「リクイディティ」の世紀? |
特にマーケットサイドは、ファンドマネージャー達が休暇に出てしまうこともあり、アクティビティが大幅に減少するのが常であり、投資銀行やヘッジファンドなどではボーナスの発表やホリデーパーティが行われて、ウォールストリートも日本で言う年末年始のようなムードに包まれます。(写真は友人NYlawyerさんのブログより)
この時期になると金融メディアが2006年を総括するような記事を色々と掲載するので、また面白いものがあったら取り上げたいと思いますが、基本的にはウォールストリートの好調ぶりを印象付けるものが多い気がします。先日書いたボーナスの話もそうですし、M&Aがテックバブルの規模を超えたというニュースも目にします。
中でもやはりLBOの活況ぶりは目を見張るものがあり、プライベートエクイティファンドの重鎮達から1980年代の後半に聞いたような話、つまりPEファンドはいずれアメリカの上場企業を全て買い上げてしまうだろう、といった話まで聞かれると言うのは、以前にも書いた通りです。
マーケットは振り子のようなものなので、一方向に大きく振れるとその反動もそれだけ大きくなることが懸念されるわけですが、今のところ懸念されているような「バブル崩壊」の前兆はあまり見られていないと言うのが真実かもしれません。
例えば今世紀に入ってからブームが加速した住宅市場も、今年に入って調整局面は迎えているものの、懸念されたようなハードランディングには至っていません。また石油価格の上昇によるガソリン負担増や住宅価格の下落によるホームエクイティローン借入の減少が、個人消費に致命的影響を与えて米国経済を破綻させるといった状況も、現実にはなっていないようです。
つまり、様々な懸念にも関わらず全般的にアメリカ経済は堅調を続けており、ウォールストリートもまた空前の好景気に沸いたのが2006年だったと言える気がします。
このような状況をもたらしているのは一体何なのか、と考える人も多いと思います。その回答は簡単ではありませんが、一つ真実と言えるであろうことに、「豊富なリクイディティ」がある気がします。
これは一般に「金余り」などとも言われますが、豊富な資金の存在がもたらす低金利は、LBOや不動産市場には直接のサポート要因となりますし、いわゆる資本コストの低下は、経済全体に活力を与えていると考えられています。
また、西洋社会の高齢化がリターンを追い求める豊富なキャピタルを生み出し、それが必然的に金融商品の相対リターンを低下させている、ということも言えるかもしれません。それが景気減速感の中でも続いている、クレジットスプレッドの低下(債券価格の上昇)や、株式期待リターンの低下(株価とPERの上昇)、キャップレートの低下(不動産価格の上昇)などを説明してくれる気がします。
そんな中、ある意味「アンバランス化」した今日の世界について、アメリカの著名な不動産投資家であるSamuel Zell氏がホリデーカードの中で非常に上手く説明しているので、ご紹介したいと思います。
同氏はアメリカ最大の商業用不動産のオーナーであり、Equity Group Investmentsという企業のトップを勤めています。
「The Theory of Relativity(相対性理論)」と名づけられたこのホリデーカード、まさにリクイディティに溢れる今日の世界の「真実」を非常にうまく捉えたものとして、ウォールストリートで話題になっています。是非音声付でお楽しみ下さい。
http://www.yieldsz.com
・・・世界の真実がこの歌の通りだとすると、オルタナティブ投資の活況とそこから恩恵を受けるウォールストリートの繁栄は、当面続くのかもしれません。もちろんいずれ世界はバランスを取り戻すのでしょうが、それが1ヵ月後なのか5年後なのかは、まさに神のみぞ知ることと言える気がします。