2005年 11月 09日
アメリカ新聞業界の現状 |
先日大手新聞社のKnight Ridderがアクティビストファンドから事業売却のプレッシャーを受けている、との話を書きましたが、今日のLos Angeles Timesに、今回の件はジャーナリズム業界全体に影響を与える可能性がある、と言った趣旨の記事が出ていました。
興味深かったのが、業界人の代表として新聞社の元経営者が述べていたコメントです。その趣旨は、短期的利益を重視するウォールストリート(公開株の株主)による圧力によって、新聞社が更なるコスト削減を迫られた場合、取材費の削減などを通じて記事の内容にまで影響が出てくるかもしれない、というものです。その心配は十分理解出来るもので、報道機関の使命を犠牲にしてまで経済利益の追求に走ってどうする、と言う批判は、ある意味的を得ている気がします。
それに対して、ハーバード大のNieman Foundation of JournalismのBob Giles理事は、「新聞社の経営者は会社の競争力を保つために必要な変革を起こすことが出来ないでいる」とコメントしており、経営者側との見方の違いが際立っています。業界関連団体であろう同財団からそんな意見が出るのは驚きですが、新聞社は得てして保守的な経営スタイルを取ることが多いので、そんな業態であっても「経営努力を怠ってはいけない」、と諭しているのかもしれません。
根本的な問題は、やはり新聞の発行部数の落ち込みが顕著であることです。発行部数の落ち込みは、販売収入と広告収入双方の減少を招き、新聞社にとってはダブルパンチになります。業界団体は広告主に対し、発行部数だけでなく何人が実際に新聞を読んでいるかに注目して欲しい、と主張しているそうですが、そう簡単にもいかないでしょう。
アメリカには全国紙と呼べる新聞は、業界最大手Gannettが発行する「USA Today」しかなく、他は全て地元紙になりますが、Audit Bureau of Circulationsが発表したアメリカ大手新聞の発行部数(一日平均)とその減少率(前年度比)は、こんな感じです。
1. USA Today: 2,296,335 -0.59%
2. Wall Street Journal: 2,083,660 -1.1%
3. New York Times: 1,126,190 +0.46%
4. Los Angeles Times: 843,432 -3.79%
5. New York Daily News: 688,584 -3.7%
6. Washington Post: 678,779 -4.09%
7. New York Post: 662,681 -1.74%
8. Chicago Tribune: 586,122 -2.47%
9. Houston Chronicle: 521,419 -6.01%
10. Boston Globe: 414,225 -8.25%
こうやって見ると、業界がいかに厳しい状況にあるかがうかがえます。
ただ面白いことに、新聞は4大メディア(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)の中で、一番上手にニューメディア(インターネット)を活用しています。新聞をオンラインで読む人の数は飛躍的に増えており、それによってインターネット広告費や、更にはオンライン購読費は増える一方です。
そんなこともあり、新聞社はインターネット企業の買収を積極化させており、Wall Street JournalがCBS Market Watchを買収したり、New York TimesがAbout.comを買収したりしているわけです。今後もインターネットの成長が減少する出版からの利益を徐々に補っていくでしょうが、経営者には難しい経営判断が求められている気がします。
Knight Ridderに話を戻すと、LA Timesの記事の中では、同社の取るべき選択肢は、①競合他社への売却、②LBOファンドへの売却、③分割売却のどれかであろうと分析しています。
選択肢①は、要するにストラテジックバイヤーへの売却と言うことになりますが、KRIが業界第二位の規模であるため買い手の数が限られてくる上、大手GannettやTribuneも自社の新聞事業のスローダウンに苦しんでおり、実現するかは微妙です。
②については、マージンが厚く設備投資も必要ないメディア事業はLBOファンドの格好のターゲットで、BlackstoneやProvidenceと言った大手ファンドが興味を示すかもしれない、とのことです。LA Timesでは、そういった「プライベート」エクイティ投資家の方が、「パブリック」エクイティの(一般)投資家よりも、四半期ごとの業績に一喜一憂したりしないため、新聞社の再建には適しているかもしれない、と分析しています。
最後の③は、地域の新聞毎にストラテジックやフィナンシャルバイヤーに売却する方法ですが、アメリカではテレビ局やラジオ局なども、実際によくこの方法で売却・再編されており、バリュエーションによっては実現可能性はあると思われます。
どの選択肢にしろKRIの経営陣には厳しい選択となりますが、大手証券Morgan Stanleyのアナリストなどは、新聞社ほど投資家からネガティブに見られている業態も珍しく、M&A市場で自分の価値を証明できない限り株価の回復は期待できないだろう、と言った趣旨のコメントをしているようです。
何にしろ、今後も展開が注目されます。
興味深かったのが、業界人の代表として新聞社の元経営者が述べていたコメントです。その趣旨は、短期的利益を重視するウォールストリート(公開株の株主)による圧力によって、新聞社が更なるコスト削減を迫られた場合、取材費の削減などを通じて記事の内容にまで影響が出てくるかもしれない、というものです。その心配は十分理解出来るもので、報道機関の使命を犠牲にしてまで経済利益の追求に走ってどうする、と言う批判は、ある意味的を得ている気がします。それに対して、ハーバード大のNieman Foundation of JournalismのBob Giles理事は、「新聞社の経営者は会社の競争力を保つために必要な変革を起こすことが出来ないでいる」とコメントしており、経営者側との見方の違いが際立っています。業界関連団体であろう同財団からそんな意見が出るのは驚きですが、新聞社は得てして保守的な経営スタイルを取ることが多いので、そんな業態であっても「経営努力を怠ってはいけない」、と諭しているのかもしれません。
根本的な問題は、やはり新聞の発行部数の落ち込みが顕著であることです。発行部数の落ち込みは、販売収入と広告収入双方の減少を招き、新聞社にとってはダブルパンチになります。業界団体は広告主に対し、発行部数だけでなく何人が実際に新聞を読んでいるかに注目して欲しい、と主張しているそうですが、そう簡単にもいかないでしょう。
アメリカには全国紙と呼べる新聞は、業界最大手Gannettが発行する「USA Today」しかなく、他は全て地元紙になりますが、Audit Bureau of Circulationsが発表したアメリカ大手新聞の発行部数(一日平均)とその減少率(前年度比)は、こんな感じです。
1. USA Today: 2,296,335 -0.59%
2. Wall Street Journal: 2,083,660 -1.1%
3. New York Times: 1,126,190 +0.46%
4. Los Angeles Times: 843,432 -3.79%
5. New York Daily News: 688,584 -3.7%
6. Washington Post: 678,779 -4.09%
7. New York Post: 662,681 -1.74%
8. Chicago Tribune: 586,122 -2.47%
9. Houston Chronicle: 521,419 -6.01%
10. Boston Globe: 414,225 -8.25%
こうやって見ると、業界がいかに厳しい状況にあるかがうかがえます。
ただ面白いことに、新聞は4大メディア(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)の中で、一番上手にニューメディア(インターネット)を活用しています。新聞をオンラインで読む人の数は飛躍的に増えており、それによってインターネット広告費や、更にはオンライン購読費は増える一方です。
そんなこともあり、新聞社はインターネット企業の買収を積極化させており、Wall Street JournalがCBS Market Watchを買収したり、New York TimesがAbout.comを買収したりしているわけです。今後もインターネットの成長が減少する出版からの利益を徐々に補っていくでしょうが、経営者には難しい経営判断が求められている気がします。
Knight Ridderに話を戻すと、LA Timesの記事の中では、同社の取るべき選択肢は、①競合他社への売却、②LBOファンドへの売却、③分割売却のどれかであろうと分析しています。
選択肢①は、要するにストラテジックバイヤーへの売却と言うことになりますが、KRIが業界第二位の規模であるため買い手の数が限られてくる上、大手GannettやTribuneも自社の新聞事業のスローダウンに苦しんでおり、実現するかは微妙です。
②については、マージンが厚く設備投資も必要ないメディア事業はLBOファンドの格好のターゲットで、BlackstoneやProvidenceと言った大手ファンドが興味を示すかもしれない、とのことです。LA Timesでは、そういった「プライベート」エクイティ投資家の方が、「パブリック」エクイティの(一般)投資家よりも、四半期ごとの業績に一喜一憂したりしないため、新聞社の再建には適しているかもしれない、と分析しています。
最後の③は、地域の新聞毎にストラテジックやフィナンシャルバイヤーに売却する方法ですが、アメリカではテレビ局やラジオ局なども、実際によくこの方法で売却・再編されており、バリュエーションによっては実現可能性はあると思われます。
どの選択肢にしろKRIの経営陣には厳しい選択となりますが、大手証券Morgan Stanleyのアナリストなどは、新聞社ほど投資家からネガティブに見られている業態も珍しく、M&A市場で自分の価値を証明できない限り株価の回復は期待できないだろう、と言った趣旨のコメントをしているようです。
何にしろ、今後も展開が注目されます。
by harry_g
| 2005-11-09 06:48
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