2006年 08月 15日
Toll Brothers |
久しぶりに不動産投資の話を一つ書いてみます。
米国にToll Brothers(NYSE: TOL)と言う会社があります。同社は米国の住宅会社の中でもハイクオリティの住宅(と言っても日本の大工さんから見たらプラモデルのように見えるでしょうが、)を手がける会社で、同社の建てた家は、デザインや機能性その他の面から一番バリューが長持ちしやすい、などと評判を得ているそうです。
そのToll Brothersですが、先週業績予想の下方修正を発表し、それが米国市場全体を冷やしていました。下方修正の理由は、同社が保有する土地購入オプションのうち、「今日の軟調な市場環境と住宅販売のペースに照らして無価値なもの」の価値をライトダウンするからだそうです。
東海岸のNYやPhiladelphiaなどの大都市周辺には、「Toll Brothers Community」と呼ばれる、同社が地域全体をデベロップしたエリアが多く存在します。そのようなエリアは大抵は高速道路や大都市などにアクセスがよく、それでいて森林に囲まれた未開地で、さらに地元自治体の財務体力が健全でスラムのような地域が近隣にないこと、などを条件にしているようです。
余談ですが、アメリカでは公立学校の学業レベルがランク付けされており、そのレベルによって住む町を選定するケースが多く見られます。そしてそのレベルの高さは、基本的には市の財政の健全性とリンクしているようで、更に言えば、健全財政の市は固定資産税が高いことが多いようです。そうなると、必然的に裕福な人が多く住む町の財政が健全であり、公立学校のレベルも高いという傾向があるのかもしれません。
ともかく、そのようなエリアの土地を購入するオプションを取得して上手に一括開発する手法により、森ビルが六本木ヒルズで実現したような「コミュニティ全体の価値創造」が可能となることに目をつけ、それを上手に実践して来たことが、同社を今の地位に押し上げた要因の一つと言えるかもしれません。
そんな同社にも、ここ数年心配されていた住宅販売のスローダウンが現実のものになるという厳しい事実が突きつけられているようです。
報道によると、Toll Brothersの会長兼CEOのRobert Toll氏も、「創業以来40年経つが、今日のように低金利が続き、企業業績も堅調で、失業率も低止まりしているなど、マクロ環境が良好な中での住宅販売のスローダウンは始めて経験する」と述べているそうです。
アメリカでは通常夏の間が住宅販売が好調で、特に学期が切り替わる8月末前後は引越しの人気時期でもあります。そんな時期に住宅販売が低調な理由としてToll氏は、「消費者は住宅価格の下落傾向を懸念しており、買い控えを行っている」からだと述べているそうです。
ただ同氏は、アメリカの現状を「住宅バブル」の崩壊過程とは到底思っていないようで、景気の堅調さと低金利の状況が継続する以上、現状の住宅のオーバーサプライの状況さえ解消されれば、またマーケットは勢いを取り戻すと思っているようです。
ただ以前にも書きましたが、住宅価格はどうしても給与水準に照らしたAffordability(購買力)によってキャップされると思われるため、需給関係よりもその地域の賃金水準などがより重要な気がします。特にTollの家は高額化しているものが多く、そのレベルが周辺住民の購買力を大幅に上回っているようだと、販売数の低迷も避けられないのかもしれません。
また金利水準も、過去と比べるとさほど高くないとは言え、自宅購入者や不動産投資家にとってのキャッシュフローの圧迫要因であることは確かです。
こういうマーケットでは、地道に割安物件を物色し、キャッシュフローがブレイクイーブン以上で購入する投資手法が最も適している気がします。その意味では投資のプロにとって有利であり、一般人に不利なマーケットと言えるかもしれません。
別の見方をすると、一般的に投資は、マーケットが軟調になった時こそ実際にはチャンスが大きく、誰でも儲かった時期に参入したプレーヤーが市場からはじき出されるのが常だと言われます。これから数年のアメリカの不動産市場は、まさにそういう時期にさしかかっているのかもしれません。
リンクにもありますが、プロのバリュー不動産投資家である知人のブログは大変興味深いので、またご紹介しておきます。
米国にToll Brothers(NYSE: TOL)と言う会社があります。同社は米国の住宅会社の中でもハイクオリティの住宅(と言っても日本の大工さんから見たらプラモデルのように見えるでしょうが、)を手がける会社で、同社の建てた家は、デザインや機能性その他の面から一番バリューが長持ちしやすい、などと評判を得ているそうです。
東海岸のNYやPhiladelphiaなどの大都市周辺には、「Toll Brothers Community」と呼ばれる、同社が地域全体をデベロップしたエリアが多く存在します。そのようなエリアは大抵は高速道路や大都市などにアクセスがよく、それでいて森林に囲まれた未開地で、さらに地元自治体の財務体力が健全でスラムのような地域が近隣にないこと、などを条件にしているようです。
余談ですが、アメリカでは公立学校の学業レベルがランク付けされており、そのレベルによって住む町を選定するケースが多く見られます。そしてそのレベルの高さは、基本的には市の財政の健全性とリンクしているようで、更に言えば、健全財政の市は固定資産税が高いことが多いようです。そうなると、必然的に裕福な人が多く住む町の財政が健全であり、公立学校のレベルも高いという傾向があるのかもしれません。
ともかく、そのようなエリアの土地を購入するオプションを取得して上手に一括開発する手法により、森ビルが六本木ヒルズで実現したような「コミュニティ全体の価値創造」が可能となることに目をつけ、それを上手に実践して来たことが、同社を今の地位に押し上げた要因の一つと言えるかもしれません。
そんな同社にも、ここ数年心配されていた住宅販売のスローダウンが現実のものになるという厳しい事実が突きつけられているようです。
報道によると、Toll Brothersの会長兼CEOのRobert Toll氏も、「創業以来40年経つが、今日のように低金利が続き、企業業績も堅調で、失業率も低止まりしているなど、マクロ環境が良好な中での住宅販売のスローダウンは始めて経験する」と述べているそうです。
アメリカでは通常夏の間が住宅販売が好調で、特に学期が切り替わる8月末前後は引越しの人気時期でもあります。そんな時期に住宅販売が低調な理由としてToll氏は、「消費者は住宅価格の下落傾向を懸念しており、買い控えを行っている」からだと述べているそうです。
ただ同氏は、アメリカの現状を「住宅バブル」の崩壊過程とは到底思っていないようで、景気の堅調さと低金利の状況が継続する以上、現状の住宅のオーバーサプライの状況さえ解消されれば、またマーケットは勢いを取り戻すと思っているようです。
ただ以前にも書きましたが、住宅価格はどうしても給与水準に照らしたAffordability(購買力)によってキャップされると思われるため、需給関係よりもその地域の賃金水準などがより重要な気がします。特にTollの家は高額化しているものが多く、そのレベルが周辺住民の購買力を大幅に上回っているようだと、販売数の低迷も避けられないのかもしれません。
また金利水準も、過去と比べるとさほど高くないとは言え、自宅購入者や不動産投資家にとってのキャッシュフローの圧迫要因であることは確かです。
こういうマーケットでは、地道に割安物件を物色し、キャッシュフローがブレイクイーブン以上で購入する投資手法が最も適している気がします。その意味では投資のプロにとって有利であり、一般人に不利なマーケットと言えるかもしれません。
別の見方をすると、一般的に投資は、マーケットが軟調になった時こそ実際にはチャンスが大きく、誰でも儲かった時期に参入したプレーヤーが市場からはじき出されるのが常だと言われます。これから数年のアメリカの不動産市場は、まさにそういう時期にさしかかっているのかもしれません。
リンクにもありますが、プロのバリュー不動産投資家である知人のブログは大変興味深いので、またご紹介しておきます。
by harry_g
| 2006-08-15 10:34
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