2006年 02月 08日
「Icahnの逆襲」 |
以前にブログでも何度か書いた著名なアクティビストのCarl Icahn氏ですが、以前からメディア最大手のタイムワーナーに株主価値の向上に関する色々な要求を突きつけるも、くれぐれも拒否されています。
そのIcahn氏がタイムワーナーに何らかの戦略的手段をとらせるために、投資銀行のLazard(と言うかそのCEOのBruce Wasserstein氏)を雇い、具体的提案を作成させているのはご存知かもしれません。その提案が、今日ニューヨークのFifth Avenueにある高級ホテルSt. Regisで、投資家ミーティングと言う形で大々的に発表されました。
このミーティングはウェブキャストで登録すれば誰でも聞くことが出来るので、私もライブで聞いていたのですが、ウォールストリートの大物で80年代にSalomon BrothersのM&A部門をトップの座に押し上げ、その後自分のブティック投資銀行を立ち上げた後に今に至るWasserstein氏、著名な投資家でアクティビスト・ヘッジファンドを経営するIcahn氏、そしてメディア大手バイアコムの前CEOでIcahn氏の提案が通った暁にはタイムワーナーの会長兼CEOに就任する予定のFrank Biondi氏が、揃って公然と「超大企業」タイムワーナーのCEOを批判する、と言う図は、何とも奇妙な感じでした。
プレゼンテーションは、基本的にはLazardがIcahn氏の依頼を受けてタイムワーナーが取るべき戦略について分析した結果、企業を4分割するのが良いであろうと言う結論に至った、と言う形で、Wasserstein氏主導で進められました。ちなみにこのレポート、371ページにも及ぶ大冊で、プレゼンター曰く「タイムワーナーの隅々まで徹底的に分析してある」そうです。
そのレポートの内容を参照しながら、たまにギャグを交えてプレゼンを行うWasserstein氏とIcahn氏の話に、聴衆は、賛成するかは別として、聞き入っていたことだけは間違いないようでした。例えば、「タイムワーナーは現在Goldman SachsとBear Stearnsの大物を雇って戦略の検討をさせているそうだが、その2人はMichael Eisnerにも雇われていたっけな」、と言った具合です。Eisner氏はウォルトディズニーの元CEOで、トップ座に10年以上君臨してディズニーの成長に大きく貢献しましたが、最後にはディズニーの企業価値を破壊していると批判されてトップの座を退いています。
この手のプレゼンテーションは、失敗すると最後にブーイングが飛ぶわけですが、今回はしっかりと拍手が起こっていたので、色々と厳しい質問も飛んでいましたが、全般的には好意的に受け入れられたようです。

投資銀行は、通常企業や経営者との長期的な関係を重視するため、今回Wasserstein氏率いるLazardが、「乗っ取り屋」の烙印を押されているIcahn氏のアドバイザーに雇われた時には、業界に衝撃が走りました。
株式の50%以上を買収し、経営権を掌握してから経営改革をするプライベート・エクイティ・ファンドと異なり、アクティビストファンドは、通常のヘッジファンド同様にマイノリティ(50%以下)の株式しか取得しないのに、経営陣に経営改善と株主価値の向上に関する要求を突きつけるファンドを指します。
そのアクティビストファンド、何かと印象が悪いですが、その理由は歴史的に、借入金の増大と一時的な配当金の引き上げを求めて来たためだと思われます。経営陣から見れば、会社のアセットを利用して自分だけ利を得ようとしている、また、資金を成長への投資ではなく投資家に吐き出せと言うことは自分の経営に失格の烙印を押されたのと同じであるため、そんなことを認められるか、と言うメンタリティが働くわけです。
それでもケースによっては、純粋に株主として株主価値向上の提案をしている場合もあります。そういうケースはアクティビストとは必ずしも呼ばないかもしれませんが、ヘッジファンドがそういった正当な要求をする際に、「アクティビスト=乗っ取り屋」のイメージを払拭してある種のクレディビリティを獲得するためには、投資銀行を雇うと言うのは選択肢としてあっても良いのでは、と思います。
実はこの「Lazard-Icahn」の件が発表される以前に、このアイデアをM&A部門の人間にぶつけてみたことがあります。ヘッジファンドがここまで躍進しているのだから、投資銀行としてもそのトレンドに乗るビジネスとして、アクティビストファンドの提案する経営改革案をバックアップしたらどうか、と言うものです。そもそも投資銀行だって、株式こそ持っていないものの、日々経営陣に向かって株主価値向上のためにはああすればよい、こうすればよい、と提案しているわけです。そのノウハウは、そのままヘッジファンドにも役立つのではないか、と思ったわけです。
しかしこの話をした人ほぼ全員から、そんなことをしたらターゲットとなっている企業はもちろん、その周辺の企業からも「乗っ取り屋」のレッテルを貼られるから、そんなことをする投資銀行は存在し得ない、と言われました。そう言っていた人達は、Lazard-Icahnのニュースが出た時に一斉に「お前が正しかった」とか言うメールをくれましたが、私の同僚の言っていたことは、基本的には間違いではないと思います。実際に今回のLazardのケースは、Wasserstein氏とIcahn氏の「ハイソサエティ」での個人的つながりが大きく影響している例外である、と考えられています。
とは言え時代が動いていることは間違いなく、実際にLazardが今後どの企業からも信用されなくなってしまうかどうかは分かりません。逆に今回の件で名を上げるようなことになれば、今後一気にアクティビスト-投資銀行と言う流れが加速するかもしれません。実際に株式部サイドでは、以前には3流顧客として扱っていたヘッジファンドを、今では1流として扱うようになっています。企業との長期的関係を築きたい投資銀行の戦略が、ヘッジファンドの躍進で今後どう変わって行くか、注目したいと思います。
そのIcahn氏がタイムワーナーに何らかの戦略的手段をとらせるために、投資銀行のLazard(と言うかそのCEOのBruce Wasserstein氏)を雇い、具体的提案を作成させているのはご存知かもしれません。その提案が、今日ニューヨークのFifth Avenueにある高級ホテルSt. Regisで、投資家ミーティングと言う形で大々的に発表されました。
このミーティングはウェブキャストで登録すれば誰でも聞くことが出来るので、私もライブで聞いていたのですが、ウォールストリートの大物で80年代にSalomon BrothersのM&A部門をトップの座に押し上げ、その後自分のブティック投資銀行を立ち上げた後に今に至るWasserstein氏、著名な投資家でアクティビスト・ヘッジファンドを経営するIcahn氏、そしてメディア大手バイアコムの前CEOでIcahn氏の提案が通った暁にはタイムワーナーの会長兼CEOに就任する予定のFrank Biondi氏が、揃って公然と「超大企業」タイムワーナーのCEOを批判する、と言う図は、何とも奇妙な感じでした。プレゼンテーションは、基本的にはLazardがIcahn氏の依頼を受けてタイムワーナーが取るべき戦略について分析した結果、企業を4分割するのが良いであろうと言う結論に至った、と言う形で、Wasserstein氏主導で進められました。ちなみにこのレポート、371ページにも及ぶ大冊で、プレゼンター曰く「タイムワーナーの隅々まで徹底的に分析してある」そうです。
そのレポートの内容を参照しながら、たまにギャグを交えてプレゼンを行うWasserstein氏とIcahn氏の話に、聴衆は、賛成するかは別として、聞き入っていたことだけは間違いないようでした。例えば、「タイムワーナーは現在Goldman SachsとBear Stearnsの大物を雇って戦略の検討をさせているそうだが、その2人はMichael Eisnerにも雇われていたっけな」、と言った具合です。Eisner氏はウォルトディズニーの元CEOで、トップ座に10年以上君臨してディズニーの成長に大きく貢献しましたが、最後にはディズニーの企業価値を破壊していると批判されてトップの座を退いています。
この手のプレゼンテーションは、失敗すると最後にブーイングが飛ぶわけですが、今回はしっかりと拍手が起こっていたので、色々と厳しい質問も飛んでいましたが、全般的には好意的に受け入れられたようです。

株式の50%以上を買収し、経営権を掌握してから経営改革をするプライベート・エクイティ・ファンドと異なり、アクティビストファンドは、通常のヘッジファンド同様にマイノリティ(50%以下)の株式しか取得しないのに、経営陣に経営改善と株主価値の向上に関する要求を突きつけるファンドを指します。
そのアクティビストファンド、何かと印象が悪いですが、その理由は歴史的に、借入金の増大と一時的な配当金の引き上げを求めて来たためだと思われます。経営陣から見れば、会社のアセットを利用して自分だけ利を得ようとしている、また、資金を成長への投資ではなく投資家に吐き出せと言うことは自分の経営に失格の烙印を押されたのと同じであるため、そんなことを認められるか、と言うメンタリティが働くわけです。
それでもケースによっては、純粋に株主として株主価値向上の提案をしている場合もあります。そういうケースはアクティビストとは必ずしも呼ばないかもしれませんが、ヘッジファンドがそういった正当な要求をする際に、「アクティビスト=乗っ取り屋」のイメージを払拭してある種のクレディビリティを獲得するためには、投資銀行を雇うと言うのは選択肢としてあっても良いのでは、と思います。
実はこの「Lazard-Icahn」の件が発表される以前に、このアイデアをM&A部門の人間にぶつけてみたことがあります。ヘッジファンドがここまで躍進しているのだから、投資銀行としてもそのトレンドに乗るビジネスとして、アクティビストファンドの提案する経営改革案をバックアップしたらどうか、と言うものです。そもそも投資銀行だって、株式こそ持っていないものの、日々経営陣に向かって株主価値向上のためにはああすればよい、こうすればよい、と提案しているわけです。そのノウハウは、そのままヘッジファンドにも役立つのではないか、と思ったわけです。
しかしこの話をした人ほぼ全員から、そんなことをしたらターゲットとなっている企業はもちろん、その周辺の企業からも「乗っ取り屋」のレッテルを貼られるから、そんなことをする投資銀行は存在し得ない、と言われました。そう言っていた人達は、Lazard-Icahnのニュースが出た時に一斉に「お前が正しかった」とか言うメールをくれましたが、私の同僚の言っていたことは、基本的には間違いではないと思います。実際に今回のLazardのケースは、Wasserstein氏とIcahn氏の「ハイソサエティ」での個人的つながりが大きく影響している例外である、と考えられています。
とは言え時代が動いていることは間違いなく、実際にLazardが今後どの企業からも信用されなくなってしまうかどうかは分かりません。逆に今回の件で名を上げるようなことになれば、今後一気にアクティビスト-投資銀行と言う流れが加速するかもしれません。実際に株式部サイドでは、以前には3流顧客として扱っていたヘッジファンドを、今では1流として扱うようになっています。企業との長期的関係を築きたい投資銀行の戦略が、ヘッジファンドの躍進で今後どう変わって行くか、注目したいと思います。
by harry_g
| 2006-02-08 12:47
| 株主経営・アクティビスト


