヘッジファンドもアクティビストファンドも何十年の前から存在しており、LBOの最盛期が80年代だったとすると、この仮説は間違っているかもしれませんが、少なくとも私が知っている限りでは、最近ヘッジファンドで経営者に積極的に物言いをするファンドのマネージャーは、自分達はある意味ではPEに近い、と頻繁に口にしています。
(このような現象は、最近PEからHFへの人材移動が結構頻繁に起こっていることに起因しているかもしれません。今回のスピーチの話をしてくれた友人も、実はその一人です。)
流動性リスクを取りつつマジョリティを取らないアクティビストのような投資手法は、特に中小型株に投資するファンドによく見られます。これは伝統的ロングショートよりもリスクが高い、難しい手法であり、恐らく投資家からの期待リターンも高いのでは、と想像します。
話がそれてしまいましたが、LBO業界の期待リターンは投資家側の状況を反映して確実に変化して来ていること、そしてそれがエクイティマーケットに与える影響も相当大きなものであることだけは、間違いない気がします。
この辺りの投資家側の姿勢の変化について、オルタナティブ投資を行っている投資家やFoFにお勤めの方、コメントを頂ければ幸いです。
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追記
早速友人に確認してみたところ、LBOファンドが成長株に目を向けている理由は、最近パブリックマーケットが成長性を高く評価せずバリュエーションが低迷している企業が多いので、ある意味ではその「裏」を行く戦略なのだそうです。よってリターンの源泉は、文字通り利益成長になるそうで、これは伝統的なLBOとは大分違った手法のように思います。
そのような手法をとる場合、流動性リスクが遥かに低いパブリックマーケットの投資家と比較した期待リターンはどれくらいなのか、大変興味があります。更に何か分かったら、また書きたいと思います。
しかし多すぎるお金が少なすぎる案件を追っかけていたら、リターンはどうなっているのかと言う疑問がわきます。その点について、最近知人から聞いた話がなかなか興味深かったので、ちらっと書いて見ます。
その知人は先日、とあるブレックファーストミーティングで、とある最大手LBOショップの創業者の方のスピーチを聞く機会があったそうです。業界の重鎮である同氏によると、いわゆるメガファンドが最近積極的に行っている大型案件の期待リターンは、一般的に知られているようなLBOの期待リターンより大分低いのだそうです。ではそのマジックナンバーは何かと言うと、ずばり「13%」だそうです。
教科書的なLBOでは、期待IRRは25%から35%などといわれます。そのレンジはエクイティ、デットの両市場の状況によって変化するのですが、13%というリターンの根拠も、簡単に言うと現在のエクイティマーケットの期待リターンである8%に、5%のプレミアムを乗せたもの、なのだそうです。
もちろん13%でも絶対的には大変なリターンであり、ファンドの運用額の拡大とあいまって、ジェネラルパートナーである同氏がハッピーなのは理解できます。しかしPEファンドに投資しているリミテッドパートナー(年金や大学基金などの一般投資家)は、なぜ過去のようなもっと高いリターンを期待しないのか、と一瞬疑問に感じます。
その理由としてそのスピーチで説明されたのは、いわゆるメガディールに関しては、その絶対リターンの額に鑑みて、%ベースでのIRRは多目に見られているというのが現状だそうです。
ちなみに、かつて頻繁にみられたような規模の案件、例えば1000億円以下程度の規模となると、期待リターンは引き続き20%程度だそうで、実際にボストンなどにある中・小型ファンドにいる友人からは、相当高いIRRを期待してソーシングしているという話を聞いています。
また、このスピーチの内容で更に興味深かったのは、LBOのターゲットの条件として当然と考えられるような、「低成長」で「キャッシュフローが安定した」企業と言う点も、最近では明確に変化して来ているそうです。
ではどういう会社がターゲットになっているかと言うと、ある程度の成長が見込める企業で、その成長が景気全体の成長から主にもたらされるような企業、と言うことです。
もちろんLBOと言うくらいですから当然デットを用いているわけで、そのためには潤沢なキャッシュフローがあることが期待されるでしょうから、あまりに資金需要の強い成長企業は投資対象から外れるのかもしれません。
それにしても「マクロのトレンドから成長を得る企業」とは、正直驚きです。と言うのもデットの投資家はリターンの確実性を期待する傾向があり、マクロトレンドと言うものは、確実性とは相対的な位置にある気がするからです。
残念ながら、なぜこのような方向に投資対象が広がってきたかについては明確でなかったため、後日この友人にまた聞いてみたいと思うのですが、一つ考えられるのは、やはり巨額の資金流入と競争の激化による、投資対象の減少である気がします。
これを単純に過去と比較して、PEファンドのリターンが下がっていることを批判することも出来ますが、個人的には、絶対的リターンとしてみれば13%はかなり魅力的なリターンですし、資金需要の大きさとファンド間の競合状況に鑑みれば、大型案件のリターンが下がっているのは当然であり、仕方のないことと言える気がします。
更に考えを進めてみると、バイアウトファンドが成長株に投資してはいけない決まりは一切なく、何らかのノウハウで確実なリターンが期待できるなら、今後その動きは加速するのかもしれません。言い換えれば、今まで超成長株に投資するVCと超安定株に投資するPEに分かれていたのが、両者がお互いに接近してきているだけなのかもしれません。
アクティビスト・ヘッジファンドの存在も、流動性リスクを限定しながら投資を行ってきた伝統的なロングショートのヘッジファンド戦略と、流動性リスクを完全に受け入れ、しかし企業経営に手を入れるプライベートエクイティの戦略の間で生まれたのかもしれません。
まあヘッジファンドもアクティビストファンドも何十年の前から存在しており、LBOの最盛期が80年代だったとすると、この仮説は間違っているかもしれませんが、少なくとも私が知っている限りでは、最近ヘッジファンドで経営者に積極的に物言いをするファンドのマネージャーは、自分達はある意味ではPEに近い、と頻繁に口にしています。
(このような現象は、最近PEからHFへの人材移動が結構頻繁に起こっていることに起因しているかもしれません。今回のスピーチの話をしてくれた友人も、実はその一人です。)
流動性リスクを取りつつマジョリティを取らないアクティビストのような投資手法は、特に中小型株に投資するファンドによく見られます。これは伝統的ロングショートよりもリスクが高い、難しい手法であり、恐らく投資家からの期待リターンも高いのでは、と想像します。
話がそれてしまいましたが、LBO業界の期待リターンは投資家側の状況を反映して確実に変化して来ていること、そしてそれがエクイティマーケットに与える影響も相当大きなものであることだけは、間違いない気がします。
この辺りの投資家側の姿勢の変化について、オルタナティブ投資を行っている投資家やFoFにお勤めの方、コメントを頂ければ幸いです。
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追記
早速友人に確認してみたところ、LBOファンドが成長株に目を向けている理由は、最近パブリックマーケットが成長性を高く評価せずバリュエーションが低迷している企業が多いので、ある意味ではその「裏」を行く戦略なのだそうです。よってリターンの源泉は、文字通り利益成長になるそうで、これは伝統的なLBOとは大分違った手法のように思います。
そのような手法をとる場合、流動性リスクが遥かに低いパブリックマーケットの投資家と比較した期待リターンはどれくらいなのか、大変興味があります。更に何か分かったら、また書きたいと思います。
by harry_g
| 2006-10-23 16:35
| LBO・プライベートエクイティ


