2005年 12月 16日
Blackstoneと740 Park Ave |
先日西海岸への出張の帰りの飛行機の中で溜まっていた新聞記事を読んでいて、大手LBOファンドであるBlackstoneの創業時代からの話についてのFTの記事を見つけました。 Blackstoneは、現在までにクローズした案件総額が$120bn(14.4兆円)、傘下のポートフォリオ企業の価値を合計するとアメリカ大手企業500社(Fortune 500)の20位にランクするという、業界最大手のLBO(バイアウト)ファンドです。最近のブログにも書いた史上二番目の規模のLBOであるTDCのバイアウトにも参加し、また近日中に$13bn(1.6兆円)と言う巨額のバイアウトファンドをクローズ予定と言うので、その規模の大きさが分かると思います。
同社はかつての業界のリーダーであったForstmann LittleやThomas H. Leeとの競争に勝ち抜き、今では業界の草分け的な存在であるKKRと互角の争いをしています。世の中のお金がパブリックエクイティ(上場株)からプライベートエクイティやヘッジファンドと言ったいわゆるオルタナティブ運用に流れて行く中で、Blackstoneは、LBOファンド、リストラファンド、メザニンファンド、不動産ファンドなどを抱える大手運用グループに成長しています。(これはLBOに固執するKKRと対照的です。)
そんなBlackstoneですが、大手投資銀行のLehman Brothersのトップを11年勤め、後に米国の商務長官にも任命されたPeter Petersonと、同じくLehman出身のStephen Schwarzmanが20年前に40万ドル(約4,800万円)の資金で始めたファンドです。
当初は2人以外のメンバーは秘書だけだったそうで、プライベートエクイティファンドが稀な存在であった創業当時は「それはもう、本当に大変だった」と、FTの記事の中でSchwarzman氏は当時を振り返っています。具体的には、最初に検討した案件19個が次々と駄目になり、488社の投資家から出資を断られたと言うので驚きです。そして創業資金の半分は、一ドルも稼ぐ前に無くなってしまったそうです。それでも断られても断られても営業活動を続け、その苦労が報われて、後にリードインベスター(Prudential Life)が見つかり、その後は日興證券、MetLife、GE、GMなどから次々にお金が集まるようになったそうです。こういった話はあまり知られていませんが、まさに起業家精神の何物でもないと言う感じがします。
そんな同社の最初のバイアウト案件は、最近よく名前を聞くCarl Icahn氏が乗っ取りをかけていたエネルギー業界の会社、USXだったそうです。乗っ取りからの救いの手を差し延べる形で行った同社への投資は大成功で、投資額$25mm(約30億円)に対し、Blackstoneは後に$600mm(約720億円)の利益を上げたと言うので驚きです。
そしてこのディールは、後にBlackstoneの投資手法の代名詞ともなる、高リターン、強固なコネクション、企業との協力関係といったスタイルにつながっていったそうです。これらは今では当たり前に聞こえますが、企業の乗っ取りが盛んだった1980年代には、企業と協力したバイアウトと言うのは非常に珍しい投資手法だったと聞きます。LBOを発明したのがKKRならば、この「信頼してくれれば常に味方につきますよ」と言うバイアウト手法を発明したのはBlackstoneと言えるかもしれません。
こういった革新的な運用スタイルはその後の事業の分化にも発揮され、Blackstoneは後にリストラファンドを立ち上げました。あまり知られていませんが、PEファンドは景気後退局面に弱く、何年もの間投資からエグジットできなくなってしまうこともよくあります。そのような状況に対応するのが、このリストラファンドと言うわけです。
その後Blackstoneは、どんどん膨れ上がるファンドの投資先を確保するために、欧州に進出し、デットやメザニンデットへの投資を始め、不動産ファンドを立ち上げ、そして最近ではヘッジファンドも立ち上げる予定と聞きます。本元のLBOファンドは競合他社が増えてリターンが縮小しているようですが、このような革新的なカルチャーが維持されている限りは、Blackstone全体としては安泰な気がします。
外から見ていると「すごい会社」であるBlackstoneも、投資銀行と同様に内情のカルチャーは相当厳しいものらしく、中にいる友人達の生活は相当つらそうです。(これは部門・ファンドにもよりますが。)特に破格の給料をもらえるジュニアレベルの暮らしは投資銀行以上のようで、二年間のアソシエイトプログラムに生き残るのは至難の業のようです。
それもこれもSchwarzman氏が言う通り、「ウォールストリートでは過去の栄光はあくまで過去のもの」であるに過ぎず、勝ち続けるためには「それはもう大変な人生になる」と言うことなのかもしれません。
ちなみにSchwarzman氏、かつてRockefeller家の人間やChrysler家の人間も住んでいたと言うマンハッタン、Park Avenue沿いの有名なマンション、740 Park Avenueのペントハウスに住んでいるそうです。
このビル、最近でも「最近の有名人」が色々住んでいることでも有名で、例えば大手ヘッジファンドMillennium PartnersのIsrael Englander氏、Dune CapitalのSteve Mnuchin氏、Tisch FinancialのThomas Tisch氏などもこのビルの住民だそうです。(Estee Lauderの創業者ファミリーであるRonald Lauder氏もお住まいだそうです。)
上のリンクにもありますが、ペントハウスの広さたるや尋常ではありません。マンハッタンでは50億円以上のマンションと言うのもいくつかありますが、この物件もその一つかもしれません。
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Note: The image of this building I previously had on this blog can be found on this website. Thanks!
同社はかつての業界のリーダーであったForstmann LittleやThomas H. Leeとの競争に勝ち抜き、今では業界の草分け的な存在であるKKRと互角の争いをしています。世の中のお金がパブリックエクイティ(上場株)からプライベートエクイティやヘッジファンドと言ったいわゆるオルタナティブ運用に流れて行く中で、Blackstoneは、LBOファンド、リストラファンド、メザニンファンド、不動産ファンドなどを抱える大手運用グループに成長しています。(これはLBOに固執するKKRと対照的です。)
そんなBlackstoneですが、大手投資銀行のLehman Brothersのトップを11年勤め、後に米国の商務長官にも任命されたPeter Petersonと、同じくLehman出身のStephen Schwarzmanが20年前に40万ドル(約4,800万円)の資金で始めたファンドです。
当初は2人以外のメンバーは秘書だけだったそうで、プライベートエクイティファンドが稀な存在であった創業当時は「それはもう、本当に大変だった」と、FTの記事の中でSchwarzman氏は当時を振り返っています。具体的には、最初に検討した案件19個が次々と駄目になり、488社の投資家から出資を断られたと言うので驚きです。そして創業資金の半分は、一ドルも稼ぐ前に無くなってしまったそうです。それでも断られても断られても営業活動を続け、その苦労が報われて、後にリードインベスター(Prudential Life)が見つかり、その後は日興證券、MetLife、GE、GMなどから次々にお金が集まるようになったそうです。こういった話はあまり知られていませんが、まさに起業家精神の何物でもないと言う感じがします。
そんな同社の最初のバイアウト案件は、最近よく名前を聞くCarl Icahn氏が乗っ取りをかけていたエネルギー業界の会社、USXだったそうです。乗っ取りからの救いの手を差し延べる形で行った同社への投資は大成功で、投資額$25mm(約30億円)に対し、Blackstoneは後に$600mm(約720億円)の利益を上げたと言うので驚きです。
そしてこのディールは、後にBlackstoneの投資手法の代名詞ともなる、高リターン、強固なコネクション、企業との協力関係といったスタイルにつながっていったそうです。これらは今では当たり前に聞こえますが、企業の乗っ取りが盛んだった1980年代には、企業と協力したバイアウトと言うのは非常に珍しい投資手法だったと聞きます。LBOを発明したのがKKRならば、この「信頼してくれれば常に味方につきますよ」と言うバイアウト手法を発明したのはBlackstoneと言えるかもしれません。
こういった革新的な運用スタイルはその後の事業の分化にも発揮され、Blackstoneは後にリストラファンドを立ち上げました。あまり知られていませんが、PEファンドは景気後退局面に弱く、何年もの間投資からエグジットできなくなってしまうこともよくあります。そのような状況に対応するのが、このリストラファンドと言うわけです。
その後Blackstoneは、どんどん膨れ上がるファンドの投資先を確保するために、欧州に進出し、デットやメザニンデットへの投資を始め、不動産ファンドを立ち上げ、そして最近ではヘッジファンドも立ち上げる予定と聞きます。本元のLBOファンドは競合他社が増えてリターンが縮小しているようですが、このような革新的なカルチャーが維持されている限りは、Blackstone全体としては安泰な気がします。
外から見ていると「すごい会社」であるBlackstoneも、投資銀行と同様に内情のカルチャーは相当厳しいものらしく、中にいる友人達の生活は相当つらそうです。(これは部門・ファンドにもよりますが。)特に破格の給料をもらえるジュニアレベルの暮らしは投資銀行以上のようで、二年間のアソシエイトプログラムに生き残るのは至難の業のようです。
それもこれもSchwarzman氏が言う通り、「ウォールストリートでは過去の栄光はあくまで過去のもの」であるに過ぎず、勝ち続けるためには「それはもう大変な人生になる」と言うことなのかもしれません。
ちなみにSchwarzman氏、かつてRockefeller家の人間やChrysler家の人間も住んでいたと言うマンハッタン、Park Avenue沿いの有名なマンション、740 Park Avenueのペントハウスに住んでいるそうです。
このビル、最近でも「最近の有名人」が色々住んでいることでも有名で、例えば大手ヘッジファンドMillennium PartnersのIsrael Englander氏、Dune CapitalのSteve Mnuchin氏、Tisch FinancialのThomas Tisch氏などもこのビルの住民だそうです。(Estee Lauderの創業者ファミリーであるRonald Lauder氏もお住まいだそうです。)
上のリンクにもありますが、ペントハウスの広さたるや尋常ではありません。マンハッタンでは50億円以上のマンションと言うのもいくつかありますが、この物件もその一つかもしれません。
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Note: The image of this building I previously had on this blog can be found on this website. Thanks!
by harry_g
| 2005-12-16 14:27
| LBO・プライベートエクイティ