2005年 10月 22日
ウォールストリート変革の波 |
ウォールストリートは実に変化のスピードの速い業界ですが、今日もまた業界構造を変えそうな「変革」が起こりました。ちょっとマニアックな話ですが、業界の特徴が良く分かる話なので取り上げてみます。
本日付のFinancial Timesによると、世界最大の資産運用会社で運用資産総額$1.1 Trillion(約127兆円)を誇るFidelityが、株式売買コミッションの支払いを、「純粋な売買手数料」と「リサーチレポートへの対価」とに分割することで、Lehman Brothersと合意したそうです。
投資銀行は、投資家から売買コミッションを受け取る代わりに、リサーチ(株式調査)レポートを投資家サービスの一環として、無料で提供しています。正確には、売買コミッションに調査費が上乗せされていることになりますが、FidelityとLehmanの動きは、こういった業界慣行を打ち破ることになります。
今回の合意は、業界全体にはどんなインパクトを与えるのでしょうか?
資産運用業界(バイサイド)
今回の話を資産運用会社の立場から見てみると、今後必要のないリサーチにお金を払わなくて済むことになるため、売買手数料を節約出来るメリットがあります。大手の運用会社やヘッジファンドは、有力なセルサイド・アナリストの意見を反映するマーケットの動きに勝つために、自社でリサーチ部隊を抱えています。よって売買相手として幅広い証券会社と付き合っても、リサーチの提供先は数社で十分、と言う判断が働くものと思われます。
また、運用会社にお金を託している投資家(=つまり我々個人)にとっても、運用会社に払っている手数料の使途が明朗になるメリットがあります。「投資家保護」の為に存在する欧米の証券規制当局(SECなど)は、以前より資産運用会社に証券会社に支払うコミッションの内容の明朗化を求めており、今回の動きはその要求に対応する意味もあるわけです。
と、多くの「正当な理由」に固められているように見える今回の動きですが、小さい運用会社にとっては、リサーチ費用を別途証券会社に払うことは容易ではなく、ある意味「弱者の締め出し」につながりかねません。その意味では、今後の動向が注目されます。
投資銀行(セルサイド)
投資銀行(セルサイド)にとって今回の動きは、売買コミッションの低下と、テックバブル後に収益力が低下している調査部門の更なる縮小につながりかねない、大変危険なニュースです。もちろん、いいリサーチを提供していれば投資家からフィーが取れるわけですし、今までも売買量を増やすためにはリサーチも含めた総合サービスを投資家に提供することが重要だったわけですが、今後はそこから「曖昧さ」が排除されることになります。
ではLehman Brothersは、「既得権益の損失」につながるような要求をなぜ受け入れたのでしょうか?
Lehmanは、Morgan StanleyやGoldman Sachsと比べるとアメリカではどうしても「ボンドハウス」のイメージがあります。ですが実際には、業界紙「Institutional Investors」が投資家へのアンケートを元にまとめる業界ランキングにおいて、「株式セールス」、「株式トレーディング」、「株式リサーチ」のすべての分野でNo.1にランクされるなど、エクイティ・パワーハウスとしての地位を確立しつつあります。また、「Euromoney」誌から『Best Investment Bank』に選ばれた事に象徴されるように、今業界で最も勢いのある会社として認知されています。
そんなLehmanにとって、今回のコミッション分割の動きが他の投資家にも広まれば、リサーチランキングの低い投資銀行から顧客を奪えるチャンスが増え、競合他社との差別化が図れると言う狙いがあるものと思われます。もちろん業界の一員として自分の首を絞める可能性もありますが、それは経営上のリスク判断なのでしょう。
・・・この話に象徴されるように、ウォールストリートは常に効率化や競争力の強化を追求し、どんどん変容して行きます。それは変化の激しいマーケットに対応を迫られるからなのかもしれませんが、業界では「今日の常識は3ヶ月で非常識になる」などと言われます。
その意味で、中にいる方は大変ですが、新しい事が常に起こっている環境と言うのは魅力的ではあります。また、今回の件のように、新たなチャレンジや既得権益の損失を恐れないウォールストリートの経営者のフロンティアスピリットには、本当に頭が下がります。
しかし、この新しいアイデアをどんどん受け入れるメンタリティ、「アメリカならでは」なのでしょうか。。。
本日付のFinancial Timesによると、世界最大の資産運用会社で運用資産総額$1.1 Trillion(約127兆円)を誇るFidelityが、株式売買コミッションの支払いを、「純粋な売買手数料」と「リサーチレポートへの対価」とに分割することで、Lehman Brothersと合意したそうです。投資銀行は、投資家から売買コミッションを受け取る代わりに、リサーチ(株式調査)レポートを投資家サービスの一環として、無料で提供しています。正確には、売買コミッションに調査費が上乗せされていることになりますが、FidelityとLehmanの動きは、こういった業界慣行を打ち破ることになります。
今回の合意は、業界全体にはどんなインパクトを与えるのでしょうか?
資産運用業界(バイサイド)
今回の話を資産運用会社の立場から見てみると、今後必要のないリサーチにお金を払わなくて済むことになるため、売買手数料を節約出来るメリットがあります。大手の運用会社やヘッジファンドは、有力なセルサイド・アナリストの意見を反映するマーケットの動きに勝つために、自社でリサーチ部隊を抱えています。よって売買相手として幅広い証券会社と付き合っても、リサーチの提供先は数社で十分、と言う判断が働くものと思われます。
また、運用会社にお金を託している投資家(=つまり我々個人)にとっても、運用会社に払っている手数料の使途が明朗になるメリットがあります。「投資家保護」の為に存在する欧米の証券規制当局(SECなど)は、以前より資産運用会社に証券会社に支払うコミッションの内容の明朗化を求めており、今回の動きはその要求に対応する意味もあるわけです。
と、多くの「正当な理由」に固められているように見える今回の動きですが、小さい運用会社にとっては、リサーチ費用を別途証券会社に払うことは容易ではなく、ある意味「弱者の締め出し」につながりかねません。その意味では、今後の動向が注目されます。
投資銀行(セルサイド)
投資銀行(セルサイド)にとって今回の動きは、売買コミッションの低下と、テックバブル後に収益力が低下している調査部門の更なる縮小につながりかねない、大変危険なニュースです。もちろん、いいリサーチを提供していれば投資家からフィーが取れるわけですし、今までも売買量を増やすためにはリサーチも含めた総合サービスを投資家に提供することが重要だったわけですが、今後はそこから「曖昧さ」が排除されることになります。
ではLehman Brothersは、「既得権益の損失」につながるような要求をなぜ受け入れたのでしょうか?
Lehmanは、Morgan StanleyやGoldman Sachsと比べるとアメリカではどうしても「ボンドハウス」のイメージがあります。ですが実際には、業界紙「Institutional Investors」が投資家へのアンケートを元にまとめる業界ランキングにおいて、「株式セールス」、「株式トレーディング」、「株式リサーチ」のすべての分野でNo.1にランクされるなど、エクイティ・パワーハウスとしての地位を確立しつつあります。また、「Euromoney」誌から『Best Investment Bank』に選ばれた事に象徴されるように、今業界で最も勢いのある会社として認知されています。
そんなLehmanにとって、今回のコミッション分割の動きが他の投資家にも広まれば、リサーチランキングの低い投資銀行から顧客を奪えるチャンスが増え、競合他社との差別化が図れると言う狙いがあるものと思われます。もちろん業界の一員として自分の首を絞める可能性もありますが、それは経営上のリスク判断なのでしょう。・・・この話に象徴されるように、ウォールストリートは常に効率化や競争力の強化を追求し、どんどん変容して行きます。それは変化の激しいマーケットに対応を迫られるからなのかもしれませんが、業界では「今日の常識は3ヶ月で非常識になる」などと言われます。
その意味で、中にいる方は大変ですが、新しい事が常に起こっている環境と言うのは魅力的ではあります。また、今回の件のように、新たなチャレンジや既得権益の損失を恐れないウォールストリートの経営者のフロンティアスピリットには、本当に頭が下がります。
しかし、この新しいアイデアをどんどん受け入れるメンタリティ、「アメリカならでは」なのでしょうか。。。
by harry_g
| 2005-10-22 09:19
| 投資銀行


