レバレッジ? |
LBOをする際に鍵となるのは、買収ターゲット企業がいかに「Leverageable(借金が出来る)」か、と言うことです。もちろん買収価格(バリュエーション)も重要ですが、極端な話どんなに価格が高い企業でも、それに近いレベルまでレバレッジが掛けられれば、LBOファンドが支出するエクイティは少なくて済むわけです。
一般にマーケットは企業のレバレッジを、「Total Debt / EBITDA」と言う指標で判断します。やたらと専門用語好きなウォールストリートでは、LBOの際に「あの会社のマルチプル(倍率)は?」「あの業界の平均レバレッジは?」と言う言葉が飛び交いますが、これはまさに、この「Debt / EBITDA」を指しています。
株式投資家の観点から企業価値を算出(バリュエーション)する際にも、「あの会社のマルチプルは」と言う言葉を用いますが、株式投資家は企業の「将来の」期待価値を評価するため、このマルチプルは「Enterprise Value(EV) / 予想EBITDA」を意味します。
それに対して格付け機関を筆頭とするデットの投資家は、将来よりも「過去の」実績を重視するため、「予想EBITDA」ではなく「LTM EBITDA」を用いてマルチプルを計算します。(LTMとはLast Twelve Months(直近12ヶ月)の略で、一番最近の四半期を基準に考えます。)よってどのコンテクストで話をしているのかで、「マルチプル」の意味も、EBITDAの算出方法も違うことになります。なんとも紛らわしい話ですが。
「EBITDA」は企業価値分析をする際に最も頻繁に用いられる数字で、簡単に言うと、「営業利益」に非現金支出である減価償却(D&A)を足し戻して計算されます。営業利益は資本構造に影響を受けない「本業からの利益」を表しますが、ウォールストリートでは、それに「ひとひねり」加えたEBITDAを、簡単に算出できるキャッシュフローに近い概念として頻繁に用います。
と言うわけで、LBOの際にもこのEBITDAをレバレッジの計算に使うわけですが、会計に詳しい方は、「EBITDAは本当のキャッシュフローじゃない、レバレッジを見るならCapex(設備投資)も見るべきじゃないか」、と思われるかもしれません。それはまさにその通りで、更に言えばEBITDAは、運転資金の変化も無視しています。
では何故そう言った大きなキャッシュ・アウトフローを無視したEBITDAがレバレッジの判断に一般に使われているかと言うと、ウォールストリートが面倒くさがりやで、出来るだけ簡単な指標を使いたがると言うこともありますが、LBOのターゲットになるような会社は事業が安定していることが多く、Capexや運転資金の変動が最小限であることが理由として挙げられます。
もちろんそうでない企業をLBOする場合には、Total Debt / (EBITDA-Capex) を見ることもあります。または、Capexの中でもGrowth Capex(成長のための設備投資)は最小限と仮定し、Maintenance Capex(現状維持のための設備投資) = Depreciation(資産の価値減少分)と考えることで、Total Debt / EBITといった指標を使う事もあります。
さて、この「Leverageability」ですが、業界によって違ってきます。長くなって来たので、その話はまた今度書きたいと思います。