2006年 10月 11日
クラブディールは「独禁法」違反? |
既に日本でも報道されているかもしれませんが、10月10日のWSJが、大手プライベートエクイティファンドが政府から「独禁法」違反の疑いをかけられている、と報じていました。
WSJの記事によると、米DOJ(司法省)が、最近のクラブディールの組成におけるLBOファンド間の行動に問題がある可能性を調査している模様で、調査の対象としてKKRやSilver Lakeなどの大手の名前が挙がっているようです。
現時点ではDOJはこれらのファンドから非公式に関連情報の提供を求めている段階だそうですが、その程度でもこれだけ大きく取り上げられることに、最近のLBOファンドの躍進ぶりと、それに対して色々な疑義を差し挟みたい人々の存在を裏付けている気がします。
複数のファンドが資金やノウハウを出し合って買収を行う「クラブディール」は、LBOの大型化の進行にともなって、すっかり一般的な形態になっています。このプロセスを通じて、潜在的な買収者の数は減ることになるため、その意味では競争環境を阻害するとの疑問を持たれるかもしれません。ただ「クラブ」が組成されなければ、そもそも案件自体が起こらないことを考えると、その指摘が本当に当たるかは微妙な気がします。
ただ、PE業界におけるいくつかの「紳士協定」、例えば一つのグループがディールにサインをした後には、他のグループは対抗ビッドを入れない、などについてまで、同じ競争阻害の観点から調べられていくかについては、今後注目していく必要があるかもしれません。
ちなみに最近ではメディアでも報じられるようになったこの紳士協定は、KKRが伝説となっているRJR Nabiscoのバイアウトを行った際に、熾烈なビッド競争がリターンの大幅低下をもたらしたことを受けて、業界に浸透したと言われています。そのような背景があると、独占禁止法の疑いがかけられることも理解できる気がします。
この一つの例として、最近KKR、Silver Lake、Bain Capitalが、Freescale Semiconductor社を$17.7bn(約2.1兆円)でバイアウトすると発表した際に、対抗ビッドを考えていたBlackstoneが最終的には手を引いたという話が、WSJの記事に載っていました。
(後にコメント欄でご指摘頂いたところによると、最終的にはBlackstoneグループが買収に至ったようです。そこで頂いた記事に興味深い詳細がありますが、確かにこの件は、当時「稀なビッド競争になった」といったアングルから報じられていた気がします。ご指摘ありがとうございました。)
ただ業界関係者は、これは非競争環境を生んだのではないと指摘しているようです。Carlyleの共同創業者であるDavid Rubenstein氏も、「バイアウト業界は今までも規律を持った世界であり、今後もそうあり続けることを期待する」といった趣旨のことを述べているそうです。(なんだか微妙な発言ですが。)
別のWSJの指摘によると、競合しているクラブ同士がビッドに関する情報を共有していたり、また負けたビッダーが買ったグループに加われることが事前に決まっていたりすると、問題になってくるかもしれないとのことです。またクラブディールが繰り返し行われることで、業界内で馴れ合いや譲り合いのような状況が生まれる可能性は、確かに否定し切れないかもしれません。
ただ私が見てきた限りでは、買収の合意に至るまでに、ファイナンシングのスキームも含めてPEファンド間で相当厳しいビッド競争が繰り広げられており、以上で指摘されるような問題は少ない気がします。巨額のファンドレイジングを行い、ディールソーシングのプレッシャーを常に受けているLBOファンドとしては、譲り合っている場合ではないと言うのが本心かもしれません。
投資銀行も、何とか「勝ち馬」にファイナンシングを提供したいと、必死に様々な提案をします。最終的にはレバレッジの大きさとそのコストの勝負になるわけですが、前者を最大化し後者を最小化するために、複雑なディールストラクチャーを考えたり様々なプロダクトを検討したりと、文字通り熾烈な提案競争が繰り広げられます。
まあ最終的には「お上」の判断次第なのかもしれませんが、そう考えると、プライベートエクイティ業界が持つワシントンとの太いパイプが物を言ってくる気がします。各社とも元国家元首クラスの人物をアドバイザーなどに加えており、政府との蜜月関係は広く知られるところです。今後の展開に、更に注目したいと思います。
尚、こうした話は往々にして法的問題であり、M&AやLBOでは、法的問題に絡むケースが非常に多くあります。だからこそ、アメリカのPE業界や投資銀行業界には、弁護士出身者が非常に多いのかもしれません。
投資銀行のM&Aも、7割近くが元弁護士な気がします。学士でもトップスクールを出ており、弁護士の経験(資格だけではなく)もあり、更にはMBAも持っていて数字にも強いという人がうじゃうじゃいるウォールストリート、何とも恐ろしいところです。(ちなみにVC業界になると、今度はテックやバイオのPh.D.を持つ人が沢山いて、ディールのソーシングの際に力を発揮しているそうです。)
WSJの記事によると、米DOJ(司法省)が、最近のクラブディールの組成におけるLBOファンド間の行動に問題がある可能性を調査している模様で、調査の対象としてKKRやSilver Lakeなどの大手の名前が挙がっているようです。
現時点ではDOJはこれらのファンドから非公式に関連情報の提供を求めている段階だそうですが、その程度でもこれだけ大きく取り上げられることに、最近のLBOファンドの躍進ぶりと、それに対して色々な疑義を差し挟みたい人々の存在を裏付けている気がします。複数のファンドが資金やノウハウを出し合って買収を行う「クラブディール」は、LBOの大型化の進行にともなって、すっかり一般的な形態になっています。このプロセスを通じて、潜在的な買収者の数は減ることになるため、その意味では競争環境を阻害するとの疑問を持たれるかもしれません。ただ「クラブ」が組成されなければ、そもそも案件自体が起こらないことを考えると、その指摘が本当に当たるかは微妙な気がします。
ただ、PE業界におけるいくつかの「紳士協定」、例えば一つのグループがディールにサインをした後には、他のグループは対抗ビッドを入れない、などについてまで、同じ競争阻害の観点から調べられていくかについては、今後注目していく必要があるかもしれません。
ちなみに最近ではメディアでも報じられるようになったこの紳士協定は、KKRが伝説となっているRJR Nabiscoのバイアウトを行った際に、熾烈なビッド競争がリターンの大幅低下をもたらしたことを受けて、業界に浸透したと言われています。そのような背景があると、独占禁止法の疑いがかけられることも理解できる気がします。
この一つの例として、最近KKR、Silver Lake、Bain Capitalが、Freescale Semiconductor社を$17.7bn(約2.1兆円)でバイアウトすると発表した際に、対抗ビッドを考えていたBlackstoneが最終的には手を引いたという話が、WSJの記事に載っていました。
(後にコメント欄でご指摘頂いたところによると、最終的にはBlackstoneグループが買収に至ったようです。そこで頂いた記事に興味深い詳細がありますが、確かにこの件は、当時「稀なビッド競争になった」といったアングルから報じられていた気がします。ご指摘ありがとうございました。)
ただ業界関係者は、これは非競争環境を生んだのではないと指摘しているようです。Carlyleの共同創業者であるDavid Rubenstein氏も、「バイアウト業界は今までも規律を持った世界であり、今後もそうあり続けることを期待する」といった趣旨のことを述べているそうです。(なんだか微妙な発言ですが。)
別のWSJの指摘によると、競合しているクラブ同士がビッドに関する情報を共有していたり、また負けたビッダーが買ったグループに加われることが事前に決まっていたりすると、問題になってくるかもしれないとのことです。またクラブディールが繰り返し行われることで、業界内で馴れ合いや譲り合いのような状況が生まれる可能性は、確かに否定し切れないかもしれません。
ただ私が見てきた限りでは、買収の合意に至るまでに、ファイナンシングのスキームも含めてPEファンド間で相当厳しいビッド競争が繰り広げられており、以上で指摘されるような問題は少ない気がします。巨額のファンドレイジングを行い、ディールソーシングのプレッシャーを常に受けているLBOファンドとしては、譲り合っている場合ではないと言うのが本心かもしれません。
投資銀行も、何とか「勝ち馬」にファイナンシングを提供したいと、必死に様々な提案をします。最終的にはレバレッジの大きさとそのコストの勝負になるわけですが、前者を最大化し後者を最小化するために、複雑なディールストラクチャーを考えたり様々なプロダクトを検討したりと、文字通り熾烈な提案競争が繰り広げられます。
まあ最終的には「お上」の判断次第なのかもしれませんが、そう考えると、プライベートエクイティ業界が持つワシントンとの太いパイプが物を言ってくる気がします。各社とも元国家元首クラスの人物をアドバイザーなどに加えており、政府との蜜月関係は広く知られるところです。今後の展開に、更に注目したいと思います。
尚、こうした話は往々にして法的問題であり、M&AやLBOでは、法的問題に絡むケースが非常に多くあります。だからこそ、アメリカのPE業界や投資銀行業界には、弁護士出身者が非常に多いのかもしれません。
投資銀行のM&Aも、7割近くが元弁護士な気がします。学士でもトップスクールを出ており、弁護士の経験(資格だけではなく)もあり、更にはMBAも持っていて数字にも強いという人がうじゃうじゃいるウォールストリート、何とも恐ろしいところです。(ちなみにVC業界になると、今度はテックやバイオのPh.D.を持つ人が沢山いて、ディールのソーシングの際に力を発揮しているそうです。)
by harry_g
| 2006-10-11 09:21
| LBO・プライベートエクイティ


