2006年 04月 02日
「外資系」の役割? |
全くの偶然なのですが、私が働いているNYの投資銀行の同じ部署には、過去に日本で働いたことがあると言う人が2人います。一人はアメリカ人、一人はカナダ人なのですが、以前に日本に住んで、日本の銀行に勤めていたことがあるそうです。
日本の金融機関が業界を牛耳っていた頃の日本しか知らない彼らは、「ソフトバンクとLBOファンドによるボーダフォンの買収合戦」のようなニュースを見るたびに、日本のような特殊な市場で、欧米の投資銀行がどんな役割を果たせるのか理解出来ないようで、いわゆる「外資系証券」の日本市場におけるポジショニングについて、何かと質問してきます。
確かに投資銀行業務やプライベートエクイティ投資はアメリカ型のビジネスであり、それを支える市場環境は日米で大きく異なります。直接金融の発展度合いもそうですし、コーポレートカルチャー、労働市場の流動性、経営者のインセンティブなど、その違いを挙げればきりがありません。
M&Aも活発になって来たとは言うものの、やはりアメリカ企業のように部門や会社全体の売買を株主価値だけを考えて行うと言うことはないでしょうし、そもそも社債の流通市場が存在しないに等しい日本では、LBOと言ってもハイイールド債で市場から効率的に資金調達を行うと言うことも無いでしょう。
しかしだからと言って、欧米流のコーポレートファイナンスの考え方が日本に浸透しないかと言えば必ずしもそうは言いきれないかもしれません。もちろん文化障壁があるため時間はかかるでしょうが、日本企業はIR活動などを通じて確実に市場のグローバル化に対応する行動を取るようになって来ていますし、M&Aも成長戦略の一環として最近ではかなり受け入れられるようになって来ていると聞いています。その一貫なのか、最近では日本企業による外国企業の買収も増えて来ているように感じます。
また、CarlyleやKKR、Bain、Permiraと言った欧米の大手プライベートエクイティファンドが日本に進出したり、日系のファンドも積極的に投資機会を窺っていることから、アメリカとは違う形でプライベートエクイティ投資のマーケットが出来て行くかもしれません。
昨今の金融業界のトレンドには、「金融のグローバル化」の名目で推し進められた市場の「アメリカ化」が強く影響しているのは間違いないわけですが、そんな現状が良いか悪いかはおいておいて、外資系証券会社や投資ファンドが日本の市場変革を助ける上で果たす役割は、ますます大きくなっていく気がします。
危険なデリバティブズや不良債権投資といった面ばかりがメディアで取り上げられたり、政治家やヤフーの掲示板などには「ハゲタカ」と呼ばれることも多い外資系ですが、その実態はそのようなネガティブな評判とはかなり違う、と言えると思います。
例えばアドバイザリーや資金調達に関するクライアントサービスの面を考えてみても、私の知っている限りでは、外資系は日本の金融機関よりよほど日本企業のことを考えて、かなり価値のあるサービスを提供しているように思います。
実はこれは当たり前で、M&Aアドバイザリーやファイナンシング業務は普通に考えれば長い付き合いのある銀行や証券会社に持って行かれてしまう類の仕事です。そういう仕事を取りたければ、日本企業にとってよほど価値のあるサービスを提供しなければ日本企業に勝ち目はありません。
こんな感じで外資系が欧米流のやり方で次々と足場を固めて行くのを日本の金融機関が黙ってみているわけはなく、最近では日系も外資のような投資銀行業務を拡充していると聞きます。これは見方を変えれば、日本企業も欧米企業のビジネスモデルが優れていることを認めてそれに倣おうとしていると言うことなわけで、なかなか興味深いトレンドだと思います。
不良債権業務についても、日本の銀行が手を付けたがらなかった債権プールをリスクを冒して買い取り、ノウハウを総動員して魅力的な投資先に変えた功績は、実に大きいと思います。モルガンスタンレーに代表される外資系の投資ファンドが、あの時リスクをおかしてマーケットに参入していなければ、銀行が抱えていた不良債権プールに血液が流れ、不動産市場が再活性化することは無かったのではないかと思います。
こういった新たなビジネスチャンスや市場全体を開拓していくような充実感は、既に市場が確立しているアメリカで働いていては、感じることが出来ないものかもしれません。もちろん日本では、案件がなかなか発生しないというようなアメリカには無いフラストレーションもあるでしょうが、外資系投資銀行の地道な努力のおかげで、市場が徐々にでも効率化してマーケットが活性化すれば、色々な意味で国全体が利するのではないかと思います。
日本の友人達の更なる活躍に期待したいと思います。
日本の金融機関が業界を牛耳っていた頃の日本しか知らない彼らは、「ソフトバンクとLBOファンドによるボーダフォンの買収合戦」のようなニュースを見るたびに、日本のような特殊な市場で、欧米の投資銀行がどんな役割を果たせるのか理解出来ないようで、いわゆる「外資系証券」の日本市場におけるポジショニングについて、何かと質問してきます。
確かに投資銀行業務やプライベートエクイティ投資はアメリカ型のビジネスであり、それを支える市場環境は日米で大きく異なります。直接金融の発展度合いもそうですし、コーポレートカルチャー、労働市場の流動性、経営者のインセンティブなど、その違いを挙げればきりがありません。
M&Aも活発になって来たとは言うものの、やはりアメリカ企業のように部門や会社全体の売買を株主価値だけを考えて行うと言うことはないでしょうし、そもそも社債の流通市場が存在しないに等しい日本では、LBOと言ってもハイイールド債で市場から効率的に資金調達を行うと言うことも無いでしょう。
しかしだからと言って、欧米流のコーポレートファイナンスの考え方が日本に浸透しないかと言えば必ずしもそうは言いきれないかもしれません。もちろん文化障壁があるため時間はかかるでしょうが、日本企業はIR活動などを通じて確実に市場のグローバル化に対応する行動を取るようになって来ていますし、M&Aも成長戦略の一環として最近ではかなり受け入れられるようになって来ていると聞いています。その一貫なのか、最近では日本企業による外国企業の買収も増えて来ているように感じます。
また、CarlyleやKKR、Bain、Permiraと言った欧米の大手プライベートエクイティファンドが日本に進出したり、日系のファンドも積極的に投資機会を窺っていることから、アメリカとは違う形でプライベートエクイティ投資のマーケットが出来て行くかもしれません。
昨今の金融業界のトレンドには、「金融のグローバル化」の名目で推し進められた市場の「アメリカ化」が強く影響しているのは間違いないわけですが、そんな現状が良いか悪いかはおいておいて、外資系証券会社や投資ファンドが日本の市場変革を助ける上で果たす役割は、ますます大きくなっていく気がします。
危険なデリバティブズや不良債権投資といった面ばかりがメディアで取り上げられたり、政治家やヤフーの掲示板などには「ハゲタカ」と呼ばれることも多い外資系ですが、その実態はそのようなネガティブな評判とはかなり違う、と言えると思います。
例えばアドバイザリーや資金調達に関するクライアントサービスの面を考えてみても、私の知っている限りでは、外資系は日本の金融機関よりよほど日本企業のことを考えて、かなり価値のあるサービスを提供しているように思います。
実はこれは当たり前で、M&Aアドバイザリーやファイナンシング業務は普通に考えれば長い付き合いのある銀行や証券会社に持って行かれてしまう類の仕事です。そういう仕事を取りたければ、日本企業にとってよほど価値のあるサービスを提供しなければ日本企業に勝ち目はありません。
こんな感じで外資系が欧米流のやり方で次々と足場を固めて行くのを日本の金融機関が黙ってみているわけはなく、最近では日系も外資のような投資銀行業務を拡充していると聞きます。これは見方を変えれば、日本企業も欧米企業のビジネスモデルが優れていることを認めてそれに倣おうとしていると言うことなわけで、なかなか興味深いトレンドだと思います。
不良債権業務についても、日本の銀行が手を付けたがらなかった債権プールをリスクを冒して買い取り、ノウハウを総動員して魅力的な投資先に変えた功績は、実に大きいと思います。モルガンスタンレーに代表される外資系の投資ファンドが、あの時リスクをおかしてマーケットに参入していなければ、銀行が抱えていた不良債権プールに血液が流れ、不動産市場が再活性化することは無かったのではないかと思います。
こういった新たなビジネスチャンスや市場全体を開拓していくような充実感は、既に市場が確立しているアメリカで働いていては、感じることが出来ないものかもしれません。もちろん日本では、案件がなかなか発生しないというようなアメリカには無いフラストレーションもあるでしょうが、外資系投資銀行の地道な努力のおかげで、市場が徐々にでも効率化してマーケットが活性化すれば、色々な意味で国全体が利するのではないかと思います。
日本の友人達の更なる活躍に期待したいと思います。
by harry_g
| 2006-04-02 15:17
| キャリア・仕事