2005年 11月 26日
IBのダウンサイド |
アメリカは昨日がThanksgiving(感謝祭)であったこともあり、NYも当日朝のMacy'sのパレードを除けば、いつもよりはひっそりとしています。Thanksgivingは日本の正月のような趣があり、同僚もクライアントも、みんな地元に戻って家族や親類と過ごしていたり、家族みんなで旅行に行ったりしているようです。
そんな時でも投資銀行では、仕事は若干スローダウンするものの、やはりプロジェクトベースで働いている以上はデッドラインまでにやらなければいけないことが無くなるわけではなく、みんな家族とのバケーションへの参加を遅らせたり、地元からラップトップで会社のネットワークにアクセスしたり、それこそBlackberryと言う携帯メール端末から部下に作業の指示を出したりして、仕事をしています。
M&AやIPOなどに代表される「投資銀行(IB)業務」と言う仕事は、最近ではニュースや本を通じて存在や内容も広く知られるようになり、何となく「給料が高くて魅力的」と言うイメージが広がっているようです。ただ世の中には楽してお金が稼げる仕事などあるわけもなく、IBの仕事も相当過酷なものです。
もちろん世の中にはもっと過酷な仕事も色々あるでしょうから、IBだけが特別というつもりはありません。近くで見えているだけでも、一緒にプロジェクトで働いている、大手LBOファンドや弁護士事務所の人々、事業法人のCFOや戦略部門の人々など、「アメリカ人は働かない」と言う話がどこから出てきたのかというほど、みんな良く働いています。(だからこそこういった大手企業は競争力があるのかもしれませんが。)
Thanksgivingの良い機会(?)に、あまり触れられることのないこの仕事の「ダウンサイド」について、ちょっと書いてみたいと思います。
スケジュールのコントロールが出来ない
投資銀行業務は、部門横断的には資本市場部や顧客担当など様々なファンクションの人間が、部門内ではシニアバンカーからジュニアバンカーまでの3~8人でプロジェクトチームを形成して業務に当たるため、個人レベルでのスケジュールの管理はほぼ不可能。週末の予定も金曜の夜まで分からない事が多く、休み云々に関わらず、カンファレンスコールや仕事のデットラインが設定される。そのため事前に家族や友人との予定を入れるのが難しく、バケーションも相当前から申告しておかないと実現しない。(それも直前にディールがヒートアップしたりするとキャンセルすることを余儀なくされる)
24/7(年がら年中)拘束される
多くのプロジェクトを最少人数でこなすため、就業時間がともかく長い上、週末であろうとバケーション中であろうと、クライアントや上司から呼び出されることもあるため、「拘束時間」が極めて長い。アメリカではBlackberryが浸透する以前からVoice Mailを頻繁にチェックすることが事実上義務付けられており、一年を通じて仕事が「切れる」と言うことは、事実上一切ない。シニアバンカーになっても、オフィスにはそれほど長時間いないまでも、頻繁に出張したり家から仕事をしたりと、仕事は大して楽にならない。
さらに、スキルアップを図るために若干の休みや空き時間を利用して、業界知識や財務分析スキルの向上などに時間を使うことが期待されるため、ますます自由時間が少なくなる。
チームプレーの「行き過ぎ」の存在
いかに効率性を追求するウォールストリートと言っても、やはり人間が行う仕事で、更には評価システムが360度を名目とした同僚からの評価を基準としているので、チームプレーの「行き過ぎ」とも言うべき不必要な仕事やポリティックスが多々発生する。
これはどこの業界でも同じだろうが、シニアな人間になるほど仕事を創り出す「権利」が強い上、例の360度評価では当然上司からの評価が最重要基準なので、ジュニアになればなるほどその「行き過ぎ」の被害を受けやすい。同じ社内でも稼ぐかどうかだけが評価基準のトレーディングデスクやデリバティブデスクではポリティックスに悩まされるケースは少なく、投資銀行部の「行き過ぎ」はますます目につく。(これは多かれ少なかれ「投資銀行残酷日記」に書かれている通りです)
短期間での金銭的リターンが限定的
トレーダーやデリバティブ担当者の中には20代で莫大なボーナスを稼ぐ人もいるようだが、バンカーの場合、個人パフォーマンスと業績の連動性がセールス・トレーディングと比べて低い上、大きく稼ぐレベルになるには最低でも経験10年は要するため、一般に比べると給料は高いものの、短期で大きく稼げると言ったほどではない。IBでチームのトップに立つには、経験と言う意味でもクライアントとの関係構築と言う意味でも時間がかかり、その期間に要求される仕事へのコミットメントを考えると、効率よく稼いでいるとは言えない。要するに、金だけ欲しさにやるのであれば、業界内にもっと効率の良い仕事があると言える。(もちろん応分のリスクを背負うことになり、基本的にはハイリターンになるほどハイリスクだが)
・・・とまあ、改めて考えてみるとこんな感じでしょうか。業界の方の大半は、この意見に賛成してくれると思います。(もちろん他にも何かあったらコメントください。)
それでもIBの仕事には色々魅力的な面も多く、だからこそみんな頑張って働いているわけで、その価値はボーナスといった短期的金銭的価値以上のものはあると思います。そのことについても、またそのうち書いてみたいと思います。
そんな時でも投資銀行では、仕事は若干スローダウンするものの、やはりプロジェクトベースで働いている以上はデッドラインまでにやらなければいけないことが無くなるわけではなく、みんな家族とのバケーションへの参加を遅らせたり、地元からラップトップで会社のネットワークにアクセスしたり、それこそBlackberryと言う携帯メール端末から部下に作業の指示を出したりして、仕事をしています。
M&AやIPOなどに代表される「投資銀行(IB)業務」と言う仕事は、最近ではニュースや本を通じて存在や内容も広く知られるようになり、何となく「給料が高くて魅力的」と言うイメージが広がっているようです。ただ世の中には楽してお金が稼げる仕事などあるわけもなく、IBの仕事も相当過酷なものです。
もちろん世の中にはもっと過酷な仕事も色々あるでしょうから、IBだけが特別というつもりはありません。近くで見えているだけでも、一緒にプロジェクトで働いている、大手LBOファンドや弁護士事務所の人々、事業法人のCFOや戦略部門の人々など、「アメリカ人は働かない」と言う話がどこから出てきたのかというほど、みんな良く働いています。(だからこそこういった大手企業は競争力があるのかもしれませんが。)
Thanksgivingの良い機会(?)に、あまり触れられることのないこの仕事の「ダウンサイド」について、ちょっと書いてみたいと思います。
スケジュールのコントロールが出来ない
投資銀行業務は、部門横断的には資本市場部や顧客担当など様々なファンクションの人間が、部門内ではシニアバンカーからジュニアバンカーまでの3~8人でプロジェクトチームを形成して業務に当たるため、個人レベルでのスケジュールの管理はほぼ不可能。週末の予定も金曜の夜まで分からない事が多く、休み云々に関わらず、カンファレンスコールや仕事のデットラインが設定される。そのため事前に家族や友人との予定を入れるのが難しく、バケーションも相当前から申告しておかないと実現しない。(それも直前にディールがヒートアップしたりするとキャンセルすることを余儀なくされる)
24/7(年がら年中)拘束される
多くのプロジェクトを最少人数でこなすため、就業時間がともかく長い上、週末であろうとバケーション中であろうと、クライアントや上司から呼び出されることもあるため、「拘束時間」が極めて長い。アメリカではBlackberryが浸透する以前からVoice Mailを頻繁にチェックすることが事実上義務付けられており、一年を通じて仕事が「切れる」と言うことは、事実上一切ない。シニアバンカーになっても、オフィスにはそれほど長時間いないまでも、頻繁に出張したり家から仕事をしたりと、仕事は大して楽にならない。
さらに、スキルアップを図るために若干の休みや空き時間を利用して、業界知識や財務分析スキルの向上などに時間を使うことが期待されるため、ますます自由時間が少なくなる。
チームプレーの「行き過ぎ」の存在
いかに効率性を追求するウォールストリートと言っても、やはり人間が行う仕事で、更には評価システムが360度を名目とした同僚からの評価を基準としているので、チームプレーの「行き過ぎ」とも言うべき不必要な仕事やポリティックスが多々発生する。
これはどこの業界でも同じだろうが、シニアな人間になるほど仕事を創り出す「権利」が強い上、例の360度評価では当然上司からの評価が最重要基準なので、ジュニアになればなるほどその「行き過ぎ」の被害を受けやすい。同じ社内でも稼ぐかどうかだけが評価基準のトレーディングデスクやデリバティブデスクではポリティックスに悩まされるケースは少なく、投資銀行部の「行き過ぎ」はますます目につく。(これは多かれ少なかれ「投資銀行残酷日記」に書かれている通りです)
短期間での金銭的リターンが限定的
トレーダーやデリバティブ担当者の中には20代で莫大なボーナスを稼ぐ人もいるようだが、バンカーの場合、個人パフォーマンスと業績の連動性がセールス・トレーディングと比べて低い上、大きく稼ぐレベルになるには最低でも経験10年は要するため、一般に比べると給料は高いものの、短期で大きく稼げると言ったほどではない。IBでチームのトップに立つには、経験と言う意味でもクライアントとの関係構築と言う意味でも時間がかかり、その期間に要求される仕事へのコミットメントを考えると、効率よく稼いでいるとは言えない。要するに、金だけ欲しさにやるのであれば、業界内にもっと効率の良い仕事があると言える。(もちろん応分のリスクを背負うことになり、基本的にはハイリターンになるほどハイリスクだが)
・・・とまあ、改めて考えてみるとこんな感じでしょうか。業界の方の大半は、この意見に賛成してくれると思います。(もちろん他にも何かあったらコメントください。)
それでもIBの仕事には色々魅力的な面も多く、だからこそみんな頑張って働いているわけで、その価値はボーナスといった短期的金銭的価値以上のものはあると思います。そのことについても、またそのうち書いてみたいと思います。
by harry_g
| 2005-11-26 02:45
| キャリア・仕事