2005年 11月 28日
IBの問題点(友人の指摘) |
先日のブログの最後に今度はIBの仕事の良いところについても書いてみたいと書きましたが、その前に元業界人で友人の「スイミー」が業界の問題点について興味深い書き込みをしてくれたので、それについて要約とコメントを、出来る限り客観的にしてみたいと思います。
1)高い給与と長い拘束時間により一般社会・人との金銭感覚がズレて、以下のような症状が起こること
A)無駄なお金を使うようになること
業界人がやたらと高いレストランに行ったり高級車を買ったりと、一般的に見ると明らかな「無駄遣い」をする傾向があるのは、指摘の通りだと思います。そしてその背景には、ウォールストリート独特の、「金はまだ稼げばよい」、「自分の努力に対して褒美を与えるべきである」と言うカルチャーがあるのだと思います。
常に有利なリターンを狙って競争が繰り広げられている証券業界では、キャリア目標を明確に「金銭」においている人も多く、個人ベースでも貯金などより有利な投資手段を探し求める傾向が強いです。そのため、究極的には最も投資効率が良い“かも”しれない「自分自身」に投資(?)することは理にかなったことである、と考えられる傾向があります。
その傾向は業界の中でもマーケットサイドで特に顕著です。それはマーケットが作り出す独特の「フィーバー(興奮)」を反映しているためかもしれませんが、給料が高いと言っても生涯賃金が前払いされているだけであり、景気後退局面で自己破産に陥ったりする人が出ることがあるのは以前のブログに書いた通りです。(結局単にハイリスク・ハイリターンと言うことなのでしょう。)
B)自分のようにお金を稼いでいない人・仕事を馬鹿にするようになること(例:レストランや他サービス業に対して横柄な態度を取り出すこと)
この点についても、残念ながら指摘は当たっている気がします。この傾向は外資系証券業界に限ったことではなく、日本の高給取りのサラリーマンの間での共通の問題だとの指摘もあります。その背景には日本独特の「結果平等主義(=少しでも頭が出ていると目立つ)」があるのかもしれません。
アメリカでは、破格の金持ちが多数存在するためか価値観が多元的なためか分かりませんが、日本ほどその傾向は目立たない気がします。それでもインベストメントバンカーや弁護士は「若くしてエリートぶった人間」という批判を受けることもあり、その事実に対して大変な気をつかっている人も多くいるようです。
C)業界の人としか付き合わなくなること
これは他の専門職にも通じていることかもしれませんが、仕事内容と個人的関心が一致していることが多いため、どうしても話題の合う人間=同業者の人間になりがちです。また、お金の使い方がズレてきてしまう結果、一層その傾向が強まってしまうのかもしれません。
2)給与がネックになり、本当に自分がやりたい仕事ができなくなること
この点を言い換えると、「やりたいことをやるために犠牲にしなければいけない給料が大きいため、現状維持を優先してしまう」と言うことでしょう。
この点について前の会社の先輩は、「俺の人生は目の前に骨を吊るされて走る犬みたいなものだ。毎年骨がでかくなるため、結局走るのをやめられない」と言っていました。(同氏は大変成功しているので単なる謙遜とも取れますが。)これは良い意味では、自己成長の明確なインセンティブがあるということになりますが、悪く言うと自分の本当の関心事を犠牲にしてでも現状の仕事に固執してしまう傾向が強い、ということなのかもしれません。
3)考え方・生活の全てがResultベースになり、Processを楽しむ余裕がなくなる
この点もまさにウォールストリートのカルチャーの弊害とも言うべきで、「全てはボーナスでCompensateされるべき」と言う考え方に基づいている気がします。逆に言うと、仕事自体が楽しかったり学ぶものが多くても、結局お金や昇進がもらえないと意味がない、と言う気分になってしまうわけです。そして究極的には「この仕事がやりたいから」やっているのではなく「金が欲しいから」やっているのだと言うことになり、それならもっと別に良い仕事があるのではないか、と言う自己矛盾を抱えながら走ることになってしまう、とそういう指摘だと思います。
以上、スイミー氏の指摘は、業界への批判や業界人の悩みの多くに通じているものと思います。それでも業界内の多くの人の名誉のために言っておくと、誰もが一般から見て問題ある行動をしているわけではなく、しっかりとした目的意識や夢を持ってこの仕事についている人が多いのも事実です。また、これはアメリカ的考え方かもしれませんが、金融サービスのプロとして、「金銭的リターン」を目標に働くのも、必ずしも悪いことではないと思います。
ちなみにスイミーは、業界を去った後、自らの会社の立ち上げなどを経て、現在では昔からの夢であったプロスポーツに関わる仕事に携わっています。その基礎としてウォールストリートでの経験が生きていると言うのは、何とも頼もしい話です。
また自身では夢の実現を「運」だと言っていましたが、私が見ていた限りでは、彼の一貫した強い信念と行動力のなせる業であったと思います。
1)高い給与と長い拘束時間により一般社会・人との金銭感覚がズレて、以下のような症状が起こること
A)無駄なお金を使うようになること
業界人がやたらと高いレストランに行ったり高級車を買ったりと、一般的に見ると明らかな「無駄遣い」をする傾向があるのは、指摘の通りだと思います。そしてその背景には、ウォールストリート独特の、「金はまだ稼げばよい」、「自分の努力に対して褒美を与えるべきである」と言うカルチャーがあるのだと思います。
常に有利なリターンを狙って競争が繰り広げられている証券業界では、キャリア目標を明確に「金銭」においている人も多く、個人ベースでも貯金などより有利な投資手段を探し求める傾向が強いです。そのため、究極的には最も投資効率が良い“かも”しれない「自分自身」に投資(?)することは理にかなったことである、と考えられる傾向があります。
その傾向は業界の中でもマーケットサイドで特に顕著です。それはマーケットが作り出す独特の「フィーバー(興奮)」を反映しているためかもしれませんが、給料が高いと言っても生涯賃金が前払いされているだけであり、景気後退局面で自己破産に陥ったりする人が出ることがあるのは以前のブログに書いた通りです。(結局単にハイリスク・ハイリターンと言うことなのでしょう。)
B)自分のようにお金を稼いでいない人・仕事を馬鹿にするようになること(例:レストランや他サービス業に対して横柄な態度を取り出すこと)
この点についても、残念ながら指摘は当たっている気がします。この傾向は外資系証券業界に限ったことではなく、日本の高給取りのサラリーマンの間での共通の問題だとの指摘もあります。その背景には日本独特の「結果平等主義(=少しでも頭が出ていると目立つ)」があるのかもしれません。
アメリカでは、破格の金持ちが多数存在するためか価値観が多元的なためか分かりませんが、日本ほどその傾向は目立たない気がします。それでもインベストメントバンカーや弁護士は「若くしてエリートぶった人間」という批判を受けることもあり、その事実に対して大変な気をつかっている人も多くいるようです。
C)業界の人としか付き合わなくなること
これは他の専門職にも通じていることかもしれませんが、仕事内容と個人的関心が一致していることが多いため、どうしても話題の合う人間=同業者の人間になりがちです。また、お金の使い方がズレてきてしまう結果、一層その傾向が強まってしまうのかもしれません。
2)給与がネックになり、本当に自分がやりたい仕事ができなくなること
この点を言い換えると、「やりたいことをやるために犠牲にしなければいけない給料が大きいため、現状維持を優先してしまう」と言うことでしょう。
この点について前の会社の先輩は、「俺の人生は目の前に骨を吊るされて走る犬みたいなものだ。毎年骨がでかくなるため、結局走るのをやめられない」と言っていました。(同氏は大変成功しているので単なる謙遜とも取れますが。)これは良い意味では、自己成長の明確なインセンティブがあるということになりますが、悪く言うと自分の本当の関心事を犠牲にしてでも現状の仕事に固執してしまう傾向が強い、ということなのかもしれません。
3)考え方・生活の全てがResultベースになり、Processを楽しむ余裕がなくなる
この点もまさにウォールストリートのカルチャーの弊害とも言うべきで、「全てはボーナスでCompensateされるべき」と言う考え方に基づいている気がします。逆に言うと、仕事自体が楽しかったり学ぶものが多くても、結局お金や昇進がもらえないと意味がない、と言う気分になってしまうわけです。そして究極的には「この仕事がやりたいから」やっているのではなく「金が欲しいから」やっているのだと言うことになり、それならもっと別に良い仕事があるのではないか、と言う自己矛盾を抱えながら走ることになってしまう、とそういう指摘だと思います。
以上、スイミー氏の指摘は、業界への批判や業界人の悩みの多くに通じているものと思います。それでも業界内の多くの人の名誉のために言っておくと、誰もが一般から見て問題ある行動をしているわけではなく、しっかりとした目的意識や夢を持ってこの仕事についている人が多いのも事実です。また、これはアメリカ的考え方かもしれませんが、金融サービスのプロとして、「金銭的リターン」を目標に働くのも、必ずしも悪いことではないと思います。
ちなみにスイミーは、業界を去った後、自らの会社の立ち上げなどを経て、現在では昔からの夢であったプロスポーツに関わる仕事に携わっています。その基礎としてウォールストリートでの経験が生きていると言うのは、何とも頼もしい話です。
また自身では夢の実現を「運」だと言っていましたが、私が見ていた限りでは、彼の一貫した強い信念と行動力のなせる業であったと思います。
by harry_g
| 2005-11-28 08:19
| キャリア・仕事