2006年 05月 17日
ヘッジファンドのイメージ |
最近以前に勤めていた会社の同僚と話していて感じたのですが、ヘッジファンドは今日に至るまで「素性がよく分からない危険な存在」と言うイメージを持って語られることが多いようです。
その理由には色々あるでしょうが、ヘッジファンドの存在を世界に知らしめたのが、George Soros率いるQuantum Fundが引き起こした92年のイングランド銀行への攻撃や97年のアジア通貨危機、そして元ソロモンの天才トレーダーJohn Meriwetherとノーベル経済学賞の受賞者たちが率いたLTCMが破綻したことによる98年の世界金融危機など、世界経済全体を震撼させるような「事件」であったことが大きい気がします。
(写真は左上がSoros氏、右下がMeriwether氏)
これらのニュースを見た人は、世界のGDPの何倍と言うホットマネーが民間の、それもヘッジファンドと言う得体の知れない存在の手に握られ、それらが世界経済をカジノのように扱っている、と言う印象を受けたかもしれません。
これはPEファンドにも共通して言えることですが、ヘッジファンドは投資信託のような公募のファンドと異なり、一般に対して広くその活動内容を開示することもなければ、テレビや雑誌の広告でその名前を目にすることもありません。またヘッジファンドが少数の大手機関投資家や富裕層のみを投資家とする「私募」形式でお金を集めることで、様々な規制を免れて専門的且つリスクの高い投資スタイルを採用していると言う点も、その「得体の知れなさ」を助長している気がします。
確かにヘッジファンドは投資の際にレバレッジ(借入金)やショート(空売り)を利用することが多いため、投信と比べてリスクが高いというイメージがつきやすいのは間違いないと思います。また、マネージャーの報酬がファンドの絶対リターンにリンクしていたり、マネージャー自身も多額の自己資金をファンドに投資するのが通常であることも、リターン絶対主義のようなアグレッシブなイメージを生み出すのかも知れません。
それでも最近は、Sorosのように巨額の空売りを政府に対して仕掛けることも、またLTCMのように自己資本の何十倍といったレバレッジを掛けるということも無く、専門家の間では投資信託と比べてもリスクを抑制した形で運用を行っているケースが大半と指摘されています。その筆頭がいつも書いている「株式ロングショート」と言う投資スタイルになります。
と言うことで、ヘッジファンドとは何なのかを敢えてもう一度定義してみると、投資信託のような市場全体と同等またはそれ以上の相対リターンを目指す「伝統的」投資手法に対する「オルタナティブ(代替)」投資手法の代表格として、市場環境に関係なく、継続的に絶対リターンを上げることを目的とした私募ファンド、と言うことになるかと思います。
「伝統的投資手法」=公募、市場との相対リターン重視
アクティブ運用(投資信託等)
パッシブ運用(インデックスファンド)
「オルタナティブ投資手法」=私募、市場と無関係の絶対リターン重視
ヘッジファンド
プライベートエクイティ(LBO/PE、VC、不動産等)
実は以前は投資銀行でも、IPOなどで株式を引受けて投資家に販売する際には、ヘッジファンドを二流投資家として扱い、年金基金や投信などを一流の投資家として優先的に株式をアロケートしていました。また発行体企業も、ヘッジファンドにだけは売ってくれるな、何をされるかわからない、と言うリアクションが通常でした。
それがここ6-7年でSorosやLTCMのようなグローバルマクロと呼ばれるファンドが衰退し、株式ロングショートのファンドが急拡大したことで、少なくとも私が携わったアメリカ国内の案件では、企業側もヘッジファンドを重要なターゲット投資家と認知するようになって来ています。ロングショートのヘッジファンドの中には投信以上の長期投資をするファンドも少なくなく、また年金や大学基金などの一流機関投資家がそれらのファンドに大量にお金を注ぎ込むようになったことも、「二流(?)投資家」の汚名を返上するのに役立ったのかもしれません。
ちなみに、いつもヘッジファンド=株式ロングショートのように書いていますが、プライベートエクイティの中にLBOファンド、再生ファンド、ベンチャーキャピタルなど色々なスタイルがあるように、ヘッジファンドの中にも様々な投資手法があり、株式ロングショートはその一つに過ぎません。そんな運用スタイルの違いについても、また機会があったら書きたいと思います。
尚、ヘッジファンド業界については私は素人の域を脱しませんが、業界で活躍されるth4844さんの「Cutting Edge」が非常に詳しいので、ここに紹介させて頂きます。
(写真はwww.georgesoros.com、http://www.streetstories.com/meriwether.htmlより)
その理由には色々あるでしょうが、ヘッジファンドの存在を世界に知らしめたのが、George Soros率いるQuantum Fundが引き起こした92年のイングランド銀行への攻撃や97年のアジア通貨危機、そして元ソロモンの天才トレーダーJohn Meriwetherとノーベル経済学賞の受賞者たちが率いたLTCMが破綻したことによる98年の世界金融危機など、世界経済全体を震撼させるような「事件」であったことが大きい気がします。
(写真は左上がSoros氏、右下がMeriwether氏)
これらのニュースを見た人は、世界のGDPの何倍と言うホットマネーが民間の、それもヘッジファンドと言う得体の知れない存在の手に握られ、それらが世界経済をカジノのように扱っている、と言う印象を受けたかもしれません。
これはPEファンドにも共通して言えることですが、ヘッジファンドは投資信託のような公募のファンドと異なり、一般に対して広くその活動内容を開示することもなければ、テレビや雑誌の広告でその名前を目にすることもありません。またヘッジファンドが少数の大手機関投資家や富裕層のみを投資家とする「私募」形式でお金を集めることで、様々な規制を免れて専門的且つリスクの高い投資スタイルを採用していると言う点も、その「得体の知れなさ」を助長している気がします。
確かにヘッジファンドは投資の際にレバレッジ(借入金)やショート(空売り)を利用することが多いため、投信と比べてリスクが高いというイメージがつきやすいのは間違いないと思います。また、マネージャーの報酬がファンドの絶対リターンにリンクしていたり、マネージャー自身も多額の自己資金をファンドに投資するのが通常であることも、リターン絶対主義のようなアグレッシブなイメージを生み出すのかも知れません。
それでも最近は、Sorosのように巨額の空売りを政府に対して仕掛けることも、またLTCMのように自己資本の何十倍といったレバレッジを掛けるということも無く、専門家の間では投資信託と比べてもリスクを抑制した形で運用を行っているケースが大半と指摘されています。その筆頭がいつも書いている「株式ロングショート」と言う投資スタイルになります。
と言うことで、ヘッジファンドとは何なのかを敢えてもう一度定義してみると、投資信託のような市場全体と同等またはそれ以上の相対リターンを目指す「伝統的」投資手法に対する「オルタナティブ(代替)」投資手法の代表格として、市場環境に関係なく、継続的に絶対リターンを上げることを目的とした私募ファンド、と言うことになるかと思います。
「伝統的投資手法」=公募、市場との相対リターン重視
アクティブ運用(投資信託等)
パッシブ運用(インデックスファンド)
「オルタナティブ投資手法」=私募、市場と無関係の絶対リターン重視
ヘッジファンド
プライベートエクイティ(LBO/PE、VC、不動産等)
実は以前は投資銀行でも、IPOなどで株式を引受けて投資家に販売する際には、ヘッジファンドを二流投資家として扱い、年金基金や投信などを一流の投資家として優先的に株式をアロケートしていました。また発行体企業も、ヘッジファンドにだけは売ってくれるな、何をされるかわからない、と言うリアクションが通常でした。
それがここ6-7年でSorosやLTCMのようなグローバルマクロと呼ばれるファンドが衰退し、株式ロングショートのファンドが急拡大したことで、少なくとも私が携わったアメリカ国内の案件では、企業側もヘッジファンドを重要なターゲット投資家と認知するようになって来ています。ロングショートのヘッジファンドの中には投信以上の長期投資をするファンドも少なくなく、また年金や大学基金などの一流機関投資家がそれらのファンドに大量にお金を注ぎ込むようになったことも、「二流(?)投資家」の汚名を返上するのに役立ったのかもしれません。
ちなみに、いつもヘッジファンド=株式ロングショートのように書いていますが、プライベートエクイティの中にLBOファンド、再生ファンド、ベンチャーキャピタルなど色々なスタイルがあるように、ヘッジファンドの中にも様々な投資手法があり、株式ロングショートはその一つに過ぎません。そんな運用スタイルの違いについても、また機会があったら書きたいと思います。
尚、ヘッジファンド業界については私は素人の域を脱しませんが、業界で活躍されるth4844さんの「Cutting Edge」が非常に詳しいので、ここに紹介させて頂きます。
(写真はwww.georgesoros.com、http://www.streetstories.com/meriwether.htmlより)
by harry_g
| 2006-05-17 14:25
| ヘッジファンド・株式投資