2005年 11月 07日
新聞社とアクティビストファンド |
メディア企業のM&Aは単なる株主価値論だけでなく、「放送の公共性」などの話題も関連してくるため、日米比較をする上でも興味深い題材です。先週アメリカで、メディア、M&A、アクティビスト、PEと言ったタイムリーな話題を全て盛り込んだニュースがあったのでご紹介します。
FTなどの報道によると、新聞出版大手の「Knight Ridder(KRI)」が、大株主のアクティビストファンドよりM&Aによる企業売却を迫られているようです。これはノンコア資産の売却や配当金の増額といった要求レベルを超えた極めて厳しい要求で、「敵対的M&A」の一貫と言えます。

KRIは、アメリカでも代表的な新聞社です。San Joseを基盤にMiamiやPhiladelphiaを含む全米29都市で32の新聞を発行し、そのジャーナリズムの実績は、84のPulitzer賞を獲得するなど高く評価されています。アメリカではテレビやラジオのみならず、新聞などの報道機関も個別上場しているか上場しているメディア企業の傘下に入っています。株取得に関する規制は限定的なため、極端な話「誰でも」株を取得して、メディアの経営に介入できるわけです。
KRIの最大の株主で19%の持分を所有しているのが、Bruce Sherman氏が運営するアクティビストファンド、「Private Capital Management」です。同氏の名前はウォールストリートではさほど知られていませんが、同ファンドは過去にもComputer Associatesの経営陣に対して給与引き下げを要求したり、他の大手新聞社(New York Times、Gannett等)の大株主として経営陣に対して睨みを利かせたりしています。
そのPCMですが、2000年にKRIに投資して以来、株価を上げるような様々な要求を会社に突きつけて来ました。今年の7月にも、Knight Ridderの会長で創業者一族であるAnthony Ridder氏がBruce Sherman氏を招いて話し合いをした結果、配当金を増やし、自社株買いを行い、更にはDetroitとFloridaの新聞を売却したりしました。要するに経営者は、大株主であるPCMの要求に応えて、様々な手立てを打ったわけですが、それでも株価は回復せず、7月から実に14%も下落していました。
株価が軟調な理由には、新聞業界の苦しい事情があります。読者や広告主は急速にインターネットに奪われており、原油価格や紙の価格の高騰も、印刷コストを高めて思いっきり経営を圧迫しています。そんなこともあり、各社ともリストラなど大変な努力をしているにも関わらず、株価がなかなか回復しないのが現状です。
その状況に耐えられなくなったのか、報道によると、Bruce Sherman氏は取締役会に充てた手紙の中で次のような要求を突き付けたそうです。
「Knight Ridder社の株価と潜在価値は、長期に渡って大きく乖離したままである。(中略)同社取締役は、同社をストラテジックバイヤーまたはファイナンシャルバイヤーに、オークション形式で売却すべきである。その行動が取られない場合、取締役解任動議を含めた厳しい対応を取る準備がある」
つまりこのまま上場していても、一般株主が認めるKRIの価値は同社の「本当の」価値に比べて低いままであろう。それなら事業全体を誰かに売却して本当の価値を具現化して欲しい。買い手には業務拡大を図る他のメディア企業や、新聞業界の比較的安定したキャッシュフローに魅力を感じるPEファンドがいるだろう。売却すればプレミアムが実現し、株価は大幅に上昇するだろう、と言うことです。PCMはこの手紙の中で、経営者がいかにそう言った「株主価値最大化」の努力を怠っているかについても批判しているようです。
確かに、ストラテジックバイヤー(競合他社や他メディア企業)に売却すれば、買い手と事業統合した上で適切なリストラを行い、事業の継続発展と株価の上昇が期待できます。またPEファンドが買えば、会社のキャッシュフローを最大化するために、別の経営者を連れてきて事業の建て直しをするでしょうから、事業は安泰でしょう。
そんな理由もあってか、このようにメディアが敵対的M&Aのターゲットになっていても、本件に関して「公共のメディアをマネーゲームに使うな」、「現経営陣を追放していい新聞が作れるか」などと言った批判報道は一切聞かれません。この件はアメリカ型資本主義の極端な例かもしれませんが、アメリカの経営者は、株主の短~中期的利益と企業の長期的成長の両立という、難しい舵取りを迫られていると言えます。(だからこそ何億円と言う給料をもらっているのでしょうが。)
ちなみにPCMの要求後、Knight Ridderの株価は8%値上りし、一日後には9.8%を所有するSoutheastern Asset Managementと8.2%を所有するHarris Associatesも、PCMの主張する事業売却に賛同する意を表明したことで、株価は15%まで値上りしたことを付け加えておきます。(業界ではこの株はすっかり「ヘッジファンドプレイ」になっている、と言われているようです。)
FTなどの報道によると、新聞出版大手の「Knight Ridder(KRI)」が、大株主のアクティビストファンドよりM&Aによる企業売却を迫られているようです。これはノンコア資産の売却や配当金の増額といった要求レベルを超えた極めて厳しい要求で、「敵対的M&A」の一貫と言えます。

KRIの最大の株主で19%の持分を所有しているのが、Bruce Sherman氏が運営するアクティビストファンド、「Private Capital Management」です。同氏の名前はウォールストリートではさほど知られていませんが、同ファンドは過去にもComputer Associatesの経営陣に対して給与引き下げを要求したり、他の大手新聞社(New York Times、Gannett等)の大株主として経営陣に対して睨みを利かせたりしています。
そのPCMですが、2000年にKRIに投資して以来、株価を上げるような様々な要求を会社に突きつけて来ました。今年の7月にも、Knight Ridderの会長で創業者一族であるAnthony Ridder氏がBruce Sherman氏を招いて話し合いをした結果、配当金を増やし、自社株買いを行い、更にはDetroitとFloridaの新聞を売却したりしました。要するに経営者は、大株主であるPCMの要求に応えて、様々な手立てを打ったわけですが、それでも株価は回復せず、7月から実に14%も下落していました。
株価が軟調な理由には、新聞業界の苦しい事情があります。読者や広告主は急速にインターネットに奪われており、原油価格や紙の価格の高騰も、印刷コストを高めて思いっきり経営を圧迫しています。そんなこともあり、各社ともリストラなど大変な努力をしているにも関わらず、株価がなかなか回復しないのが現状です。
その状況に耐えられなくなったのか、報道によると、Bruce Sherman氏は取締役会に充てた手紙の中で次のような要求を突き付けたそうです。
「Knight Ridder社の株価と潜在価値は、長期に渡って大きく乖離したままである。(中略)同社取締役は、同社をストラテジックバイヤーまたはファイナンシャルバイヤーに、オークション形式で売却すべきである。その行動が取られない場合、取締役解任動議を含めた厳しい対応を取る準備がある」
つまりこのまま上場していても、一般株主が認めるKRIの価値は同社の「本当の」価値に比べて低いままであろう。それなら事業全体を誰かに売却して本当の価値を具現化して欲しい。買い手には業務拡大を図る他のメディア企業や、新聞業界の比較的安定したキャッシュフローに魅力を感じるPEファンドがいるだろう。売却すればプレミアムが実現し、株価は大幅に上昇するだろう、と言うことです。PCMはこの手紙の中で、経営者がいかにそう言った「株主価値最大化」の努力を怠っているかについても批判しているようです。
確かに、ストラテジックバイヤー(競合他社や他メディア企業)に売却すれば、買い手と事業統合した上で適切なリストラを行い、事業の継続発展と株価の上昇が期待できます。またPEファンドが買えば、会社のキャッシュフローを最大化するために、別の経営者を連れてきて事業の建て直しをするでしょうから、事業は安泰でしょう。
そんな理由もあってか、このようにメディアが敵対的M&Aのターゲットになっていても、本件に関して「公共のメディアをマネーゲームに使うな」、「現経営陣を追放していい新聞が作れるか」などと言った批判報道は一切聞かれません。この件はアメリカ型資本主義の極端な例かもしれませんが、アメリカの経営者は、株主の短~中期的利益と企業の長期的成長の両立という、難しい舵取りを迫られていると言えます。(だからこそ何億円と言う給料をもらっているのでしょうが。)
ちなみにPCMの要求後、Knight Ridderの株価は8%値上りし、一日後には9.8%を所有するSoutheastern Asset Managementと8.2%を所有するHarris Associatesも、PCMの主張する事業売却に賛同する意を表明したことで、株価は15%まで値上りしたことを付け加えておきます。(業界ではこの株はすっかり「ヘッジファンドプレイ」になっている、と言われているようです。)
by harry_g
| 2005-11-07 09:26
| 株主経営・アクティビスト


