2005年 12月 21日
HFの苦悩とLBOファンド |
最近書いている話と関連して、アメリカでは、プライベートエクイティ投資とヘッジファンドの垣根がどんどん低くなっている、と言う話をよく聞きます。その原因には色々あるのでしょうが、理由の一つには、ヘッジファンドが流入する多額の資金の投資先に困っているのに大して、LBOファンドは引続き投資規模を拡大させている、と言う事実があると思われます。
ヘッジファンドを世の中に広く知らしめたのは、クウォンタムファンドやLTCMのような「グローバルマクロ」と呼ばれる世界中の債券(金利)や為替に投資するファンドだと思います。その時代と比較すると、以前のブログで書いたように、最近のヘッジファンドのアセットクラスの中心は「ロングショート」と呼ばれる株式投資のファンドになっているようです。
ロングショートとは、要は一般に知られていないような割高株・割安株を徹底的なリサーチを通じて探し出し、ロング(買い持ち)とショート(売り持ち)のポジションを組み合わせて投資すると言う手法です。その「一般に知られていないような」投資対象を探す際に、当然誰でも知っているような大企業ではなかなかチャンスがないので、どうしても時価総額が比較的小さい企業が中心になりがちです。
そのようなアプローチはあくまで高いリターンを求めてのことなわけですが、時価総額が小さい企業の株式を売買する際には、ある程度投資額を抑えないと、自らの動きでマーケットを作ってしまうと言う苦しみがあります。言い換えると、せっかく見つけた投資機会にも、大きくベットすることは出来ないことになります。
例えば時価総額が1,000億円で、発行済株式数の6割(600億円相当)しか市場に流通していないA社株に投資しようと思ったとします。その投資アイデアは素晴らしいものに見えるのですが、だからと言ってそこに300億円突っ込むわけには行きません。と言うのも、そもそもそんな大きな売り手は存在しない可能性が高いですし、その買い注文を執行する間に、世の中が「お!誰かがA社株を買いあがってるぞ。何かあるに違いない」と気づいてしまい、市場株価がどんどん上がってしまうからです。
よってヘッジファンドは、あまり大きなポジションになるとセルサイドの証券会社に売買注文を出しても希望通りの価格で希望通りの額の株が買える保証はなく、期待したポジションが作れなくて苦労することになるわけです。(証券会社の中には、同業他社と差別化するためにエクセキューション価格を保証する所もあるそうです。)実際ヘッジファンドに勤めている友人の話によると、場合によっては一つのポジションを作るのに何ヶ月もかかることがあるそうです。
そういった「苦悩」を抱えるヘッジファンドと比較すると、LBOを中心としたプライベートエクイティ投資は、基本的には公開企業を100%買収するわけで、投資額は理論上どこまでも大きくすることが出来ます。上で挙げたA社であれば、自己資金(エクイティ)300億円、借入金(デット)700億円で、100%買収してしまうわけです。更に買収の際にはTOBなどのM&Aの手法が用いられるため、投資のプロセスで買収プレミアム(市場株価に上乗せして払われる%)以上に買値が上がってしまうリスクは少なく、いわば「希望通りの投資ポジション」を実現することが出来るわけです。
もちろんLBOにも色々な制約条件があり、その最たるものはデットのサイジングです。いくらLBOファンドが巨額のエクイティを持っていたとしても、一つの案件に使えるデットのサイズによって、LBOの案件規模は決まってしまいます。少し前までは、デットの額が5,000億円を越えるような案件は非常に少なく、結果的にあまり大きなLBOも実現が困難でした。しかし2000年代前半の不景気を通じた企業のバランスシートの健全化と低金利も手伝って、最近では1兆円を超えるようなデットファイナンシングも見られるようになって来ています。もちろんその裏には、流動性の高いレバレッジド・ローンやハイイールドのマーケットや、デフォルトスワップなどのデリバティブ市場があることは言うまでもありません。
ともかくLBOファンドは、市場全体で何兆円と言う投資資金を引き受け、それを何千億円、何兆円といった巨大なレバレッジド・バイアウト案件につぎ込んで、25%~100%超と言う、高いIRRを挙げていると言うわけです。
こうした状況を賢いヘッジファンドのマネージャー達が看過するわけもなく、「それなら俺達もLBOファンドのようにやろうじゃないか」と言うことになり、積極的にLBOの際のサブデットやメザニンに投資をしたり、アクティビストのように上場企業の大きな割合株を市場を通じて取得して、マネジメントに経営改革を働きかけたりと言う動きが活発化しているわけです。それと同時に先日書いたBlackstoneのように、伝統的なLBOから徐々に投資先をヘッジファンドへと拡大して行く動きもあります。これらの動きの背景にはプライベートエクイティ投資にもロングショートの投資にもある程度共通のノウハウがある、との考えがあるのかもしれません。
ヘッジファンドを世の中に広く知らしめたのは、クウォンタムファンドやLTCMのような「グローバルマクロ」と呼ばれる世界中の債券(金利)や為替に投資するファンドだと思います。その時代と比較すると、以前のブログで書いたように、最近のヘッジファンドのアセットクラスの中心は「ロングショート」と呼ばれる株式投資のファンドになっているようです。ロングショートとは、要は一般に知られていないような割高株・割安株を徹底的なリサーチを通じて探し出し、ロング(買い持ち)とショート(売り持ち)のポジションを組み合わせて投資すると言う手法です。その「一般に知られていないような」投資対象を探す際に、当然誰でも知っているような大企業ではなかなかチャンスがないので、どうしても時価総額が比較的小さい企業が中心になりがちです。
そのようなアプローチはあくまで高いリターンを求めてのことなわけですが、時価総額が小さい企業の株式を売買する際には、ある程度投資額を抑えないと、自らの動きでマーケットを作ってしまうと言う苦しみがあります。言い換えると、せっかく見つけた投資機会にも、大きくベットすることは出来ないことになります。
例えば時価総額が1,000億円で、発行済株式数の6割(600億円相当)しか市場に流通していないA社株に投資しようと思ったとします。その投資アイデアは素晴らしいものに見えるのですが、だからと言ってそこに300億円突っ込むわけには行きません。と言うのも、そもそもそんな大きな売り手は存在しない可能性が高いですし、その買い注文を執行する間に、世の中が「お!誰かがA社株を買いあがってるぞ。何かあるに違いない」と気づいてしまい、市場株価がどんどん上がってしまうからです。
よってヘッジファンドは、あまり大きなポジションになるとセルサイドの証券会社に売買注文を出しても希望通りの価格で希望通りの額の株が買える保証はなく、期待したポジションが作れなくて苦労することになるわけです。(証券会社の中には、同業他社と差別化するためにエクセキューション価格を保証する所もあるそうです。)実際ヘッジファンドに勤めている友人の話によると、場合によっては一つのポジションを作るのに何ヶ月もかかることがあるそうです。
そういった「苦悩」を抱えるヘッジファンドと比較すると、LBOを中心としたプライベートエクイティ投資は、基本的には公開企業を100%買収するわけで、投資額は理論上どこまでも大きくすることが出来ます。上で挙げたA社であれば、自己資金(エクイティ)300億円、借入金(デット)700億円で、100%買収してしまうわけです。更に買収の際にはTOBなどのM&Aの手法が用いられるため、投資のプロセスで買収プレミアム(市場株価に上乗せして払われる%)以上に買値が上がってしまうリスクは少なく、いわば「希望通りの投資ポジション」を実現することが出来るわけです。
もちろんLBOにも色々な制約条件があり、その最たるものはデットのサイジングです。いくらLBOファンドが巨額のエクイティを持っていたとしても、一つの案件に使えるデットのサイズによって、LBOの案件規模は決まってしまいます。少し前までは、デットの額が5,000億円を越えるような案件は非常に少なく、結果的にあまり大きなLBOも実現が困難でした。しかし2000年代前半の不景気を通じた企業のバランスシートの健全化と低金利も手伝って、最近では1兆円を超えるようなデットファイナンシングも見られるようになって来ています。もちろんその裏には、流動性の高いレバレッジド・ローンやハイイールドのマーケットや、デフォルトスワップなどのデリバティブ市場があることは言うまでもありません。
ともかくLBOファンドは、市場全体で何兆円と言う投資資金を引き受け、それを何千億円、何兆円といった巨大なレバレッジド・バイアウト案件につぎ込んで、25%~100%超と言う、高いIRRを挙げていると言うわけです。
こうした状況を賢いヘッジファンドのマネージャー達が看過するわけもなく、「それなら俺達もLBOファンドのようにやろうじゃないか」と言うことになり、積極的にLBOの際のサブデットやメザニンに投資をしたり、アクティビストのように上場企業の大きな割合株を市場を通じて取得して、マネジメントに経営改革を働きかけたりと言う動きが活発化しているわけです。それと同時に先日書いたBlackstoneのように、伝統的なLBOから徐々に投資先をヘッジファンドへと拡大して行く動きもあります。これらの動きの背景にはプライベートエクイティ投資にもロングショートの投資にもある程度共通のノウハウがある、との考えがあるのかもしれません。
by harry_g
| 2005-12-21 15:00
| ヘッジファンド・株式投資


