2006年 03月 09日
"Short-term"ism |
戦略コンサル最大手マッキンゼーの発表した「Short-termism」(短期イズム)批判のレポートについて、3月8日のFTが色々と解説していました。
その記事によるとマッキンゼーは、企業が四半期毎の業績予想を発表することにより、経営の視点が極端に短期志向になってしまっている、と主張しています。この意見には米国商工会議所のトップも賛同する意見を寄せているようで、企業のみならず株式アナリストも短期的な見方しか出来なくなっていると警告しています。
このレポートはマッキンゼーのコーポレートファイナンス部門のシニアパートナーが作成したそうで、経営の視点の問題以外にも、四半期業績予想に関する色々な問題点を指摘しています。例えば、業績予想を発表しても株価のボラティリティは減少しない、株式の流動性も上がらない、バリュエーションも改善しない、と言った感じです。
より具体的には、同氏は四半期毎の業績発表はヘッジファンドによる短期的なトレーディング機会を作り出すだけで、株価のボラティリティを増加させていると主張しています。また、業績予想を発表する理由の一つとして考えられている株式市場への流動性の供給と言う目的についても、マッキンゼーの調査によると必ずしも達成されていないそうです。
四半期ベースのガイダンスはウォールストリートの常識であり、逆に経営者には非常に“受け”の悪いプラクティスなだけに、マッキンゼーがこういうレポートを出すことは、色々な議論を呼ぶことと思います。
FTにもありましたが、実際に最近一部の大手企業、例えばCitigroup、Motorola、Intel、Ford、GMなどが、業績ガイダンスを減らしている傾向があります。マッキンゼーのレポートでは、Berkshire HathawayやGoogleの名前も挙げています。
ただ、同レポートが認める通り、引続き大多数の企業は四半期毎の業績予想を発表しており、それがウォールストリートのアナリスト達に対する重要なIR活動の一つとみなされています。実際、企業に対して業績予想の発表を強いているのはセルサイド(投資銀行)のアナリストだそうで、ヘッジファンドなどをその原因とみなす経営者は少ないようです。また、マッキンゼーに指摘されたからと言って突然業績予想の発表を止めれば、市場は何か悪いニュースでも隠しているのではないかと疑うでしょうから、企業としてもなかなか難しいところでしょう。
何にしても、四半期業績にこだわりすぎるがために企業が長期的なビジョンを失ったり成長戦略がおかしくなったりしては元も子もありません。また四半期業績をスムーズにするために、利益を期越えで付け替えたりと言うことが発生するリスクもあります。最近では業績の下方修正がマーケットに与えるインパクト(「インテルショック」など)を恐れて、全般的に「低めのボール」を投げてくる企業が多いように思えます。それではそもそも何のための業績予想か、と言う話になってきます。
そこでマッキンゼーが勧めているのは、IRの内容を長期戦略や業績ドライバーについての分析にシフトしてはどうか、と言うことのようです。言い換えれば、企業業績のファンダメンタルズにフォーカスし、短期の業績予想とは決別すべきである、と言うことなのかもしれません。
しかし四半期の業績予想を発表することに関する問題点は、半期であっても通期であっても結局は同じな気がします。企業には単年ベース以上のスパンでの経営ビジョンが必要でしょうし、利益をスムーズにしたいと言う欲求は四半期ベースであろうと通期ベースであろうと同じでしょう。また業績の下方修正も、予想発表のタームの長短にかかわらず株価に対して大きな影響を与える気がします。
また、業績予想を発表しなくても、結局はアナリスト・コンセンサスからどれくらいずれたかどうかで、株価は大きく動いてしまいます。また、会社予想が無い分、変なニュースなどに株価が反応しやすくなると言うリスクもあります。
先週Googleが、Merrill Lynchの主催する投資家カンファレンスで間違って業績予想を発表してしまったことで市場が混乱したのは記憶に新しいところです。GoogleはSECへのファイリングの中で「不注意による情報の漏れは業績予想とみなされるべきではない」と言っていますが、ガイダンスがない以上、投資家はこの情報を非常に重視することと予想されます。
ビジネスドライバーや長期戦略をもっと説明すべきだとの指摘についても、実際には多くの企業が、既にIRで説明しているように思います。日本企業の中にも企業ビジョンや経営戦略についてかなり複雑なIRプレゼンテーションをしている会社もありますし、アメリカではリサーチアナリストが「Earnings Model」と呼ばれる業績予想モデルを作りやすいように、個別のドライバーを非常に分かりやすく説明する会社もあります。
また、最初の方で若干触れた業績予想がバリュエーションの向上につながるかどうかは、「向上」と言うより「最適化」に貢献するのではと思います。と言うのも、投資家やリサーチアナリストから見れば、業績予想の達成度合いや他企業との比較は、経営者の力を図る格好の材料になるからです。このように考えると、投資家コミュニティから見れば、やはり四半期毎の業績予想は極めて重要なIR情報であると言える気がします。
短期的な業績のプレッシャーに振り回されたり、煩雑な事務作業に終われる経営者の苦労は分かりますが、その情報が株主や投資家にとって重要な意味を持っている以上、それをやめると言うのはどうかと思います。経営者もそこまで四半期業績にこだわらず、うまくウォールストリートとコミュニケーションをはかることが出来るのではないかと思います。
例えば、四半期業績がおかしくても「それはこういう長期的プランの一部だから」と明確に説明する会社も少なくありません。またアナリストも投資家もバカではないので、短期的に業績がおかしくなったからと言って、原因がはっきりしていれば、むしろ買いのチャンスと判断することもあるでしょう。株式市場は「前向き」の市場なので、事後的に「こんなことになりました」と言うだけでは、やはり不十分な気がします。
このレポートの背景にあるサーベイを見た限りではこの記事にあるような結論までは分からなかったので、実際のレポートの内容を評価することは出来ませんが、FTの記事から読み取れる限りでは、業績予想の重要性を覆すまでの内容ではない気がするのですがいかがでしょうか。
その記事によるとマッキンゼーは、企業が四半期毎の業績予想を発表することにより、経営の視点が極端に短期志向になってしまっている、と主張しています。この意見には米国商工会議所のトップも賛同する意見を寄せているようで、企業のみならず株式アナリストも短期的な見方しか出来なくなっていると警告しています。このレポートはマッキンゼーのコーポレートファイナンス部門のシニアパートナーが作成したそうで、経営の視点の問題以外にも、四半期業績予想に関する色々な問題点を指摘しています。例えば、業績予想を発表しても株価のボラティリティは減少しない、株式の流動性も上がらない、バリュエーションも改善しない、と言った感じです。
より具体的には、同氏は四半期毎の業績発表はヘッジファンドによる短期的なトレーディング機会を作り出すだけで、株価のボラティリティを増加させていると主張しています。また、業績予想を発表する理由の一つとして考えられている株式市場への流動性の供給と言う目的についても、マッキンゼーの調査によると必ずしも達成されていないそうです。
四半期ベースのガイダンスはウォールストリートの常識であり、逆に経営者には非常に“受け”の悪いプラクティスなだけに、マッキンゼーがこういうレポートを出すことは、色々な議論を呼ぶことと思います。
FTにもありましたが、実際に最近一部の大手企業、例えばCitigroup、Motorola、Intel、Ford、GMなどが、業績ガイダンスを減らしている傾向があります。マッキンゼーのレポートでは、Berkshire HathawayやGoogleの名前も挙げています。
ただ、同レポートが認める通り、引続き大多数の企業は四半期毎の業績予想を発表しており、それがウォールストリートのアナリスト達に対する重要なIR活動の一つとみなされています。実際、企業に対して業績予想の発表を強いているのはセルサイド(投資銀行)のアナリストだそうで、ヘッジファンドなどをその原因とみなす経営者は少ないようです。また、マッキンゼーに指摘されたからと言って突然業績予想の発表を止めれば、市場は何か悪いニュースでも隠しているのではないかと疑うでしょうから、企業としてもなかなか難しいところでしょう。
何にしても、四半期業績にこだわりすぎるがために企業が長期的なビジョンを失ったり成長戦略がおかしくなったりしては元も子もありません。また四半期業績をスムーズにするために、利益を期越えで付け替えたりと言うことが発生するリスクもあります。最近では業績の下方修正がマーケットに与えるインパクト(「インテルショック」など)を恐れて、全般的に「低めのボール」を投げてくる企業が多いように思えます。それではそもそも何のための業績予想か、と言う話になってきます。
そこでマッキンゼーが勧めているのは、IRの内容を長期戦略や業績ドライバーについての分析にシフトしてはどうか、と言うことのようです。言い換えれば、企業業績のファンダメンタルズにフォーカスし、短期の業績予想とは決別すべきである、と言うことなのかもしれません。
しかし四半期の業績予想を発表することに関する問題点は、半期であっても通期であっても結局は同じな気がします。企業には単年ベース以上のスパンでの経営ビジョンが必要でしょうし、利益をスムーズにしたいと言う欲求は四半期ベースであろうと通期ベースであろうと同じでしょう。また業績の下方修正も、予想発表のタームの長短にかかわらず株価に対して大きな影響を与える気がします。
また、業績予想を発表しなくても、結局はアナリスト・コンセンサスからどれくらいずれたかどうかで、株価は大きく動いてしまいます。また、会社予想が無い分、変なニュースなどに株価が反応しやすくなると言うリスクもあります。先週Googleが、Merrill Lynchの主催する投資家カンファレンスで間違って業績予想を発表してしまったことで市場が混乱したのは記憶に新しいところです。GoogleはSECへのファイリングの中で「不注意による情報の漏れは業績予想とみなされるべきではない」と言っていますが、ガイダンスがない以上、投資家はこの情報を非常に重視することと予想されます。
ビジネスドライバーや長期戦略をもっと説明すべきだとの指摘についても、実際には多くの企業が、既にIRで説明しているように思います。日本企業の中にも企業ビジョンや経営戦略についてかなり複雑なIRプレゼンテーションをしている会社もありますし、アメリカではリサーチアナリストが「Earnings Model」と呼ばれる業績予想モデルを作りやすいように、個別のドライバーを非常に分かりやすく説明する会社もあります。
また、最初の方で若干触れた業績予想がバリュエーションの向上につながるかどうかは、「向上」と言うより「最適化」に貢献するのではと思います。と言うのも、投資家やリサーチアナリストから見れば、業績予想の達成度合いや他企業との比較は、経営者の力を図る格好の材料になるからです。このように考えると、投資家コミュニティから見れば、やはり四半期毎の業績予想は極めて重要なIR情報であると言える気がします。
短期的な業績のプレッシャーに振り回されたり、煩雑な事務作業に終われる経営者の苦労は分かりますが、その情報が株主や投資家にとって重要な意味を持っている以上、それをやめると言うのはどうかと思います。経営者もそこまで四半期業績にこだわらず、うまくウォールストリートとコミュニケーションをはかることが出来るのではないかと思います。
例えば、四半期業績がおかしくても「それはこういう長期的プランの一部だから」と明確に説明する会社も少なくありません。またアナリストも投資家もバカではないので、短期的に業績がおかしくなったからと言って、原因がはっきりしていれば、むしろ買いのチャンスと判断することもあるでしょう。株式市場は「前向き」の市場なので、事後的に「こんなことになりました」と言うだけでは、やはり不十分な気がします。
このレポートの背景にあるサーベイを見た限りではこの記事にあるような結論までは分からなかったので、実際のレポートの内容を評価することは出来ませんが、FTの記事から読み取れる限りでは、業績予想の重要性を覆すまでの内容ではない気がするのですがいかがでしょうか。
by harry_g
| 2006-03-09 10:14
| 株主経営・アクティビスト


