2006年 05月 18日
ヘッジファンドの運用スタイル |
先日のブログの中で、ヘッジファンドを世の中に広く知らしめたのが「グローバルマクロ」と言う投資手法であったということを書きました。この手法は、マクロ経済の中で為替や金利などに何かおかしな状況が発生している際に、それを修正するような「攻撃」をしかける、ディレクショナル(一方向)のリスクを取る投資手法です。
この手法は、George Sorosが1992年に欧州の通貨統合を控えて管理相場下に置かれていたイギリスポンドに対して多額の売り浴びせを行い、それに対抗して為替介入を行ったイングランド銀行(写真)を屈服させて変動相場制に追いやった事件や、1997年にドルとの連動為替制度を採用することで実力以上に過大評価されていたアジア通貨を売り浴びせ、アジア通貨の暴落を伴う通貨危機を招いた例などで知られています。
ただ実際には既に衰退したこのスタイルはヘッジファンドの投資スタイルの一つでしかなく、現在ヘッジファンドの主な運用スタイルとしては、大きく分けて4つあると言われています。そのことについて、「オルタナティブ投資入門」(山内英貴、東洋経済新報社)などを参考にまとめてみたいと思います。
① ディレクショナル
② アービトラージ(レラティブバリュー)
③ イベントドリブン
④ 株式ロングショート
「ディレクショナル」は、グローバルマクロに代表されるような市場で価格が一方向に動くことに賭ける投資手法です。グローバルマクロは債券や為替のみならず、流動性の低いOTCデリバティブズなど何にでも投資したそうですが、そのスタイルが衰退した最近では、「Managed Futures」と呼ばれるスタイルが主流となっているようです。
この戦略は投資対象を流動性の高い上場先物に限定するため、他の投資スタイルが陥りがちな「流動性の罠」に陥る可能性が低く、またマーケットが極端に下落傾向にあるときでも問題なく動けることなどが魅力とされているそうです。
具体的な投資機会の分析手法は経済のファンダメンタルズや市場のテクニカル要因を重視したいわゆる「トップダウンアプローチ」で、これは後で述べる株式ロングショートが用いるような、個別の企業を分析して投資判断を行う「ボトムアップアプローチ」とは対極のスタイルと言えるかもしれません。このスタイルは証券会社の債券トレーディング部門でも用いられており、実際トレーダー出身者がこうしたファンドでは多く活躍しているようです。
「レラティブバリュー」は、アービトラージ(鞘抜き)の代表的な投資手法で、市場間や金融商品間(例えば株式と転換社債)の間に存在する価格のズレが最終的には修正されることを利用して、ある意味リスクフリーで利益を得ようとするスタイルの総称です。
対象とする金融商品は債券(金利)とデリバティブズ(オプションなど)が最も多いようで、これらのファンドではデリバティブズのトレーダーやプログラムトレーディングの経験者が活躍しているようですが、それと並んで大きいのが、転換社債(CB)アービトラージと呼ばれるスタイルです。
転換社債は言わずとしれた債券と株式オプションの二つの価値を併せ持つ証券ですが、その転換社債とその裏づけとなる株式との間に理論的な価値の乖離があることを発見し、そのアービトラージを行うファンドを20歳くらいで立ち上げたKen Griffinが、そのファンドを10年後に1兆円超を運用する大手「Citadel Investment Group」に育て上げた話は有名です。(彼は今でも36歳かそこらだと思います。)
一時期ヘッジファンドと言えばCBアービトラージ、と言うほどに栄えたこのスタイルですが、th4844さんの「CBアービトラージは死んだか」シリーズ(①、②、③)が最近の動向について非常に詳しく触れているのでご参考まで。
「イベントドリブン」は、企業の合併や破綻などの「イベント」を利用してリターンを上げようとする運用スタイルで、中でもM&Aの際の株価の収斂を利用してリターンを上げる「リスクアービトラージ」が有名です。
このスタイルは、M&Aが発表された際に、ストックディール(株式交換)であれば買収対象企業の株をロング、買収社の株をショートしてリターンを確定し、キャッシュディール(現金買収)であればM&A発表前に買収対象企業の株式をロングして買収時に払われるコントロールプレミアム(通常20-30%)をリターンとして得る、といったものです。
この戦略は純粋なアービトラージと異なり、M&Aが成就しないなどのリスクを取ってアービトラージを行うため、「リスク」アービトラージと呼ばれています。M&Aを利用した投資戦略と言うことで投資銀行(IBD)業務との関連が高そうですが、価格の収斂が急速に起きることから、投資スタイルはどちらかと言うとトレーディング型であることが多いようです。
リスクアービトラージ戦略で有名なファンドには、Eddie Lampertの「ESL」 、Daniel Ochの「Och-Ziff」、Thomas Steyerの「Farallon Capital」などがありますが、これらのマネージャーは皆、アメリカの元財務長官であるRobert Rubin が率いたゴールドマンのリスクアービトラージグループの出身者です。このグループは当時ゴールドマンの利益の過半数を稼ぎ出していたとも言われ、今でもリスクアーブの世界で絶大な存在感を持っています。
リスクアービトラージ以外では、「ディストレスト」投資がかなり大きく、破綻企業の債券を取得してデットエクイティスワップにより株式を取得する方法や、単純に大幅に割安となった債券や株式のトレーディングを行うといった方法があるようです。この手法も、市場価格と適正価格のアービトラージ、と言えるかもしれません。
最後にいつも書いている「株式ロングショート」は、そもそもヘッジファンドと言う言葉を生み出すに至った投資スタイルで、株式の買い持ち(ロング)と売り持ち(ショート)を組み合わせることで、市場の上げ下げに関係なく、銘柄選択(ストックピッキング)の精度だけでリターンを上げようとする投資手法です。
徹底した企業分析に基づく銘柄選択を行うこの手法は、ある意味アクティブ運用の投資信託にも似た感じがありますが、ロングポジションしか持てない投信や年金などが避けることの出来ない市場下落のリスクを「ヘッジ」するために1949年にAlfred Jonesという人が生み出したスタイルが、このロングショートだと言われています。
現在ではヘッジファンド業界の過半数がこの「ロングショート」戦略を採用しているわけですが、その歴史で特に有名なのが、Julian Robertsonの「Tiger Management」です。ダニエル・A・ストラックマン著の「魔術師は市場でよみがえる-タイガー・マネジメントの興亡」(東洋経済新報社)によると、当時世界最大のヘッジファンドだった同社を運営していたJulianは、Warren Buffettにも似た徹底した企業調査に基づいた長期ファンダメンタルズ投資によって比類の実績を上げたことで有名で、自動車株に投資する際に、実際にそのメーカーの車を買って来て色々調べたというエピソードもあります。
そんな同氏はインターネットバブルの最中にテック株をショートしていたため、バブルの頂点で投資家からのプレッシャーに耐えかねて、JulianはTiger Managementを解散してしまいました。(JulianがTigerを解散した時に投資家に送った手紙がありますので、以下に原文を添付しておきます。)しかしその数週間後にNASDAQが大暴落してJulianの正しさが証明されたため、彼は現在に至るまで、業界で広く尊敬を集めています。
現在ロングショートの業界には、Tiger出身のマネージャーが運営しているファンドが多く存在しますが、彼らは「Tiger Cubs」と呼ばれ、今でも業界をリードしています。上記の本によると、代表的な企業としては、Lee Ainslieの「Maverick Capital」、John Griffinの「Blue Ridge Capital」、Steve Mandelの「Lone Pine」、Andreas Halversonの「Viking」などがあるそうです。
尚、ヘッジファンドは投資スタイルによって運用額も様々で、レラティブバリュー戦略やイベントドリブン戦略のファンドは、アービトラージと言う性格上サイズが大きくなる傾向があるようです。また、最近では大手のファンドが複数の投資スタイルを採用することも少なくなく、こうしたファンドは「マルチストラテジー」と呼ばれています。よって業界の人に言わせると、ヘッジファンドのランキングは運用資産額ではなく投資スタイル毎のリターンで決まるべきだ、と言うことになるそうです。
長くなりましたが、こうして見てみるとヘッジファンドの運用スタイルには、リサーチ重視のものからトレーディングスタイルのものまで、実に様々なものがあることが分かります。またリスクの取り方も実に様々であり、そんなリスクをコントロールしながら高いリターンを上げていることが、同業界の成長を支えていると言える気がします。最近のヘッジファンドの躍進自体がバブルなのかどうかは分かりませんが、50年前から存在している投資スタイルであることを考えると、後は経営の良し悪しにかかっているのかもしれません。
(写真はhttp://www.totaltravel.co.uk/travel/London/london-central/city-london/photos、www.gs.com、www.streetstories.comより)
以下は、Julian RobertsonがTiger Managementを解散して資金を全額投資家に返還することを決めた際に投資家に対して送った手紙です。日付は2000年3月30日です。
Tiger Management released the following letter on March 30 to its limited partners, announcing the closure of its funds.
In May of 1980, Thorpe McKenzie and I started the Tiger funds with total capital of $8.8 million. Eighteen years later, the $8.8 million had grown to $21 billion, an increase of over 259,000 percent . Our compound rate of return to partners during this period after all fees was 31.7 percent . No one had a better record.
Since August of 1998, the Tiger funds have stumbled badly and Tiger investors have voted strongly with their pocketbooks, understandably so. During that period, Tiger investors withdrew some $7.7 billion of funds. The result of the demise of value investing and investor withdrawals has been financial erosion, stressful to us all. And there is no real indication that a quick end is in sight.
And what do I mean by, "there is no quick end in sight?" What is "end" the end of? "End" is the end of the bear market in value stocks. It is the recognition that equities with cash-on-cash returns of 15 to 25 percent , regardless of their short-term market performance, are great investments. "End" in this case means a beginning by investors overall to put aside momentum and potential short-term gain in highly speculative stocks to take the more assured, yet still historically high returns available in out-of-favor equities.
There is a lot of talk now about the New Economy (meaning Internet, technology and telecom). Certainly the Internet is changing the world and the advances from biotechnology will be equally amazing. Technology and telecommunications bring us opportunities none of us have dreamed of.
"Avoid the Old Economy and invest in the New and forget about price," proclaim the pundits. And in truth, that has been the way to invest over the last eighteen months.
As you have heard me say on many occasions, the key to Tiger's success over the years has been a steady commitment to buying the best stocks and shorting the worst. In a rational environment, this strategy functions well. But in an irrational market, where earnings and price considerations take a back seat to mouse clicks and momentum, such logic, as we have learned, does not count for much.
The current technology, Internet and telecom craze, fueled by the performance desires of investors, money managers and even financial buyers, is unwittingly creating a Ponzi pyramid destined for collapse. The tragedy is, however, that the only way to generate short-term performance in the current environment is to buy these stocks. That makes the process self-perpetuating until the pyramid eventually collapses under its own excess.
I have great faith though that, "this, too, will pass." We have seen manic periods like this before and I remain confident that despite the current disfavor in which it is held, value investing remains the best course. There is just too much reward in certain mundane, Old Economy stocks to ignore. This is not the first time that value stocks have taken a licking. Many of the great value investors produced terrible returns from 1970 to 1975 and from 1980 to 1981 but then they came back in spades.
The difficulty is predicting when this change will occur and in this regard I have no advantage. What I do know is that there is no point in subjecting our investors to risk in a market which I frankly do not understand. Consequently, after thorough consideration, I have decided to return all capital to our investors, effectively bringing down the curtain on the Tiger funds. We have already largely liquefied the portfolio and plan to return assets as outlined in the attached plan.
No one wishes more than I that I had taken this course earlier. Regardless, it has been an enjoyable and rewarding 20 years. The triumphs have by no means been totally diminished by the recent setbacks. Since inception, an investment in Tiger has grown 85-fold net of fees; more than three time the average of the S&P 500 and five-and-a-half times that of the Morgan Stanley Capital International World Index. The best part by far has been the opportunity to work closely with a unique cadre of co-workers and investors.
For every minute of it, the good times and the bad, the victories and the defeats, I speak for myself and a multitude of Tiger’s past and present who thank you from the bottom of our hearts.
(http://money.cnn.com/2000/03/30/mutualfunds/q_funds_tiger/sidebar.htm より)
この手法は、George Sorosが1992年に欧州の通貨統合を控えて管理相場下に置かれていたイギリスポンドに対して多額の売り浴びせを行い、それに対抗して為替介入を行ったイングランド銀行(写真)を屈服させて変動相場制に追いやった事件や、1997年にドルとの連動為替制度を採用することで実力以上に過大評価されていたアジア通貨を売り浴びせ、アジア通貨の暴落を伴う通貨危機を招いた例などで知られています。
ただ実際には既に衰退したこのスタイルはヘッジファンドの投資スタイルの一つでしかなく、現在ヘッジファンドの主な運用スタイルとしては、大きく分けて4つあると言われています。そのことについて、「オルタナティブ投資入門」(山内英貴、東洋経済新報社)などを参考にまとめてみたいと思います。
① ディレクショナル
② アービトラージ(レラティブバリュー)
③ イベントドリブン
④ 株式ロングショート
「ディレクショナル」は、グローバルマクロに代表されるような市場で価格が一方向に動くことに賭ける投資手法です。グローバルマクロは債券や為替のみならず、流動性の低いOTCデリバティブズなど何にでも投資したそうですが、そのスタイルが衰退した最近では、「Managed Futures」と呼ばれるスタイルが主流となっているようです。
この戦略は投資対象を流動性の高い上場先物に限定するため、他の投資スタイルが陥りがちな「流動性の罠」に陥る可能性が低く、またマーケットが極端に下落傾向にあるときでも問題なく動けることなどが魅力とされているそうです。
具体的な投資機会の分析手法は経済のファンダメンタルズや市場のテクニカル要因を重視したいわゆる「トップダウンアプローチ」で、これは後で述べる株式ロングショートが用いるような、個別の企業を分析して投資判断を行う「ボトムアップアプローチ」とは対極のスタイルと言えるかもしれません。このスタイルは証券会社の債券トレーディング部門でも用いられており、実際トレーダー出身者がこうしたファンドでは多く活躍しているようです。
「レラティブバリュー」は、アービトラージ(鞘抜き)の代表的な投資手法で、市場間や金融商品間(例えば株式と転換社債)の間に存在する価格のズレが最終的には修正されることを利用して、ある意味リスクフリーで利益を得ようとするスタイルの総称です。
対象とする金融商品は債券(金利)とデリバティブズ(オプションなど)が最も多いようで、これらのファンドではデリバティブズのトレーダーやプログラムトレーディングの経験者が活躍しているようですが、それと並んで大きいのが、転換社債(CB)アービトラージと呼ばれるスタイルです。
転換社債は言わずとしれた債券と株式オプションの二つの価値を併せ持つ証券ですが、その転換社債とその裏づけとなる株式との間に理論的な価値の乖離があることを発見し、そのアービトラージを行うファンドを20歳くらいで立ち上げたKen Griffinが、そのファンドを10年後に1兆円超を運用する大手「Citadel Investment Group」に育て上げた話は有名です。(彼は今でも36歳かそこらだと思います。)
一時期ヘッジファンドと言えばCBアービトラージ、と言うほどに栄えたこのスタイルですが、th4844さんの「CBアービトラージは死んだか」シリーズ(①、②、③)が最近の動向について非常に詳しく触れているのでご参考まで。
「イベントドリブン」は、企業の合併や破綻などの「イベント」を利用してリターンを上げようとする運用スタイルで、中でもM&Aの際の株価の収斂を利用してリターンを上げる「リスクアービトラージ」が有名です。
このスタイルは、M&Aが発表された際に、ストックディール(株式交換)であれば買収対象企業の株をロング、買収社の株をショートしてリターンを確定し、キャッシュディール(現金買収)であればM&A発表前に買収対象企業の株式をロングして買収時に払われるコントロールプレミアム(通常20-30%)をリターンとして得る、といったものです。
この戦略は純粋なアービトラージと異なり、M&Aが成就しないなどのリスクを取ってアービトラージを行うため、「リスク」アービトラージと呼ばれています。M&Aを利用した投資戦略と言うことで投資銀行(IBD)業務との関連が高そうですが、価格の収斂が急速に起きることから、投資スタイルはどちらかと言うとトレーディング型であることが多いようです。
リスクアービトラージ戦略で有名なファンドには、Eddie Lampertの「ESL」 、Daniel Ochの「Och-Ziff」、Thomas Steyerの「Farallon Capital」などがありますが、これらのマネージャーは皆、アメリカの元財務長官であるRobert Rubin が率いたゴールドマンのリスクアービトラージグループの出身者です。このグループは当時ゴールドマンの利益の過半数を稼ぎ出していたとも言われ、今でもリスクアーブの世界で絶大な存在感を持っています。
リスクアービトラージ以外では、「ディストレスト」投資がかなり大きく、破綻企業の債券を取得してデットエクイティスワップにより株式を取得する方法や、単純に大幅に割安となった債券や株式のトレーディングを行うといった方法があるようです。この手法も、市場価格と適正価格のアービトラージ、と言えるかもしれません。
最後にいつも書いている「株式ロングショート」は、そもそもヘッジファンドと言う言葉を生み出すに至った投資スタイルで、株式の買い持ち(ロング)と売り持ち(ショート)を組み合わせることで、市場の上げ下げに関係なく、銘柄選択(ストックピッキング)の精度だけでリターンを上げようとする投資手法です。
徹底した企業分析に基づく銘柄選択を行うこの手法は、ある意味アクティブ運用の投資信託にも似た感じがありますが、ロングポジションしか持てない投信や年金などが避けることの出来ない市場下落のリスクを「ヘッジ」するために1949年にAlfred Jonesという人が生み出したスタイルが、このロングショートだと言われています。
現在ではヘッジファンド業界の過半数がこの「ロングショート」戦略を採用しているわけですが、その歴史で特に有名なのが、Julian Robertsonの「Tiger Management」です。ダニエル・A・ストラックマン著の「魔術師は市場でよみがえる-タイガー・マネジメントの興亡」(東洋経済新報社)によると、当時世界最大のヘッジファンドだった同社を運営していたJulianは、Warren Buffettにも似た徹底した企業調査に基づいた長期ファンダメンタルズ投資によって比類の実績を上げたことで有名で、自動車株に投資する際に、実際にそのメーカーの車を買って来て色々調べたというエピソードもあります。
そんな同氏はインターネットバブルの最中にテック株をショートしていたため、バブルの頂点で投資家からのプレッシャーに耐えかねて、JulianはTiger Managementを解散してしまいました。(JulianがTigerを解散した時に投資家に送った手紙がありますので、以下に原文を添付しておきます。)しかしその数週間後にNASDAQが大暴落してJulianの正しさが証明されたため、彼は現在に至るまで、業界で広く尊敬を集めています。
現在ロングショートの業界には、Tiger出身のマネージャーが運営しているファンドが多く存在しますが、彼らは「Tiger Cubs」と呼ばれ、今でも業界をリードしています。上記の本によると、代表的な企業としては、Lee Ainslieの「Maverick Capital」、John Griffinの「Blue Ridge Capital」、Steve Mandelの「Lone Pine」、Andreas Halversonの「Viking」などがあるそうです。
尚、ヘッジファンドは投資スタイルによって運用額も様々で、レラティブバリュー戦略やイベントドリブン戦略のファンドは、アービトラージと言う性格上サイズが大きくなる傾向があるようです。また、最近では大手のファンドが複数の投資スタイルを採用することも少なくなく、こうしたファンドは「マルチストラテジー」と呼ばれています。よって業界の人に言わせると、ヘッジファンドのランキングは運用資産額ではなく投資スタイル毎のリターンで決まるべきだ、と言うことになるそうです。
長くなりましたが、こうして見てみるとヘッジファンドの運用スタイルには、リサーチ重視のものからトレーディングスタイルのものまで、実に様々なものがあることが分かります。またリスクの取り方も実に様々であり、そんなリスクをコントロールしながら高いリターンを上げていることが、同業界の成長を支えていると言える気がします。最近のヘッジファンドの躍進自体がバブルなのかどうかは分かりませんが、50年前から存在している投資スタイルであることを考えると、後は経営の良し悪しにかかっているのかもしれません。
(写真はhttp://www.totaltravel.co.uk/travel/London/london-central/city-london/photos、www.gs.com、www.streetstories.comより)
以下は、Julian RobertsonがTiger Managementを解散して資金を全額投資家に返還することを決めた際に投資家に対して送った手紙です。日付は2000年3月30日です。
Tiger Management released the following letter on March 30 to its limited partners, announcing the closure of its funds.
In May of 1980, Thorpe McKenzie and I started the Tiger funds with total capital of $8.8 million. Eighteen years later, the $8.8 million had grown to $21 billion, an increase of over 259,000 percent . Our compound rate of return to partners during this period after all fees was 31.7 percent . No one had a better record.
Since August of 1998, the Tiger funds have stumbled badly and Tiger investors have voted strongly with their pocketbooks, understandably so. During that period, Tiger investors withdrew some $7.7 billion of funds. The result of the demise of value investing and investor withdrawals has been financial erosion, stressful to us all. And there is no real indication that a quick end is in sight.
And what do I mean by, "there is no quick end in sight?" What is "end" the end of? "End" is the end of the bear market in value stocks. It is the recognition that equities with cash-on-cash returns of 15 to 25 percent , regardless of their short-term market performance, are great investments. "End" in this case means a beginning by investors overall to put aside momentum and potential short-term gain in highly speculative stocks to take the more assured, yet still historically high returns available in out-of-favor equities.
There is a lot of talk now about the New Economy (meaning Internet, technology and telecom). Certainly the Internet is changing the world and the advances from biotechnology will be equally amazing. Technology and telecommunications bring us opportunities none of us have dreamed of.
"Avoid the Old Economy and invest in the New and forget about price," proclaim the pundits. And in truth, that has been the way to invest over the last eighteen months.
As you have heard me say on many occasions, the key to Tiger's success over the years has been a steady commitment to buying the best stocks and shorting the worst. In a rational environment, this strategy functions well. But in an irrational market, where earnings and price considerations take a back seat to mouse clicks and momentum, such logic, as we have learned, does not count for much.
The current technology, Internet and telecom craze, fueled by the performance desires of investors, money managers and even financial buyers, is unwittingly creating a Ponzi pyramid destined for collapse. The tragedy is, however, that the only way to generate short-term performance in the current environment is to buy these stocks. That makes the process self-perpetuating until the pyramid eventually collapses under its own excess.
I have great faith though that, "this, too, will pass." We have seen manic periods like this before and I remain confident that despite the current disfavor in which it is held, value investing remains the best course. There is just too much reward in certain mundane, Old Economy stocks to ignore. This is not the first time that value stocks have taken a licking. Many of the great value investors produced terrible returns from 1970 to 1975 and from 1980 to 1981 but then they came back in spades.
The difficulty is predicting when this change will occur and in this regard I have no advantage. What I do know is that there is no point in subjecting our investors to risk in a market which I frankly do not understand. Consequently, after thorough consideration, I have decided to return all capital to our investors, effectively bringing down the curtain on the Tiger funds. We have already largely liquefied the portfolio and plan to return assets as outlined in the attached plan.
No one wishes more than I that I had taken this course earlier. Regardless, it has been an enjoyable and rewarding 20 years. The triumphs have by no means been totally diminished by the recent setbacks. Since inception, an investment in Tiger has grown 85-fold net of fees; more than three time the average of the S&P 500 and five-and-a-half times that of the Morgan Stanley Capital International World Index. The best part by far has been the opportunity to work closely with a unique cadre of co-workers and investors.
For every minute of it, the good times and the bad, the victories and the defeats, I speak for myself and a multitude of Tiger’s past and present who thank you from the bottom of our hearts.
(http://money.cnn.com/2000/03/30/mutualfunds/q_funds_tiger/sidebar.htm より)
by harry_g
| 2006-05-18 17:21
| ヘッジファンド・株式投資