2005年 12月 01日
金銭的インセンティブの威力 |
短期的な金銭的リターンの為に会社買収をしてしまうレバレッジド・バイアウト(LBO)は、つくづく金融資本主義の“最たる”プロダクトだと思います。
例えば今週、大手LBOファンドであるApax、Blackstone、KKR、Permira、Providence連合が、デンマークの通信会社「TDC」を$13 billion(約1.5兆円)で買収するとのニュースを見かけました。WSJなどの記事によると、この案件はデットも含めると16年前のKKRによるRJR NabiscoのLBO次に大きい案件になるそうです。(今年に発表されたレンタカーのHertzのLBOも上回る規模のようです。)
TDCはデンマークのNTTのような存在で、デンマークを含む北欧以外にも、イギリス、ドイツ、スイスなどで固定・携帯電話事業を営むヨーロッパの通信大手だそうです。その会社がLBOファンドへの売却に同意し、更にはドイツやポーランドなどの事業売却も検討しているとのことです。
投資方法としてLBOが素晴らしいものであることは今更言うまでもなく、こういった案件によって実に多くの人が利益を得ることが出来ます。その中には、以下のような人々が含まれると思います。
売り手の株主 (買収プレミアム)
売り手の経営陣 (退職金など)
LBOファンドのマネージャー (成功フィー)
投信、年金、富裕層などファンドの投資家 (投資リターン)
投信、生保などデットの投資家 (魅力的な金利)
投資銀行 (資金調達のフィー、M&Aフィーなど)
政府 (キャピタルゲイン税)
こうやって見ると、実に多くの人が莫大な利益を得るような素晴らしい取引に見えますが、LBOファンドは通常買収した企業のマージンを改善するために事業リストラを行うため、株主利益の最大化のために企業がバラバラにされたり、多くの従業員が職を失うことも少なくありません。もちろんこれはLBOに限ったことではなく、株主資本主義の世界では最近のデルファイやGM、メルクのリストラ案にも見られるように、株主価値を上げるために大規模なリストラが慣行されることは珍しくありません。
日本の常識で考えると何とも恐ろしい社会のように思えますが、このような「株主資本主義」慣行が浸透している背景には、解雇されても次の職探しがさほど難しくないと言う流動的な労働市場や、売り手側のマネジメントの強力な金銭的インセンティブ、究極的には国民全体が、年金等を通じて株式の投資家である事実などがあるのでしょう。
しかしアメリカならまだしも、ヨーロッパの、それもNTTのような存在の企業までが本格的にLBOの対象になり初めていることで、改めて利益追求を絶対的に正統化する金融資本主義(?)の浸透力について再認識させられます。
もちろん欧米でも、こういった動きに対する反動もあります。前から書いている大手新聞社「Knight Ridder」のケースでは、元編集者などが「同社は単なる公開企業(Public company)ではない、社会信用(Public trust)なのだ」のように主張して、アクティビストファンドであるPCMの企業売却(場合によってはバラ売り)に強く反対しています。それでも株主利益の最大化が図れないのでは究極的には意味がないと言う社会の趨勢が変わることは無いように思います。
今回のTDCの案件では、金銭的インセンティブの威力と、仮に日本でNTTやJRがLBOされたら社会はどういう反応を示すのか、と思わず考えてしまいました。
例えば今週、大手LBOファンドであるApax、Blackstone、KKR、Permira、Providence連合が、デンマークの通信会社「TDC」を$13 billion(約1.5兆円)で買収するとのニュースを見かけました。WSJなどの記事によると、この案件はデットも含めると16年前のKKRによるRJR NabiscoのLBO次に大きい案件になるそうです。(今年に発表されたレンタカーのHertzのLBOも上回る規模のようです。)TDCはデンマークのNTTのような存在で、デンマークを含む北欧以外にも、イギリス、ドイツ、スイスなどで固定・携帯電話事業を営むヨーロッパの通信大手だそうです。その会社がLBOファンドへの売却に同意し、更にはドイツやポーランドなどの事業売却も検討しているとのことです。
投資方法としてLBOが素晴らしいものであることは今更言うまでもなく、こういった案件によって実に多くの人が利益を得ることが出来ます。その中には、以下のような人々が含まれると思います。
売り手の株主 (買収プレミアム)
売り手の経営陣 (退職金など)
LBOファンドのマネージャー (成功フィー)
投信、年金、富裕層などファンドの投資家 (投資リターン)
投信、生保などデットの投資家 (魅力的な金利)
投資銀行 (資金調達のフィー、M&Aフィーなど)
政府 (キャピタルゲイン税)
こうやって見ると、実に多くの人が莫大な利益を得るような素晴らしい取引に見えますが、LBOファンドは通常買収した企業のマージンを改善するために事業リストラを行うため、株主利益の最大化のために企業がバラバラにされたり、多くの従業員が職を失うことも少なくありません。もちろんこれはLBOに限ったことではなく、株主資本主義の世界では最近のデルファイやGM、メルクのリストラ案にも見られるように、株主価値を上げるために大規模なリストラが慣行されることは珍しくありません。
日本の常識で考えると何とも恐ろしい社会のように思えますが、このような「株主資本主義」慣行が浸透している背景には、解雇されても次の職探しがさほど難しくないと言う流動的な労働市場や、売り手側のマネジメントの強力な金銭的インセンティブ、究極的には国民全体が、年金等を通じて株式の投資家である事実などがあるのでしょう。
しかしアメリカならまだしも、ヨーロッパの、それもNTTのような存在の企業までが本格的にLBOの対象になり初めていることで、改めて利益追求を絶対的に正統化する金融資本主義(?)の浸透力について再認識させられます。
もちろん欧米でも、こういった動きに対する反動もあります。前から書いている大手新聞社「Knight Ridder」のケースでは、元編集者などが「同社は単なる公開企業(Public company)ではない、社会信用(Public trust)なのだ」のように主張して、アクティビストファンドであるPCMの企業売却(場合によってはバラ売り)に強く反対しています。それでも株主利益の最大化が図れないのでは究極的には意味がないと言う社会の趨勢が変わることは無いように思います。
今回のTDCの案件では、金銭的インセンティブの威力と、仮に日本でNTTやJRがLBOされたら社会はどういう反応を示すのか、と思わず考えてしまいました。
by harry_g
| 2005-12-01 14:43
| LBO・プライベートエクイティ


