2006年 09月 22日
ヘッジファンドの巨額損失(続) |
前回の話の続きですが、先日のFTの記事によると、ヘッジファンドの関係者の間、特にウォールストリート(証券会社)の現場では、Amaranthが巨額損失を発生させたことに大きな驚きはなかったようです。その理由としてその記事が挙げていたのは、同社のリスクマネジメントの手法が、同社が取っていたポジションの大きさに鑑みると不十分だと考えられていたからだそうです。
大手のプライム・ブローカーも、Amaranthの取っていたリスクの大きさを心配して取引を控えていた、とその記事は書いています。ちなみにプライム・ブローカレッジとは、証券会社がヘッジファンドに対して、トレーディングや貸し株機能を提供するサービスのことです。
ヘッジファンドの急拡大と相まって、大手の証券会社は、ヘッジファンドが生み出す取引フローに自らのインフラを利用することで大きく儲けることが出来るプライム・ブローカレッジに非常に積極的です。Amaranthは実際にリスキーなポジションを実際に取っていたわけで、その相手方と思われるプライム・ブローカーがどのように「取引を控え」ていたのかは分かりませんが、同社のプライム・ブローカーだったとされるMerrill LynchとJP Morganは、FTなどの取材に対してコメントを控えているそうです。
リスクの取りすぎがウォールストリートでの噂になっていたとしても、Amaranthは業界大手のヘッジファンドとして、担当者レベルでは高い尊敬を集めていたことは間違いありません。ただそれは、破綻によってグローバル金融危機を引き起こしそうになったLTCMがその最たる例であり、個人の能力を過信して必要以上の能力、例えば何十倍というレバレッジを与えることは、やはり問題が大きい気がします。
ちなみにLTCMのトップで元Salomonの伝説のトレーダーであるメリウェザー氏は、現在自らのイニシャルを冠したファンドを運営しており、またノーベル経済学賞を取ったパートナーのショールズ博士は最近自らのファンド立ち上げに失敗した、とどこかで報道されていたと思います。
今回のAmaranthの巨額損失とファンドの解体を受けて、ヘッジファンド業界を「Too fast, too vast」と揶揄する向きもあるようですが、私の理解している限りでは、大半のファンドはリスクマネジメントに対して異常なまでの気を使っています。ヘッジファンドの存在意義がマーケットの上がり下がりに関わらず長期安定的に絶対リターンを生むことである事を考えると、これは極当たり前のことのように思えます。
それでもマーケットは人間の欲望や恐怖が渦巻く場所であり、今回のような巨額損失の発生は、ある意味避けられないのかもしれません。それに対するマクロ的視点からの対策としては、やはり市場参加者やSECなどが多方面から目を光らせることなのかもしれません。
ともかくヘッジファンドの巨額損失はメディアが大好きなネタであり、アメリカでYahoo!に次ぐポータルであるMSNにも、「ウォールストリートの最大の敗者たち(Wall Street’s Biggest Losers)」と言う記事が今朝のトップページに載っていました。その記事に名前が挙がっていたのは以下の人たちで、日本人も含まれています。
Brian Hunter, Amaranth Advisors
今回のAmaranthの巨額損失の責任者と呼ばれる人物で、現在32歳。4月の時点では$2bnも勝っていたのだが、5月に$1bnの損失を出し、先週$5bnに損失を膨らませて同大手ファンドを解体に導いた。
・・・ちなみに同氏は、先日も書いた通り、昨年に100億円近いボーナスをもらったと言われているので、同情の声は少ないようです。CitadelとJP Morganが引き続き同氏を雇用し続けるかは微妙ですが、若干32歳にしてここまでの実績を上げている以上、今後も職には困らないのではと想像されます。
Nick Leeson, Barings PLC
当時「女王の銀行」と呼ばれたベアリングズを破綻に追い込んだトレーダーは、当時28歳で、損失額は$1bnと言われる。彼が働いていたのが市場の健全性で知られるシンガポールであり、彼がそこから逃走を試みたこと、また投資先が日経平均先物であったと言われることから、アジア・日本でも大きな注目を集めた。
・・・当時はトレーダーが決済などのバックオフィス業務も兼任していたと言われ、いわば誰も彼のポジションをチェックしていなかったと言われています。そのような制度的問題は、今では相当解決したように思われます。
Yasuo Hamanaka、住友商事
「Mr. 5%」の異名を取り、世界の銅取引の5%を一人で握っていたと言われる、住友商事のコモディティ・トレーダー。1997年に$2.6bnの損失を会社に負わせ、後に7年間の投獄生活を送る。銅先物市場は、浜中氏が人為的に価格を吊り上げていたことが明るみに出た後に急落したと言われる。
・・・この事件とは直接関係ないですが、日本人が関わった巨額の損失事件として、大和銀行の話が思い出されます。1995年に発覚し、同銀行を米国から追放させるに至った巨額損失事件の責任者として逮捕、投獄された井口氏が書いた本「告白」は、必読の名著です。以下はその書籍紹介の抜粋です。
(「BOOK」データベースより)
1995年9月に発覚した大和銀行巨額損失事件。大和銀行は米国から追放され、事件に対する日米当局の対応の違いは、日米問題にまで発展した。本書は、事件の核心の人物である著者が、逮捕後、留置所で、全ての事実をつづったものである。当事者だけが知る秘密の暴露はもとより、この手記は、70年代、80年代に対米進出した日本企業の失敗の本質を語ってあまりある。
・・・話がそれましたが、このMSNの記事では、以上の他にも、日本円とアメリカドルの取引に失敗し、Allied Irish Bankの子会社に数百億円の損失を発生させた上書類を偽造したとされる人物の話や、最近ジェイコム株の誤発注で、みずほ証券に300億円超の損失をもたらしたトレーダーなどの話も取りざたされていました。
こういう記事を読んでいると、ウォールストリートはつくづく「歴史は繰り返す」世界だなと感じます。
大手のプライム・ブローカーも、Amaranthの取っていたリスクの大きさを心配して取引を控えていた、とその記事は書いています。ちなみにプライム・ブローカレッジとは、証券会社がヘッジファンドに対して、トレーディングや貸し株機能を提供するサービスのことです。ヘッジファンドの急拡大と相まって、大手の証券会社は、ヘッジファンドが生み出す取引フローに自らのインフラを利用することで大きく儲けることが出来るプライム・ブローカレッジに非常に積極的です。Amaranthは実際にリスキーなポジションを実際に取っていたわけで、その相手方と思われるプライム・ブローカーがどのように「取引を控え」ていたのかは分かりませんが、同社のプライム・ブローカーだったとされるMerrill LynchとJP Morganは、FTなどの取材に対してコメントを控えているそうです。
リスクの取りすぎがウォールストリートでの噂になっていたとしても、Amaranthは業界大手のヘッジファンドとして、担当者レベルでは高い尊敬を集めていたことは間違いありません。ただそれは、破綻によってグローバル金融危機を引き起こしそうになったLTCMがその最たる例であり、個人の能力を過信して必要以上の能力、例えば何十倍というレバレッジを与えることは、やはり問題が大きい気がします。
ちなみにLTCMのトップで元Salomonの伝説のトレーダーであるメリウェザー氏は、現在自らのイニシャルを冠したファンドを運営しており、またノーベル経済学賞を取ったパートナーのショールズ博士は最近自らのファンド立ち上げに失敗した、とどこかで報道されていたと思います。
今回のAmaranthの巨額損失とファンドの解体を受けて、ヘッジファンド業界を「Too fast, too vast」と揶揄する向きもあるようですが、私の理解している限りでは、大半のファンドはリスクマネジメントに対して異常なまでの気を使っています。ヘッジファンドの存在意義がマーケットの上がり下がりに関わらず長期安定的に絶対リターンを生むことである事を考えると、これは極当たり前のことのように思えます。
それでもマーケットは人間の欲望や恐怖が渦巻く場所であり、今回のような巨額損失の発生は、ある意味避けられないのかもしれません。それに対するマクロ的視点からの対策としては、やはり市場参加者やSECなどが多方面から目を光らせることなのかもしれません。
ともかくヘッジファンドの巨額損失はメディアが大好きなネタであり、アメリカでYahoo!に次ぐポータルであるMSNにも、「ウォールストリートの最大の敗者たち(Wall Street’s Biggest Losers)」と言う記事が今朝のトップページに載っていました。その記事に名前が挙がっていたのは以下の人たちで、日本人も含まれています。
Brian Hunter, Amaranth Advisors
今回のAmaranthの巨額損失の責任者と呼ばれる人物で、現在32歳。4月の時点では$2bnも勝っていたのだが、5月に$1bnの損失を出し、先週$5bnに損失を膨らませて同大手ファンドを解体に導いた。
・・・ちなみに同氏は、先日も書いた通り、昨年に100億円近いボーナスをもらったと言われているので、同情の声は少ないようです。CitadelとJP Morganが引き続き同氏を雇用し続けるかは微妙ですが、若干32歳にしてここまでの実績を上げている以上、今後も職には困らないのではと想像されます。
Nick Leeson, Barings PLC当時「女王の銀行」と呼ばれたベアリングズを破綻に追い込んだトレーダーは、当時28歳で、損失額は$1bnと言われる。彼が働いていたのが市場の健全性で知られるシンガポールであり、彼がそこから逃走を試みたこと、また投資先が日経平均先物であったと言われることから、アジア・日本でも大きな注目を集めた。
・・・当時はトレーダーが決済などのバックオフィス業務も兼任していたと言われ、いわば誰も彼のポジションをチェックしていなかったと言われています。そのような制度的問題は、今では相当解決したように思われます。
Yasuo Hamanaka、住友商事「Mr. 5%」の異名を取り、世界の銅取引の5%を一人で握っていたと言われる、住友商事のコモディティ・トレーダー。1997年に$2.6bnの損失を会社に負わせ、後に7年間の投獄生活を送る。銅先物市場は、浜中氏が人為的に価格を吊り上げていたことが明るみに出た後に急落したと言われる。
・・・この事件とは直接関係ないですが、日本人が関わった巨額の損失事件として、大和銀行の話が思い出されます。1995年に発覚し、同銀行を米国から追放させるに至った巨額損失事件の責任者として逮捕、投獄された井口氏が書いた本「告白」は、必読の名著です。以下はその書籍紹介の抜粋です。
(「BOOK」データベースより)
1995年9月に発覚した大和銀行巨額損失事件。大和銀行は米国から追放され、事件に対する日米当局の対応の違いは、日米問題にまで発展した。本書は、事件の核心の人物である著者が、逮捕後、留置所で、全ての事実をつづったものである。当事者だけが知る秘密の暴露はもとより、この手記は、70年代、80年代に対米進出した日本企業の失敗の本質を語ってあまりある。
・・・話がそれましたが、このMSNの記事では、以上の他にも、日本円とアメリカドルの取引に失敗し、Allied Irish Bankの子会社に数百億円の損失を発生させた上書類を偽造したとされる人物の話や、最近ジェイコム株の誤発注で、みずほ証券に300億円超の損失をもたらしたトレーダーなどの話も取りざたされていました。
こういう記事を読んでいると、ウォールストリートはつくづく「歴史は繰り返す」世界だなと感じます。
by harry_g
| 2006-09-22 10:38
| ヘッジファンド・株式投資


