2011年 02月 28日
オマハの賢人の楽観論 |
最近アメリカの機関投資家の間では、米国景気見通しの楽観論が、大いな広がりをみせているように感じます。ここ数年世界経済を牽引して来た途上国が、食料インフレで苦しむ中、着実に利益成長を遂げるアメリカ企業を目の当たりにし、「足元に魅力的な投資機会があるのだから、わざわざリスクを取って海外に投資する必要はない」と言った声まで聞かれます。
このようなアメリカ経済への楽観論を持っている代表的人物として、Warren Buffett氏(80)がいます。
「オマハの賢人」として知られる同氏は、ファンダメンタルズ株式投資家として、現世で最も著名で且つ経済的に成功している人物であることは、今更言うまでもないと思います。そんな同氏が、世界が大いなる不確実性に満ちているように感じられる今日、どんな楽観論を持っているのか、取り上げてみたいと思います。
Buffett氏率いるBerkshire Hathaway社は、保険会社を中心としたコングロマリット投資会社です。同氏はかつて、自分は株式投資(企業投資)が大好きであり、それを生涯の生業にするために、自動的に投資資金が集まる仕組みを考えた。それが保険会社である、と言った趣旨のことを述べていたそうです。
Berkshire社は、毎年決算発表期に合せて、大々的に株主総会を開催することで知られています。この時期になると、アメリカの小地方都市であるオマハには、株式投資の「神」の声を直接聞こうと、多くの投資家が足を運びます。その模様は「ロックコンサートのようだ」と言われ、Buffett氏が、ファン(株主)から発せられる無数の質問にもしっかりと答える様子は、しばしば金融メディアの注目を集めます。
また同氏は、株主総会に足を運べない多くの人のために、自身の投資についての考え方について、毎年投資家レターの中で開示しています。アメリカの投資業界では、「このレターを読むことは、(ファンダメンタルズ戦略の)投資家の義務である」と言われるほどで、このレターを何年分も集めて、それを題材にした投資指南の本まで出版されています。
2010年度を振り返った投資家レターの中で、Buffett氏が、アメリカ経済について強気の見通しを示したという話が、週末の主要経済メディアによって、一斉に報道されました。同氏は2010年度から、アメリカ経済に対する強気の発言を繰り返していましたが、今回はそれを再確認する機会となりました。
イギリスの主要経済紙Financial Timesの「Optimistic Buffett on lookout for acquisitions(楽観的Buffett氏、買収の機会を探る)」では、「(世界の)資金は常に投資機会に向かって流れ、アメリカにはそれが豊富にある」という同氏の言葉が紹介され、2011年のBerkshire投資額が、昨年の$6bn(約4800億円)から$8bn(約6400億円)に3割超増額される予定だと書かれていました。その増額分の全額が、アメリカに投資される予定だそうです。
またアメリカのWall Street Journalも、「Berkshire's Buffett Eyes More Major Deals as Earnings Surge (利益が上昇、Buffett氏買収機会を狙う)」の中で、61%という高い利益成長を遂げたBerkshireが、2010年のハイライトを約$27bn(約2.2兆円)で買収した鉄道大手Burlington Northern(BNSF)だったとした上で、2011年にはより多くの大型案件を狙っている、とのBuffett氏の発言を紹介していました。
FTはまた、Buffett氏が、アメリカの住宅市場の回復が「1年かそこら以内に始まるだろう」とし、「いずれにせよ、いつか回復する事は間違いない。(中略)現在のような魅力的な価格と低金利環境では、多くのアメリカ人にとって、住宅を保有することがメイクセンスするからだ」と述べたことも、紹介しています。これは、住宅市場に最も影響を与えると言われる失業率が高止まりし、「Jobless Recovery」が懸念される中においては、かなりの楽観論と言えるかもしれません。
もちろんウォールストリートには、アメリカ経済についての悲観的な見方も、多く存在します。例えば、Economistの2月26日号の「Japanese Banks – Back from the dead(邦銀、死からの生還)」の中で同誌は、日本の銀行が20年もの停滞に苦しんでいる中、欧米の銀行は、最初の10年を回避するための適切な措置、つまり迅速な不良債権処理を行ったが、次の10年がばら色の成長を遂げると考えるのは時期尚早である、と指摘しています。
その理由としては、民間部門(企業・家計)がデレバレッジング、つまり、今までに借りすぎていた借金を返済することにお金を使ってしまうことで、投資や消費にお金が回らずに、経済が活性化しない状態を続ければ、低金利環境も相当期間続くことになる。そうなると銀行セクターは、大幅なコスト削減無しには、大きな利益成長を達成するのは難しい、と書いています。
現在の欧米の不況の原因が、民間部門によるデレバレッジングだと考えるならば、これはまさに、日本がバブル経済破綻後に経験した「バランスシート不況」であり、いくらお金をばら撒こうとも、そのお金がどこかに消えていってしまう(借金返済にまわされてしまう)、非常に難しい不況、と言うことが出来ます。(これは2010年10月のエントリーで書いた通りです。)
しかし、Buffett氏に代表される株式投資家は、足元の景況感よりも、将来の期待値に基づいて投資決定を行うため、米国経済が、今後リーマンショックよりも深い不景気に落ち込むことはなさそうで、にも関わらずアメリカ株が割安だと考えれば、株価が実際の景気回復や業績回復よりも先に上昇基調に乗ることは、驚きではありません。
以下に、アメリカを代表する株式指標であるS&P 500のチャート(参照用であり、トレンド線には意味はありません)を載せますが、これを見ると、2009年の大底からのリバウンドの後の、2010年央からのアメリカ株の堅調ぶりが、見てとれると思います。
このチャートでは、また、2000年をピークとしたインターネットブーム、そして2007年をピークとしたレバレッジブームも、合せてみてとることが出来ます。その大きさが、それらの触れ幅と合せて、それ以前の株価のトレンドと比べると異常であることが、一見して見て取れると思います。
しかし、金融危機後のウォールストリート規制の強化トレンドを見ても、レバレッジブームがすぐに戻るとは、とても考えられません。Buffett氏も、レバレッジについては、2010年度のレターの中で、以下のように述べています。
「多くの人がレバレッジによって、大いに金持ちになったのは疑いない。しかしレバレッジは、大いに貧乏になる道でもある。(中略)我々が小学校3年生のときに学校で教わった、2008年に再確認されたレッスンは、何年もプラスのリターンを続けていても、たった一つのゼロを掛け合わせることで、全て消え去ってしまう、ということである。歴史は、レバレッジが、それがどんなに賢い人に用いられていようとも、頻繁にゼロを生み出すものであることを物語っている。(中略)信用とは空気のようなもので、ある時には誰も気にもとめないが、なくなると、それが唯一の関心事となる。」
要するに同氏は、2000年代の景気をドライブしたレバレッジブームの再来は、期待してないものと思われます。それでも景気見通しに楽観的なのは、同氏には2010年代以降の新たな経済のドライバーが見えているからかもしれません。
例えばBuffett氏は、2010年度投資家レターの中で、昨年買収した鉄道大手BNSFの魅力について、次のように述べています。
「BNSFへの投資に熱意を持つ理由は、同社が、最大の競合であるトラック業界に対して、コスト面および環境面で、大きな強みを持つからである。鉄道は、トラック業界に比べて3倍の燃費効率を持ち、これは同社がコスト競争力を持つという事のみならず、アメリカ合衆国のグリーンハウスガス排出量を減らし、輸入石油への依存度を下げることに貢献することが出来る、ということである。」
Buffett氏の手紙は、こうした具体的な投資見解以外に加えて、長期に渡り成功を収めて来たファンダメンタルズ投資とはどういうもか、そのコンセプトを学ぶためにも非常に魅力的なコンテンツです。実際にアメリカのファンダメンタルズ投資戦略の投資信託運用会社やヘッジファンドは、Buffett氏のアプローチを大いに参考にしています。
例えば同氏は、アメリカ経済に対する悲観論者や、リスク投資をいまだに渋ってる機関投資家層に向けた言葉とも思える、以下のような発言をレターの中でしています。
「2009年に、米国経済への悲観論が広がる中、Berkshireは$6bn(約4800億円)の投資を行い、その9割は米国内に投資された。(中略)マスコミのコメンテーターは、よく今日の経済環境を『大いに不確実』だと評するが、1941年12月6日、1987年10月18日、2001年9月10日を思い出して欲しい。今日がいかに平穏でも、一日先の未来は“常に”不確実なのである。」
興味深いことに、アメリカの前財務長官で、Goldman Sachs及びCitigroupの会長も勤め、現存する大手ヘッジファンドの創設者を多く排出した投資家でもあるRobert Rubin氏も、Buffett氏と同じような以下のようなことを、以前に述べていたそうです。(出典)
「The only certainty is that there is no certainty.(唯一確実に言えるのは、「確実」と言うことなどない、ということである)」「Despite uncertainty, we must act.(不確実であっても、我々は行動を起こさねばならない)」
・・・少々話が脱線しましたが、Buffett氏は、自らのアメリカ経済楽観論の理由について、レターの中で以下のように説明しています。
「(世の中が不確実だという)現実を恐れてはいけない。私の人生を通じて、政治家や評論家達は、アメリカが直面している恐ろしい問題について、散々嘆いてきた。しかし、現代の市民は、私が生まれた頃よりも、6倍も豊かな生活をしている。破滅の預言者は、唯一の『確実性』を見落としている。それは、人類の潜在力はまだまだ底をついておらず、その力を実現させるアメリカというシステムは、2世紀以上に渡って、いくつもの不景気や内戦までも乗り越えて、今でも健在かつ効果的である、という事である。」
このような、経済や株式市場は、基本的に人類の発展と同様に「右肩上がり」であり、アメリカはその主導的地位にあり続ける、という考え方は、同氏のみならず、アメリカの投資業界全般や、米国の株式市場を研究素材として確立している、現代の経済・金融理論の多くに共通した、「前提条件」だと言えるかもしれません。
そう考えるとBuffett氏は、楽観的な、典型的アメリカ人といえるかもしれません。アメリカ人のそうした特性は、過去に「超・格差社会アメリカの真実」という、アメリカ社会の特質を取り上げた名著をブログで取り上げた時に、詳しく書いた通りですが、こうした前向きなメンタリティは、同国が持つフレキシビリティと並んだ、最大の強みの一つと言える気がします。
しかし、世の中は常に盛者必衰であることは、歴史が証明しています。アメリカとて、もちろん例外ではないはずであり、最近のイラクやアフガニスタンでの失態や、EURO圏の拡大、巨大な途上国の躍進などを受けて、その相対地位が低下していることは、間違いない気がします。そう考えると、未だ不景気から脱しきれてていない2011年に、アメリカの政財界が正しい舵取りを続けられるかどうかは、要注目事項であるように思います。
このようなアメリカ経済への楽観論を持っている代表的人物として、Warren Buffett氏(80)がいます。
「オマハの賢人」として知られる同氏は、ファンダメンタルズ株式投資家として、現世で最も著名で且つ経済的に成功している人物であることは、今更言うまでもないと思います。そんな同氏が、世界が大いなる不確実性に満ちているように感じられる今日、どんな楽観論を持っているのか、取り上げてみたいと思います。
Buffett氏率いるBerkshire Hathaway社は、保険会社を中心としたコングロマリット投資会社です。同氏はかつて、自分は株式投資(企業投資)が大好きであり、それを生涯の生業にするために、自動的に投資資金が集まる仕組みを考えた。それが保険会社である、と言った趣旨のことを述べていたそうです。
Berkshire社は、毎年決算発表期に合せて、大々的に株主総会を開催することで知られています。この時期になると、アメリカの小地方都市であるオマハには、株式投資の「神」の声を直接聞こうと、多くの投資家が足を運びます。その模様は「ロックコンサートのようだ」と言われ、Buffett氏が、ファン(株主)から発せられる無数の質問にもしっかりと答える様子は、しばしば金融メディアの注目を集めます。
また同氏は、株主総会に足を運べない多くの人のために、自身の投資についての考え方について、毎年投資家レターの中で開示しています。アメリカの投資業界では、「このレターを読むことは、(ファンダメンタルズ戦略の)投資家の義務である」と言われるほどで、このレターを何年分も集めて、それを題材にした投資指南の本まで出版されています。
2010年度を振り返った投資家レターの中で、Buffett氏が、アメリカ経済について強気の見通しを示したという話が、週末の主要経済メディアによって、一斉に報道されました。同氏は2010年度から、アメリカ経済に対する強気の発言を繰り返していましたが、今回はそれを再確認する機会となりました。
イギリスの主要経済紙Financial Timesの「Optimistic Buffett on lookout for acquisitions(楽観的Buffett氏、買収の機会を探る)」では、「(世界の)資金は常に投資機会に向かって流れ、アメリカにはそれが豊富にある」という同氏の言葉が紹介され、2011年のBerkshire投資額が、昨年の$6bn(約4800億円)から$8bn(約6400億円)に3割超増額される予定だと書かれていました。その増額分の全額が、アメリカに投資される予定だそうです。
またアメリカのWall Street Journalも、「Berkshire's Buffett Eyes More Major Deals as Earnings Surge (利益が上昇、Buffett氏買収機会を狙う)」の中で、61%という高い利益成長を遂げたBerkshireが、2010年のハイライトを約$27bn(約2.2兆円)で買収した鉄道大手Burlington Northern(BNSF)だったとした上で、2011年にはより多くの大型案件を狙っている、とのBuffett氏の発言を紹介していました。
FTはまた、Buffett氏が、アメリカの住宅市場の回復が「1年かそこら以内に始まるだろう」とし、「いずれにせよ、いつか回復する事は間違いない。(中略)現在のような魅力的な価格と低金利環境では、多くのアメリカ人にとって、住宅を保有することがメイクセンスするからだ」と述べたことも、紹介しています。これは、住宅市場に最も影響を与えると言われる失業率が高止まりし、「Jobless Recovery」が懸念される中においては、かなりの楽観論と言えるかもしれません。
もちろんウォールストリートには、アメリカ経済についての悲観的な見方も、多く存在します。例えば、Economistの2月26日号の「Japanese Banks – Back from the dead(邦銀、死からの生還)」の中で同誌は、日本の銀行が20年もの停滞に苦しんでいる中、欧米の銀行は、最初の10年を回避するための適切な措置、つまり迅速な不良債権処理を行ったが、次の10年がばら色の成長を遂げると考えるのは時期尚早である、と指摘しています。
その理由としては、民間部門(企業・家計)がデレバレッジング、つまり、今までに借りすぎていた借金を返済することにお金を使ってしまうことで、投資や消費にお金が回らずに、経済が活性化しない状態を続ければ、低金利環境も相当期間続くことになる。そうなると銀行セクターは、大幅なコスト削減無しには、大きな利益成長を達成するのは難しい、と書いています。
現在の欧米の不況の原因が、民間部門によるデレバレッジングだと考えるならば、これはまさに、日本がバブル経済破綻後に経験した「バランスシート不況」であり、いくらお金をばら撒こうとも、そのお金がどこかに消えていってしまう(借金返済にまわされてしまう)、非常に難しい不況、と言うことが出来ます。(これは2010年10月のエントリーで書いた通りです。)
しかし、Buffett氏に代表される株式投資家は、足元の景況感よりも、将来の期待値に基づいて投資決定を行うため、米国経済が、今後リーマンショックよりも深い不景気に落ち込むことはなさそうで、にも関わらずアメリカ株が割安だと考えれば、株価が実際の景気回復や業績回復よりも先に上昇基調に乗ることは、驚きではありません。
以下に、アメリカを代表する株式指標であるS&P 500のチャート(参照用であり、トレンド線には意味はありません)を載せますが、これを見ると、2009年の大底からのリバウンドの後の、2010年央からのアメリカ株の堅調ぶりが、見てとれると思います。
このチャートでは、また、2000年をピークとしたインターネットブーム、そして2007年をピークとしたレバレッジブームも、合せてみてとることが出来ます。その大きさが、それらの触れ幅と合せて、それ以前の株価のトレンドと比べると異常であることが、一見して見て取れると思います。
しかし、金融危機後のウォールストリート規制の強化トレンドを見ても、レバレッジブームがすぐに戻るとは、とても考えられません。Buffett氏も、レバレッジについては、2010年度のレターの中で、以下のように述べています。
「多くの人がレバレッジによって、大いに金持ちになったのは疑いない。しかしレバレッジは、大いに貧乏になる道でもある。(中略)我々が小学校3年生のときに学校で教わった、2008年に再確認されたレッスンは、何年もプラスのリターンを続けていても、たった一つのゼロを掛け合わせることで、全て消え去ってしまう、ということである。歴史は、レバレッジが、それがどんなに賢い人に用いられていようとも、頻繁にゼロを生み出すものであることを物語っている。(中略)信用とは空気のようなもので、ある時には誰も気にもとめないが、なくなると、それが唯一の関心事となる。」
要するに同氏は、2000年代の景気をドライブしたレバレッジブームの再来は、期待してないものと思われます。それでも景気見通しに楽観的なのは、同氏には2010年代以降の新たな経済のドライバーが見えているからかもしれません。
例えばBuffett氏は、2010年度投資家レターの中で、昨年買収した鉄道大手BNSFの魅力について、次のように述べています。
「BNSFへの投資に熱意を持つ理由は、同社が、最大の競合であるトラック業界に対して、コスト面および環境面で、大きな強みを持つからである。鉄道は、トラック業界に比べて3倍の燃費効率を持ち、これは同社がコスト競争力を持つという事のみならず、アメリカ合衆国のグリーンハウスガス排出量を減らし、輸入石油への依存度を下げることに貢献することが出来る、ということである。」
Buffett氏の手紙は、こうした具体的な投資見解以外に加えて、長期に渡り成功を収めて来たファンダメンタルズ投資とはどういうもか、そのコンセプトを学ぶためにも非常に魅力的なコンテンツです。実際にアメリカのファンダメンタルズ投資戦略の投資信託運用会社やヘッジファンドは、Buffett氏のアプローチを大いに参考にしています。
例えば同氏は、アメリカ経済に対する悲観論者や、リスク投資をいまだに渋ってる機関投資家層に向けた言葉とも思える、以下のような発言をレターの中でしています。
「2009年に、米国経済への悲観論が広がる中、Berkshireは$6bn(約4800億円)の投資を行い、その9割は米国内に投資された。(中略)マスコミのコメンテーターは、よく今日の経済環境を『大いに不確実』だと評するが、1941年12月6日、1987年10月18日、2001年9月10日を思い出して欲しい。今日がいかに平穏でも、一日先の未来は“常に”不確実なのである。」
興味深いことに、アメリカの前財務長官で、Goldman Sachs及びCitigroupの会長も勤め、現存する大手ヘッジファンドの創設者を多く排出した投資家でもあるRobert Rubin氏も、Buffett氏と同じような以下のようなことを、以前に述べていたそうです。(出典)
「The only certainty is that there is no certainty.(唯一確実に言えるのは、「確実」と言うことなどない、ということである)」「Despite uncertainty, we must act.(不確実であっても、我々は行動を起こさねばならない)」
・・・少々話が脱線しましたが、Buffett氏は、自らのアメリカ経済楽観論の理由について、レターの中で以下のように説明しています。
「(世の中が不確実だという)現実を恐れてはいけない。私の人生を通じて、政治家や評論家達は、アメリカが直面している恐ろしい問題について、散々嘆いてきた。しかし、現代の市民は、私が生まれた頃よりも、6倍も豊かな生活をしている。破滅の預言者は、唯一の『確実性』を見落としている。それは、人類の潜在力はまだまだ底をついておらず、その力を実現させるアメリカというシステムは、2世紀以上に渡って、いくつもの不景気や内戦までも乗り越えて、今でも健在かつ効果的である、という事である。」
このような、経済や株式市場は、基本的に人類の発展と同様に「右肩上がり」であり、アメリカはその主導的地位にあり続ける、という考え方は、同氏のみならず、アメリカの投資業界全般や、米国の株式市場を研究素材として確立している、現代の経済・金融理論の多くに共通した、「前提条件」だと言えるかもしれません。
そう考えるとBuffett氏は、楽観的な、典型的アメリカ人といえるかもしれません。アメリカ人のそうした特性は、過去に「超・格差社会アメリカの真実」という、アメリカ社会の特質を取り上げた名著をブログで取り上げた時に、詳しく書いた通りですが、こうした前向きなメンタリティは、同国が持つフレキシビリティと並んだ、最大の強みの一つと言える気がします。
しかし、世の中は常に盛者必衰であることは、歴史が証明しています。アメリカとて、もちろん例外ではないはずであり、最近のイラクやアフガニスタンでの失態や、EURO圏の拡大、巨大な途上国の躍進などを受けて、その相対地位が低下していることは、間違いない気がします。そう考えると、未だ不景気から脱しきれてていない2011年に、アメリカの政財界が正しい舵取りを続けられるかどうかは、要注目事項であるように思います。
by harry_g
| 2011-02-28 19:16
| 世界経済・市場トレンド