2005年 11月 04日
株主は「よそ者」? |
前回のブログの続きになりますが、日本で株主利益が軽視される傾向にあるのは、株主=「よそ者」との認識があるせいかもしれません。
企業経営について語る際に、日本では、「ステークホルダー」の利益を重視すべきだと言う話をよく聞きます。これは、経営をする際には「シェアホルダー」(株主)に限らず、顧客、従業員のほか、取引先、金融機関、政府など、会社の利害関係者(=ステークホルダー)全般の利益を考えるべき、との考え方です。株主価値を重視するアメリカの考え方と異なりますが、アメリカだけが正しいわけではなく、日本にあった考え方として良いものだと思います。
ただ、ステークホルダーには「株主」も含まれているはずのに、経営者がその利益を重視するような行動(ノンコア資産の売却など)を取ったり、「物を言う株主」が経営に口出ししたりすると、突然「欧米型資本主義」やら「儲け至上主義」やらと言われて、批判されてしまいます。そして株主の代理人であるはずの取締役会も、実態は社員の延長で経営者も兼ねている事が多いため、結局どうしても社員寄りの経営判断がされがちです。
要するに率直に言うと、「社員=身内、株主=よそ者」なので、「社員の利益>株主の利益」と言うことなのでしょう。日本株の株主の大半が、持ち合いの相手だったり、基本的にはサイレント・シェアホルダーだったことも、ますます「よそ者」感を助長したのかもしれません。
しかしだとすると、一体誰が一般株主の利益を守ってくれるのでしょうか?そもそも株主は、「単なるマネーゲームのプレーヤー」で、「よそ者」として軽視してよい存在なのでしょうか?
上場企業にとって一般株主は、親会社や創業者一族と比べると「顔の見えない存在」かもしれません。でも実態は、そんな株主でも、社員同様の「利害関係者」として、ある意味運命を会社と共有しています。例えば個人投資家であれば、一生懸命働いて稼いだお金をリスクにさらしているわけですし、資産運用を仕事とする機関投資家は、それこそ日本やアメリカの何千万人といった人々の、大切な生命保険や年金資金を預かって運用しているわけです。そういった人達は、会社の経営者を信頼し、会社の成長性を信じて、リスク性(非元本保証型)の商品である株式に投資しているわけです。
ちょっと古いデータですが、90年代前半と00年代前半で、日本株の保有比率はこんな感じで変わって来ています。
個人 21%→20% (横ばい)
事業法人 30%→18%
銀行・信託 20%→13% (持ち合い株が大幅に減少)
生保会社 12%→7% (持ち合い株が大幅に減少)
投信・年金 4%→15% (躍進)
外国人 6%→25% (躍進)
その他 7%→2%
このデータを見ると、外国人と投信・年金を合わせた機関投資家の合計は、10年前の10%前後から、40%近くまで上がっていることがわかります。個人や銀行・信託の持分も、半分くらいは投資目的であろうと推測すると、株価の上昇に大変関心のある株主は、実に60%近くいることになります。このような株主層の変化には90年代の「金融ビッグバン」も大きく関係しているわけですが、そういった現実の変化や、国民の大切な資産の一部が株で運用されていると言う事の重要性が、上場企業の経営者にあまり理解されていないのかもしれません。
他にも日本において株主経営の浸透を阻害する要因として、
◆ 経営者や社員に株価向上の金銭的・社会的インセンティブが無いこと
◆ 業績が悪化して株主利益と社員利益が相反した場合、社員のリストラや経営陣のすげ替えが出来るような労働市場の流動性が無いこと
◆ 「恥」と「年功」の儒教文化であり、先人のやったことを改定するのは困難なこと
◆ 金儲けを存在目的とする投資家を「卑しい」存在だと考える向きがあること
などもあるかもしれません。労働市場の問題やすぐには解消しないでしょうが、インセンティブや感情論などは、例えばボーナスの一部を自社株にすることで、社員と株主の利害を一致させるなどの手法がとられてもよい気がします。また、最近流行りの「敵対的買収」から会社を守るためにも、「株価の向上」は極めて有効です。しっかりとした経営をしていれば、企業の「価格」は上昇し、乗っ取り屋が持分を敵対的に取得したり、そもそも株の売り手を探すのは困難になります。
何だか脇道にそれてしまいましたが、ともかく株主は、決して軽視してよい「よそ者」ではなく、会社と利害を共有する大切な「ステークホルダー」であり、株主経営をすることは長期的には国全体の活性化や将来不安の軽減につながるという認識を、経営者はもっと持って良い気がします。皆さんに書き込み頂いたように、徐々に時代は変わって来ているようなので、今後が楽しみです。
・・・自分の考えばかり述べていても何なので、今度アメリカでの敵対的買収の現状や、アクティビストの活動について、もう少し書いてみたいと思います。
企業経営について語る際に、日本では、「ステークホルダー」の利益を重視すべきだと言う話をよく聞きます。これは、経営をする際には「シェアホルダー」(株主)に限らず、顧客、従業員のほか、取引先、金融機関、政府など、会社の利害関係者(=ステークホルダー)全般の利益を考えるべき、との考え方です。株主価値を重視するアメリカの考え方と異なりますが、アメリカだけが正しいわけではなく、日本にあった考え方として良いものだと思います。
ただ、ステークホルダーには「株主」も含まれているはずのに、経営者がその利益を重視するような行動(ノンコア資産の売却など)を取ったり、「物を言う株主」が経営に口出ししたりすると、突然「欧米型資本主義」やら「儲け至上主義」やらと言われて、批判されてしまいます。そして株主の代理人であるはずの取締役会も、実態は社員の延長で経営者も兼ねている事が多いため、結局どうしても社員寄りの経営判断がされがちです。要するに率直に言うと、「社員=身内、株主=よそ者」なので、「社員の利益>株主の利益」と言うことなのでしょう。日本株の株主の大半が、持ち合いの相手だったり、基本的にはサイレント・シェアホルダーだったことも、ますます「よそ者」感を助長したのかもしれません。
しかしだとすると、一体誰が一般株主の利益を守ってくれるのでしょうか?そもそも株主は、「単なるマネーゲームのプレーヤー」で、「よそ者」として軽視してよい存在なのでしょうか?
上場企業にとって一般株主は、親会社や創業者一族と比べると「顔の見えない存在」かもしれません。でも実態は、そんな株主でも、社員同様の「利害関係者」として、ある意味運命を会社と共有しています。例えば個人投資家であれば、一生懸命働いて稼いだお金をリスクにさらしているわけですし、資産運用を仕事とする機関投資家は、それこそ日本やアメリカの何千万人といった人々の、大切な生命保険や年金資金を預かって運用しているわけです。そういった人達は、会社の経営者を信頼し、会社の成長性を信じて、リスク性(非元本保証型)の商品である株式に投資しているわけです。
ちょっと古いデータですが、90年代前半と00年代前半で、日本株の保有比率はこんな感じで変わって来ています。
個人 21%→20% (横ばい)
事業法人 30%→18%
銀行・信託 20%→13% (持ち合い株が大幅に減少)
生保会社 12%→7% (持ち合い株が大幅に減少)
投信・年金 4%→15% (躍進)
外国人 6%→25% (躍進)
その他 7%→2%
このデータを見ると、外国人と投信・年金を合わせた機関投資家の合計は、10年前の10%前後から、40%近くまで上がっていることがわかります。個人や銀行・信託の持分も、半分くらいは投資目的であろうと推測すると、株価の上昇に大変関心のある株主は、実に60%近くいることになります。このような株主層の変化には90年代の「金融ビッグバン」も大きく関係しているわけですが、そういった現実の変化や、国民の大切な資産の一部が株で運用されていると言う事の重要性が、上場企業の経営者にあまり理解されていないのかもしれません。
他にも日本において株主経営の浸透を阻害する要因として、
◆ 経営者や社員に株価向上の金銭的・社会的インセンティブが無いこと
◆ 業績が悪化して株主利益と社員利益が相反した場合、社員のリストラや経営陣のすげ替えが出来るような労働市場の流動性が無いこと
◆ 「恥」と「年功」の儒教文化であり、先人のやったことを改定するのは困難なこと
◆ 金儲けを存在目的とする投資家を「卑しい」存在だと考える向きがあること
などもあるかもしれません。労働市場の問題やすぐには解消しないでしょうが、インセンティブや感情論などは、例えばボーナスの一部を自社株にすることで、社員と株主の利害を一致させるなどの手法がとられてもよい気がします。また、最近流行りの「敵対的買収」から会社を守るためにも、「株価の向上」は極めて有効です。しっかりとした経営をしていれば、企業の「価格」は上昇し、乗っ取り屋が持分を敵対的に取得したり、そもそも株の売り手を探すのは困難になります。
何だか脇道にそれてしまいましたが、ともかく株主は、決して軽視してよい「よそ者」ではなく、会社と利害を共有する大切な「ステークホルダー」であり、株主経営をすることは長期的には国全体の活性化や将来不安の軽減につながるという認識を、経営者はもっと持って良い気がします。皆さんに書き込み頂いたように、徐々に時代は変わって来ているようなので、今後が楽しみです。
・・・自分の考えばかり述べていても何なので、今度アメリカでの敵対的買収の現状や、アクティビストの活動について、もう少し書いてみたいと思います。
by harry_g
| 2005-11-04 11:33
| 株主経営・アクティビスト


