2009年 12月 10日
前代未聞のボーナス課税 |
前回のエントリーで、イギリス政府がEUが検討している過剰な金融規制への懸念を表明しているという話を書きましたが、総選挙が半年以内に迫り、人気取りに躍起になっている印象のあるイギリス政府は12月9日、「バンカーのボーナスに50%の特別課税を課す」と言う、ロンドンの首を自ら絞めるような方針を決定したそうです。恐らく前代未聞の話で大変驚いたので、手短に触れてみます。
12月9日にWSJ、FT、Bloombergなどが一斉に報じたところによると、イギリスのDarling財務大臣は、英国内で経営される銀行が来年4月までに2万5千ポンド(約360万円)以上のボーナス支払いを行う場合には、「銀行が」その50%の税金を納めることを定めて、即日導入したそうです。従業員は通常の40%の所得税を課税され、その税率も4月から50%に上がることが予定されているそうです。

Bloombergの記事の中で会計事務所大手のKPMGが算定したところによると、銀行が従業員に100万ポンド(約1.4億円)のボーナスを支払った場合、英財務省は、銀行から50万ポンド、従業員から40万ポンド、社会保険13ポンドと、合計でボーナス支払額以上を受け取ることが出来るようになるそうです。
Darling氏は、LloydsやRBSと言った国内の大手銀行に対し、企業への貸出し促進や自己資本の強化を促して、「今でも巨額のボーナス支払いを重要視する銀行が存在する」と批判した上で、「私は銀行に選択肢を与えている。稼いだ利益で自己資本を増強するのであればよいが、そうでないなら、お金は納税者に返してもらう」と議会で発言したそうです。
至極当然ですが、イギリス銀行業協会の会長は、「既に従業員に報酬を約束しているような外銀に対してもっとも打撃が大きい税制」であり、そういう金融機関はロンドンを「大幅に魅力の薄れた都市」と看做すかもしれない、と、政府の決断を厳しく批判しているようです。またイギリスの経済団体からも、特定の職種だけに課す税金は「大きな誤りだ」との批判が出ているようです。
前回のエントリーでも書いた通り、ロンドンは既に、欧州主導の金融規制の強化によって、厳しい立場に立たされつつあります。ヘッジファンド業界の重鎮George Soros氏は、12月9日のBloombergの記事の中で、「欧州はロンドンが沈むことを期待している」とした上で、最近のEUの規制強化の動きに対して批判的立場から、「最近の独仏同盟は、まるで陰謀のようだ」といった趣旨の発言したそうです。
1992年にポンド空売りをしかけてイングランド銀行を屈服させたことで知られるSoros氏は、欧州が検討しているとされる、ヘッジファンドやプライベートエクイティファンドへの規制強化を念頭に置いて、「ヘッジファンドは、金融危機の発生源のように不当に批判されている」とし、「彼らは『大きすぎて潰せない』ことはない。実際、やり過ぎたヘッジファンドは多くが破綻している」とも述べていました。
話を報酬規制の問題に戻しますが、これは現在進行形の話であり、英国以外でも様々な金融機関が、ボーナスの複数年業績連動にするなど、様々な変更を試みています。しかし先週Bloombergなどが報じていましたが、英大手銀のRBSでは、報酬規制のために大量の人材流出問題が表面化し、競争力喪失の恐れが出ているそうです。以前からスイスやイギリスは、こうした規制は国際的に導入しなければ効果がないと主張していましたが、その問題が現実になっていると言えるかもしれません。

今回の税制は、イギリスで働くバンカー個人への影響は直接ないように見えますが、あまりの税支払額の大きさに、銀行側が支払い予定だったボーナスを大幅に減額する可能性もあると思います。ロンドンのシティやスイスのチューリッヒで働く、元同僚の友人達と話したところ、彼らもイギリス政府がこのような踏み込んだ税制を導入したことに、かなり驚いているようでした。
何よりもリスクだと思われるのは、イギリス政府が、突如として金融業界に対して懲罰的税制を導入するという、悪しき前例を作ってしまうことで、ロンドンの地位に大きな傷がつく事な気がします。イギリス政府は今回の税制を「一度限りのこと」と言っているようですが、2010年末になって、金融機関が引き続き貸し渋りを行いつつ、自己トレーディングなどで儲けた資金を原資に高額ボーナスを支払おうとしたらどうなるか、と考えれば、その言葉も眉唾物と言える気がします。
ある人は「金を生むガチョウを殺すような行為だ」などと言っているようですが、それでも各国政府が、金融機関の報酬規制を行うのは、強い世論の後押しがあるためと思われます。アメリカでも同様で、今年、過去最高額のボーナスリザーブを積み上げ、優秀な人材確保には高額報酬が必要と主張し、英メディアには「自分は『神の仕事』をしているバンカー」と発言してしまったLloyd Blankfein氏率いるGoldman Sachsは、特に厳しい批判に晒されています。
別のBloombergの記事によると、公的資金の支援を受けた金融機関はボーナスを一切支給すべきでないとの回答は75%に上り、公的資金返済後でも早期のボーナス支払いを行うべきないとの声も、51%と過半数に上ったそうです。アメリカでは、高止まりする失業率のせいでObama政権の支持率が下落しており、その原因が金融危機を引き起こしたウォールストリートにある、と大半の国民が考えている以上、今後ヨーロッパのような厳しい報酬規制の話が、表面化してくるかもしれません。
12月9日にWSJ、FT、Bloombergなどが一斉に報じたところによると、イギリスのDarling財務大臣は、英国内で経営される銀行が来年4月までに2万5千ポンド(約360万円)以上のボーナス支払いを行う場合には、「銀行が」その50%の税金を納めることを定めて、即日導入したそうです。従業員は通常の40%の所得税を課税され、その税率も4月から50%に上がることが予定されているそうです。

Bloombergの記事の中で会計事務所大手のKPMGが算定したところによると、銀行が従業員に100万ポンド(約1.4億円)のボーナスを支払った場合、英財務省は、銀行から50万ポンド、従業員から40万ポンド、社会保険13ポンドと、合計でボーナス支払額以上を受け取ることが出来るようになるそうです。
Darling氏は、LloydsやRBSと言った国内の大手銀行に対し、企業への貸出し促進や自己資本の強化を促して、「今でも巨額のボーナス支払いを重要視する銀行が存在する」と批判した上で、「私は銀行に選択肢を与えている。稼いだ利益で自己資本を増強するのであればよいが、そうでないなら、お金は納税者に返してもらう」と議会で発言したそうです。
至極当然ですが、イギリス銀行業協会の会長は、「既に従業員に報酬を約束しているような外銀に対してもっとも打撃が大きい税制」であり、そういう金融機関はロンドンを「大幅に魅力の薄れた都市」と看做すかもしれない、と、政府の決断を厳しく批判しているようです。またイギリスの経済団体からも、特定の職種だけに課す税金は「大きな誤りだ」との批判が出ているようです。
前回のエントリーでも書いた通り、ロンドンは既に、欧州主導の金融規制の強化によって、厳しい立場に立たされつつあります。ヘッジファンド業界の重鎮George Soros氏は、12月9日のBloombergの記事の中で、「欧州はロンドンが沈むことを期待している」とした上で、最近のEUの規制強化の動きに対して批判的立場から、「最近の独仏同盟は、まるで陰謀のようだ」といった趣旨の発言したそうです。
1992年にポンド空売りをしかけてイングランド銀行を屈服させたことで知られるSoros氏は、欧州が検討しているとされる、ヘッジファンドやプライベートエクイティファンドへの規制強化を念頭に置いて、「ヘッジファンドは、金融危機の発生源のように不当に批判されている」とし、「彼らは『大きすぎて潰せない』ことはない。実際、やり過ぎたヘッジファンドは多くが破綻している」とも述べていました。
話を報酬規制の問題に戻しますが、これは現在進行形の話であり、英国以外でも様々な金融機関が、ボーナスの複数年業績連動にするなど、様々な変更を試みています。しかし先週Bloombergなどが報じていましたが、英大手銀のRBSでは、報酬規制のために大量の人材流出問題が表面化し、競争力喪失の恐れが出ているそうです。以前からスイスやイギリスは、こうした規制は国際的に導入しなければ効果がないと主張していましたが、その問題が現実になっていると言えるかもしれません。

今回の税制は、イギリスで働くバンカー個人への影響は直接ないように見えますが、あまりの税支払額の大きさに、銀行側が支払い予定だったボーナスを大幅に減額する可能性もあると思います。ロンドンのシティやスイスのチューリッヒで働く、元同僚の友人達と話したところ、彼らもイギリス政府がこのような踏み込んだ税制を導入したことに、かなり驚いているようでした。
何よりもリスクだと思われるのは、イギリス政府が、突如として金融業界に対して懲罰的税制を導入するという、悪しき前例を作ってしまうことで、ロンドンの地位に大きな傷がつく事な気がします。イギリス政府は今回の税制を「一度限りのこと」と言っているようですが、2010年末になって、金融機関が引き続き貸し渋りを行いつつ、自己トレーディングなどで儲けた資金を原資に高額ボーナスを支払おうとしたらどうなるか、と考えれば、その言葉も眉唾物と言える気がします。
ある人は「金を生むガチョウを殺すような行為だ」などと言っているようですが、それでも各国政府が、金融機関の報酬規制を行うのは、強い世論の後押しがあるためと思われます。アメリカでも同様で、今年、過去最高額のボーナスリザーブを積み上げ、優秀な人材確保には高額報酬が必要と主張し、英メディアには「自分は『神の仕事』をしているバンカー」と発言してしまったLloyd Blankfein氏率いるGoldman Sachsは、特に厳しい批判に晒されています。
別のBloombergの記事によると、公的資金の支援を受けた金融機関はボーナスを一切支給すべきでないとの回答は75%に上り、公的資金返済後でも早期のボーナス支払いを行うべきないとの声も、51%と過半数に上ったそうです。アメリカでは、高止まりする失業率のせいでObama政権の支持率が下落しており、その原因が金融危機を引き起こしたウォールストリートにある、と大半の国民が考えている以上、今後ヨーロッパのような厳しい報酬規制の話が、表面化してくるかもしれません。
by harry_g
| 2009-12-10 13:19
| 投資銀行


