2006年 08月 09日
オルタナティブ投資の成熟化 |
日本でもそうでしょうが、アメリカでも8月は夏休みシーズンで、最近あまり目を引くようなニュースを見かけません。マーケットも今日のFOMCの利上げ発表を受けても比較的静かですし、投資銀行で働いている友人も、多くがバケーションに出ているようです。
金融メディアは相変わらず、先日発表されたHCAのような大きなLBO案件や、ヘッジファンドがM&Aに反対票を投じたことなどを報道していますが、アクティビストの動きも、一時期はIcahn氏がTime Warnerにからんだり、新聞社のKnight Ridderが身売りに追いやられたりして大きく取り上げられましたが、最近ではあまり大きな動きはないように思います。
このようなトレンドの背景には、もちろん夏休みということもあるでしょうが、アメリカではLBOファンドやヘッジファンドはすっかり普通の存在になったという現実があるのかもしれません。
80年代と異なり巨額の資金がこういったオルタナティブファンドに集まるようになった今日では、名のある投資銀行もほぼ全社が、プライベートエクイティ、不動産、ヘッジファンドといったオルタナティブ投資に進出しています。
例えばGoldmanがPE投資やヘッジファンドでアクティブなのは前から書いている通りですが、それ以外にもMorgan Stanleyなどは不動産のエリアで以前から大変アクティブですし、MLやJP MorganもPE投資では相当の大手です。もっと最近では、Lehman Brothersが新たに数千億のPE投資資金を調達したり、Citigroupも同様の動きをしています。Lehmanは不動産エリアでも、マンハッタンの有名なMetLifeビルを買収するなど積極的です。
これらの動きの裏にあるプライベートエクイティ投資への資金の流入額には、確かに目を見張るものがあります。先日のNew York Timesによると、1990年には55個のファンドが$2.2bn(約2,500億円)を調達していたに過ぎなかったのが、2006年の前半には50のファンドが合計で$77bn(約8.9兆円)、2005年には105のファンドが実に$106bn(約12兆円)もの資金を調達したそうです。
案件の内容も、以前のような「乗取り」や「インサイダー取引」といったものではなく、一流の大企業がLBOの買収やヘッジファンドからの要求に応じるなど、業界の成熟さを感じさせます。もちろんこれは歓迎すべきことであり、色々な意味で市場の効率化が進んだ結果と言えるかもしれませんし、SECなどが色々な規制の設定に励んだり、業界団体などがコーポレートガバナンスなどの正しい考え方を実業界に広める努力をしたからなのかもしれません。
オルタナティブ投資間での垣根が低くなっている現象も二年ほど前から取り上げられていますが、最近では大手LBOファンドも、BlackstoneやTPG、最も最近ではCarlyleがヘッジファンドへの進出を正式に発表するなど、業界融合(?)の動きは加速しているように思います。ちなみにヘッジファンド業界の規模は、同NYTの記事によると、8,800社が$1.2 trillion(約138兆円)を運用しており、過去16年で30倍にもなっているそうです。
業界には、PEファンドやヘッジファンドがすっかり「Institutionalize(大企業化)」したことを嘆く人もいますが、それは業界が発展し、ある意味成熟期に達した証拠と言える気がします。と同時に、以前まであった「特権階級」のような魅力は減って行くのかもしれません。
それは投資銀行業界についても言えることで、昔はインベストメントバンカーと言えば、お洒落なスーツに身をくるみ、クライアントのプライベートジェットやファーストクラスで出張に出かけていたのが、今ではノータイの若者がエコノミークラスで米国内を飛び回るような世界になりつつあります。
プライベートエクイティの話に戻りますが、去年と今年で20兆円以上の資金が調達されたとなれば、当然その資金は、時価総額ベースで見ればアメリカに次ぐ市場である日本にも向いてくるのではと思います。
日本はアメリカとは大きく異なるコーポレートカルチャーを持ち、株主経営の考え方や資本政策などもあまり浸透しておらず、また戦略的M&Aも最近ようやく増えてきた程度です。そんな日本でも、欧米のPEファンドが今までに蓄積されたノウハウを生かしながらどのように案件を発掘していくのか、大変注目しています。
景気は回復してきたといわれていますが、今でも大企業で部門売却などのリストラを進めたい企業は多いのではと思います。そのような部門をPEファンドが積極的に購入し、うまくターンアラウンドさせられるようになったりしたら、本格的なLBOの動きも広がっていくかもしれません。そんな最近のトレンドなど、またコメントなど頂ければ幸いです。
金融メディアは相変わらず、先日発表されたHCAのような大きなLBO案件や、ヘッジファンドがM&Aに反対票を投じたことなどを報道していますが、アクティビストの動きも、一時期はIcahn氏がTime Warnerにからんだり、新聞社のKnight Ridderが身売りに追いやられたりして大きく取り上げられましたが、最近ではあまり大きな動きはないように思います。
このようなトレンドの背景には、もちろん夏休みということもあるでしょうが、アメリカではLBOファンドやヘッジファンドはすっかり普通の存在になったという現実があるのかもしれません。
80年代と異なり巨額の資金がこういったオルタナティブファンドに集まるようになった今日では、名のある投資銀行もほぼ全社が、プライベートエクイティ、不動産、ヘッジファンドといったオルタナティブ投資に進出しています。
例えばGoldmanがPE投資やヘッジファンドでアクティブなのは前から書いている通りですが、それ以外にもMorgan Stanleyなどは不動産のエリアで以前から大変アクティブですし、MLやJP MorganもPE投資では相当の大手です。もっと最近では、Lehman Brothersが新たに数千億のPE投資資金を調達したり、Citigroupも同様の動きをしています。Lehmanは不動産エリアでも、マンハッタンの有名なMetLifeビルを買収するなど積極的です。
これらの動きの裏にあるプライベートエクイティ投資への資金の流入額には、確かに目を見張るものがあります。先日のNew York Timesによると、1990年には55個のファンドが$2.2bn(約2,500億円)を調達していたに過ぎなかったのが、2006年の前半には50のファンドが合計で$77bn(約8.9兆円)、2005年には105のファンドが実に$106bn(約12兆円)もの資金を調達したそうです。
案件の内容も、以前のような「乗取り」や「インサイダー取引」といったものではなく、一流の大企業がLBOの買収やヘッジファンドからの要求に応じるなど、業界の成熟さを感じさせます。もちろんこれは歓迎すべきことであり、色々な意味で市場の効率化が進んだ結果と言えるかもしれませんし、SECなどが色々な規制の設定に励んだり、業界団体などがコーポレートガバナンスなどの正しい考え方を実業界に広める努力をしたからなのかもしれません。
オルタナティブ投資間での垣根が低くなっている現象も二年ほど前から取り上げられていますが、最近では大手LBOファンドも、BlackstoneやTPG、最も最近ではCarlyleがヘッジファンドへの進出を正式に発表するなど、業界融合(?)の動きは加速しているように思います。ちなみにヘッジファンド業界の規模は、同NYTの記事によると、8,800社が$1.2 trillion(約138兆円)を運用しており、過去16年で30倍にもなっているそうです。
業界には、PEファンドやヘッジファンドがすっかり「Institutionalize(大企業化)」したことを嘆く人もいますが、それは業界が発展し、ある意味成熟期に達した証拠と言える気がします。と同時に、以前まであった「特権階級」のような魅力は減って行くのかもしれません。
それは投資銀行業界についても言えることで、昔はインベストメントバンカーと言えば、お洒落なスーツに身をくるみ、クライアントのプライベートジェットやファーストクラスで出張に出かけていたのが、今ではノータイの若者がエコノミークラスで米国内を飛び回るような世界になりつつあります。
プライベートエクイティの話に戻りますが、去年と今年で20兆円以上の資金が調達されたとなれば、当然その資金は、時価総額ベースで見ればアメリカに次ぐ市場である日本にも向いてくるのではと思います。
日本はアメリカとは大きく異なるコーポレートカルチャーを持ち、株主経営の考え方や資本政策などもあまり浸透しておらず、また戦略的M&Aも最近ようやく増えてきた程度です。そんな日本でも、欧米のPEファンドが今までに蓄積されたノウハウを生かしながらどのように案件を発掘していくのか、大変注目しています。
景気は回復してきたといわれていますが、今でも大企業で部門売却などのリストラを進めたい企業は多いのではと思います。そのような部門をPEファンドが積極的に購入し、うまくターンアラウンドさせられるようになったりしたら、本格的なLBOの動きも広がっていくかもしれません。そんな最近のトレンドなど、またコメントなど頂ければ幸いです。
by harry_g
| 2006-08-09 10:27
| LBO・プライベートエクイティ