2005年 10月 06日
Carlyle史上最大のエグジット |
先日のブログ「欧米のディールフロー」に書いたDex Mediaの売却案件ですが、「LBOファンド大手のCarlyleにとって史上最大のエグジットになりそうだ」という記事が、Private Equity Onlineに載っていました。(いつもそうですが、以下の数字等は全てこの記事=公共情報に基づいて書きます。)その記事によると、CarlyleはDex Mediaを2003年に$7.05bn(約8,000億円)でWelsh Carsonと共同で買収し、それぞれ約$808.5mm(約900億円)をエクイティ出資。その後、2004年7月には早くも同社をNYSEに上場させ、株式を放出して資金の一部を回収。上場までにDividend Recapもやっていたので、それを合わせるとIPO時点で投資資金は全額回収。その後に今回の、R.H.Donnelleyへの買収に至ったわけです。
Carlyleは公式にはどれ位のリターンをDex Mediaへの投資から挙げたかについてコメントしていませんが、同記事にはCarlyleの共同創設者であるDavid Rubensteinのコメントの引用として、「最低でも投資金額の3倍」という数字が挙がっています。それは金額ベースでCarlyle始まって以来のリターンとなるそうです。900億円×3=2,700億円を投資後二年で回収する、ものすごい話です。
ちなみに「Dividend Recap」とは、LBOファンドが企業を買収した後に更にデットを借り増して資本構成を組み替え(Recapitalizeし)、その調達資金で自分自身に特別配当金(Special Dividend)を支払う取引です。Dividend Recapに用いられるデットは金利支払いが当分の間(通常5年程度)発生しないディープ・ディスカウント債が通常なため、レバレッジ・レシオは上がっても、インタレスト・カバレッジには影響しないのが通常です。企業としてはレバレッジがあがって、よりリスキーな資本構造での操業を強いられるわけですが、エクイティ100%買収後なので文句は言えないわけです。デット・ホルダーについては、LBO当初からDividend Recapを想定したコベナントでファイナンシングを行います。
話は戻りますが、Dex MediaのIPO後のPEファンド二社による所有率は、52%です。このようにPEファンドは、IPOで部分的にエグジットしても、過半数のコントロールを通常維持します。その上で追加のオファリングやM&Aなど、最終的な完全エグジットのチャンスを狙うわけです。
PEファンドは、M&Aによるエグジット時には、リターンを確定してIRRを最大化するために通常キャッシュディールを好みます。ですがM&A後に多額のシナジーが見込める場合などは、一部を株式で受け取る事によって、更なるアップサイドを狙うこともあります。今回のR.H. Donnelleyへの売却も、現金と株式交換を組み合わせたディールなため、売却後もCarlyleとWelsh Casonの二社は合併後企業の株式の25%を保有し、一人の取締役を派遣する権利も保持します。そうする事によって、引続き最終エグジットに向けて、経営への影響力を維持することになります。これからCarlyleがどのように資金回収を行うか、マーケットも注目していると思います。
時にこの「Directories(電話帳)」ビジネス、つまらなそうな業界ですよね。インターネット広告が躍進する中で成長性が低く、バリュエーションは割安ですが、キャッシュフローは安定している。成長のためのCapexもほとんど不要。
・・・ここまで言うとお分かりかと思いますが、これぞまさに、LBOファンドの格好のターゲットなわけです。と言うわけで、当時Dex Mediaの案件は史上三番目の大きさでしたが、噂ではT.H.LeeやMDP、JP Morgan Partnersなどもビッドに参加したそうです。またその後に、Bell Canadaのイエローページ部門をKKRが買収した案件も記憶に新しいです。
by harry_g
| 2005-10-06 11:53
| LBO・プライベートエクイティ


