2005年 10月 20日
ヘッジファンド vs. 経営者 |
ライブドアや村上ファンドに加えて楽天までもが大手企業の敵対的買収(Unsolicited bid)に乗り出すとは、日本もずいぶん変わって来ましたね。
アメリカでは、インターネットの広告媒体としての価値は急速に確立しつつありますが、映像コンテンツの製作は今でも「ハリウッド」が牛耳っています。そして日本では、テレビ局が間違いなく「日本版ハリウッド」です。そんな事実もあり、インターネット企業が高いバリュエーションを利用して効率的にエクイティファイナンスを行い、「リアルアセット」の買収を進めたい気持ちはよく理解できます。
最近のアメリカのアクティビスト・ヘッジファンドの動きも、広義の「敵対的買収」と言えそうです。先日のウォールストリートジャーナルにも、ハーバードビジネススクール(HBS)でファイナンスを教えるランディ・コーエン教授が、最近のヘッジファンドの動きを「敵対的買収のミニチュア版だ」と呼んだと言う記事が載っていました。
ところで、「敵対的」とは誰に対して「敵対的」なのでしょうか?ライブドアの案件後に、日本ではこの事が散々議論されたと聞きますが、最近の報道を見ていると、今でも日本では、会社を構成する社員全員に対する裏切り行為のように考えられているようです。
それに対してアメリカでは、敵対的買収は「経営陣」に対して敵対的、と言う理解が浸透しています。(そもそも社員が会社と運命を共にするような立場にないと言うこともありますが。)
9月28日のブログ「メディアの乗っ取り屋?それとも解放者?」でも書いたCarl Icahn氏のファンドに代表されるアクティビストファンドは、企業の少数持分を市場を通じて買収することで、会社の「経営陣」に対して様々な要求をしています。その要求には、「ノンコア部門の売却」、「配当金や自社株買いの増加」、「不採算なM&Aへの反対」など色々ありますが、共通しているのは、「資産の有効活用による株主価値の向上」を求めている点です。
その背景には、企業が抱える現金残高が史上最高レベルに達しているという事実があります。
上記のWSJの記事によると、S&P 500 Industrials指標を構成する金融機関を除くアメリカの大企業の現金保有残高は$613bn(約70.5兆円)、長期負債に対する現金比率は40%と、史上最高の水準に達しているそうです。
コーポレートファイナンスの理論では、企業は運転資本以外の余剰資金を、株主価値を向上させるような投資(設備投資なりM&Aなり)に充てるべきであり、その為の資金は、資本コストが最適化されるまで負債で調達すべきである、と言う考え方があります。詳しくは書きませんが、資金調達手段として、デット(借金)とエクイティ(投下資本)を比べた時に、エクイティ投資家(株主)による期待リターンの方が、デット投資家(銀行・社債投資家など)の要求する金利よりも高いため、ギリギリまで負債比率を高めた方が、会社の資金調達コストは低くなるからです。
それに対して会社の経営陣には、ある程度の現金資産をキープしたいと言うインセンティブが働きます。景気が後退した際には借りたいお金も借りられなくなるし、いざ設備投資やM&Aをしたい時に資金を取っておきたいし、何より現金が「カツカツ」の状態で会社を経営するのは難しいからです。1990年代後半の活発なM&Aの結果過剰なレバレッジに苦しんだ経営者には、「また同じ事を繰り返せと言うのか」と言う思いもあるようです。
とは言え、やはり過剰な現金や借入れ余力は経営者を不必要なM&Aや非効率な経営、ひいては「怠慢経営」に導き、株主としては何のメリットもありません。エクイティ投資家は高いリスクを取って自分のお金を会社に「託して」いるわけで、そのお金で何もしないなら配当金や自社株買いの形で返済しろ、と言う要求につながるわけです。
例のWSJの記事では、その事を以下のように書いていました。(以下抄訳)
“かわいそうに、哀れなCEO達は、コーポレートジェットをリムジン代わりにしてゴルフ場に行く変わりに、稼ぎを維持するために一生懸命働くことになる。それでも「(ヘッジファンドと経営陣の)どちらかの肩を持つとしたら、私はヘッジファンド側につくね。アメリカのCEOはものすごい給料をもらっているが、みんながみんな天才、無私、勤労と言うわけじゃない。彼らの行動を監視出来るような事は、何でもいいことだよ」(HBSのコーエン教授談)”
・・・確かに何億、何十億円という報酬をもらっているアメリカのエグゼクティブには、当然の仕打ち(?)かもしれませんね。
そう考えると、会社にある意味「一生を捧げて」いる日本の経営者に対しては同じ理論が当てはめられるのか、とも考えさせられます。もちろん株主の利益が大切なのは言うまでもありませんが、株主からの要求に応えることが自分の仕事と思っている経営者はどれくらいいるのでしょうか。
そんなこんなで、日本でのアクティビストファンドの今後には注目しています。ぜひご意見をお聞かせ下さい。
アメリカでは、インターネットの広告媒体としての価値は急速に確立しつつありますが、映像コンテンツの製作は今でも「ハリウッド」が牛耳っています。そして日本では、テレビ局が間違いなく「日本版ハリウッド」です。そんな事実もあり、インターネット企業が高いバリュエーションを利用して効率的にエクイティファイナンスを行い、「リアルアセット」の買収を進めたい気持ちはよく理解できます。
最近のアメリカのアクティビスト・ヘッジファンドの動きも、広義の「敵対的買収」と言えそうです。先日のウォールストリートジャーナルにも、ハーバードビジネススクール(HBS)でファイナンスを教えるランディ・コーエン教授が、最近のヘッジファンドの動きを「敵対的買収のミニチュア版だ」と呼んだと言う記事が載っていました。ところで、「敵対的」とは誰に対して「敵対的」なのでしょうか?ライブドアの案件後に、日本ではこの事が散々議論されたと聞きますが、最近の報道を見ていると、今でも日本では、会社を構成する社員全員に対する裏切り行為のように考えられているようです。
それに対してアメリカでは、敵対的買収は「経営陣」に対して敵対的、と言う理解が浸透しています。(そもそも社員が会社と運命を共にするような立場にないと言うこともありますが。)
9月28日のブログ「メディアの乗っ取り屋?それとも解放者?」でも書いたCarl Icahn氏のファンドに代表されるアクティビストファンドは、企業の少数持分を市場を通じて買収することで、会社の「経営陣」に対して様々な要求をしています。その要求には、「ノンコア部門の売却」、「配当金や自社株買いの増加」、「不採算なM&Aへの反対」など色々ありますが、共通しているのは、「資産の有効活用による株主価値の向上」を求めている点です。
その背景には、企業が抱える現金残高が史上最高レベルに達しているという事実があります。
上記のWSJの記事によると、S&P 500 Industrials指標を構成する金融機関を除くアメリカの大企業の現金保有残高は$613bn(約70.5兆円)、長期負債に対する現金比率は40%と、史上最高の水準に達しているそうです。
コーポレートファイナンスの理論では、企業は運転資本以外の余剰資金を、株主価値を向上させるような投資(設備投資なりM&Aなり)に充てるべきであり、その為の資金は、資本コストが最適化されるまで負債で調達すべきである、と言う考え方があります。詳しくは書きませんが、資金調達手段として、デット(借金)とエクイティ(投下資本)を比べた時に、エクイティ投資家(株主)による期待リターンの方が、デット投資家(銀行・社債投資家など)の要求する金利よりも高いため、ギリギリまで負債比率を高めた方が、会社の資金調達コストは低くなるからです。
それに対して会社の経営陣には、ある程度の現金資産をキープしたいと言うインセンティブが働きます。景気が後退した際には借りたいお金も借りられなくなるし、いざ設備投資やM&Aをしたい時に資金を取っておきたいし、何より現金が「カツカツ」の状態で会社を経営するのは難しいからです。1990年代後半の活発なM&Aの結果過剰なレバレッジに苦しんだ経営者には、「また同じ事を繰り返せと言うのか」と言う思いもあるようです。
とは言え、やはり過剰な現金や借入れ余力は経営者を不必要なM&Aや非効率な経営、ひいては「怠慢経営」に導き、株主としては何のメリットもありません。エクイティ投資家は高いリスクを取って自分のお金を会社に「託して」いるわけで、そのお金で何もしないなら配当金や自社株買いの形で返済しろ、と言う要求につながるわけです。
例のWSJの記事では、その事を以下のように書いていました。(以下抄訳)
“かわいそうに、哀れなCEO達は、コーポレートジェットをリムジン代わりにしてゴルフ場に行く変わりに、稼ぎを維持するために一生懸命働くことになる。それでも「(ヘッジファンドと経営陣の)どちらかの肩を持つとしたら、私はヘッジファンド側につくね。アメリカのCEOはものすごい給料をもらっているが、みんながみんな天才、無私、勤労と言うわけじゃない。彼らの行動を監視出来るような事は、何でもいいことだよ」(HBSのコーエン教授談)”
・・・確かに何億、何十億円という報酬をもらっているアメリカのエグゼクティブには、当然の仕打ち(?)かもしれませんね。
そう考えると、会社にある意味「一生を捧げて」いる日本の経営者に対しては同じ理論が当てはめられるのか、とも考えさせられます。もちろん株主の利益が大切なのは言うまでもありませんが、株主からの要求に応えることが自分の仕事と思っている経営者はどれくらいいるのでしょうか。
そんなこんなで、日本でのアクティビストファンドの今後には注目しています。ぜひご意見をお聞かせ下さい。
by harry_g
| 2005-10-20 02:27
| 株主経営・アクティビスト


