2006年 09月 26日
LBOに例外なし? |
少し前(9月11日号)のBusiness Weekに、「The LBO Gang Storms The Valley」と言う記事が載っていました。
「LBO Gang」とは言うまでもなく大手のLBOファンドのことであり、「The Valley」はシリコンバレー、つまりテクノロジー業界を意味します。要するにこれは、最近LBOのターゲットとしてテック業界が注目を浴びている、と言う趣旨の記事です。
この記事が記事になる理由は、すでにご存知の方も多いと思いますが、テクノロジー業界は伝統的には最もLBOに向かない業界だと考えられていたからです。それに対して最近米国のPE業界の人から聞いた話によると、大学基金などからPE業界への資金の流入が止まらない現状を受けてファンド間の競争の激しさは増す一方であり、最近では大手のLBOファンドがLBOを「検討しないセクターは無い」そうです。
去年の9月~10月辺りにLBOの基礎のような話を色々書きましたが、教科書的に言うと、LBOファンドが最も好むのは、業績の見通しが立て易く、毎年多くのキャッシュフローを生み、設備投資やR&Dなど成長の為の現金支出を伴わない業界です。
これらの条件は、過去の業績の継続性を重視するデットの投資家が好む条件であり、LBOの主な資金の出し手のニーズと一致していることになります。このような業界は株式市場からは「成長性のない、つまらない業界」と言われるような業界が多く、例えば食品業界などがその典型と言われます。
逆に最もLBOがやりにくいと考えられて来たのは、業績が不安定で予想が立てにくく、キャッシュフローの見通しが不透明でデットホルダーにとっては返済が確かではなく、また事業に多額の現金支出を伴う業界です。このような業界の代表と考えられるのが、高成長で多額のR&Dや設備投資を必要とするテクノロジー業界と言うことになります。
デットホルダーが敬遠してきたテック業界は、その高成長性から逆にエクイティの投資家が最も好む業界であり、1999年頃のテックバブルとIPO熱は記憶に新しいところですし、ベンチャーキャピタルの投資先の大半は、テックかバイオセクターだと言われています。言うまでもなくエクイティ投資家はキャッシュフローよりもキャピタルゲインを好む傾向にあるのがその背景と言えます。
それが最近では状況は様変わりし、ウォールストリートはテック業界に厳しい目を向けています。例えば代表的なテック企業であるマイクロソフトは、成長性が鈍化したことで株式は厳しいプレッシャーを受け、溜め込んだ多額のキャッシュをどんなに自社株買いに回そうとも、株価を浮き上がらせることが出来ずにいます。
その理由として考えられるのは、エクイティの投資家は高成長の継続をマイクロソフトに期待しており、配当金や自社株買いで成長が限界に来ていることを認めて欲しくないからかもしれません。それでもマイクロソフトに言わせてみれば、やることは全てやっているし引き続き成長もしている上、更に余剰資金を株主に還元しているのだ、と言うことになるかもしれません。
それでもマイクロソフトを含む大手のテック企業にとっては、成長率が「鈍化」したというだけで、セルサイドのアナリストやCNBCの解説員に失格の烙印を押されることも少なくなく、経営陣もそんな現状にウンザリ、という状況になっていることは想像に難くありません。
もちろんテック企業は、今までホットなIPOやストックオプションなどを通じてエクイティの投資家から散々利益を享受してきたわけで、その状況が変わってきたからと言って、その投資家(を代表するとも言えるウォールストリート)に文句を言うのはどうかと思います。それでも業界に市場(パブリックエクイティの投資家)に対するフラストレーションが溜まっているのは確かであり、そんな時に救世主のように現れたのが、LBOファンドと言うわけです。
投資先を必死に探しているLBOファンドにとって、規模が大きくキャッシュが潤沢で、昔のような業績のボラティリティもキャッシュのアウトフローも無いテック業界は、格好のバイアウトのターゲットです。またテック企業から見れば、会社をプライベタイズ(非上場化)してしまえば、上場企業として必要だったウォールストリート対応や、その他の様々な煩雑さから逃れられるわけです。(この話についてはもう少し色々とBusiness Weekに書いてあり、特に経営の自由度に関する話は興味深かったのですが、長くなって来たので次回にします。)
ともかく最近のアメリカのLBOにおいては、業界や規模の例外はほぼなくなって来たと言えます。前から書いているように、信用リスクの膨張から「ファンドバブル」を懸念する声も聞かれますが、資金面での需要が止まらない限り、今の勢いはなかなか収まらないのかもしれません。
「LBO Gang」とは言うまでもなく大手のLBOファンドのことであり、「The Valley」はシリコンバレー、つまりテクノロジー業界を意味します。要するにこれは、最近LBOのターゲットとしてテック業界が注目を浴びている、と言う趣旨の記事です。この記事が記事になる理由は、すでにご存知の方も多いと思いますが、テクノロジー業界は伝統的には最もLBOに向かない業界だと考えられていたからです。それに対して最近米国のPE業界の人から聞いた話によると、大学基金などからPE業界への資金の流入が止まらない現状を受けてファンド間の競争の激しさは増す一方であり、最近では大手のLBOファンドがLBOを「検討しないセクターは無い」そうです。
去年の9月~10月辺りにLBOの基礎のような話を色々書きましたが、教科書的に言うと、LBOファンドが最も好むのは、業績の見通しが立て易く、毎年多くのキャッシュフローを生み、設備投資やR&Dなど成長の為の現金支出を伴わない業界です。
これらの条件は、過去の業績の継続性を重視するデットの投資家が好む条件であり、LBOの主な資金の出し手のニーズと一致していることになります。このような業界は株式市場からは「成長性のない、つまらない業界」と言われるような業界が多く、例えば食品業界などがその典型と言われます。
逆に最もLBOがやりにくいと考えられて来たのは、業績が不安定で予想が立てにくく、キャッシュフローの見通しが不透明でデットホルダーにとっては返済が確かではなく、また事業に多額の現金支出を伴う業界です。このような業界の代表と考えられるのが、高成長で多額のR&Dや設備投資を必要とするテクノロジー業界と言うことになります。
デットホルダーが敬遠してきたテック業界は、その高成長性から逆にエクイティの投資家が最も好む業界であり、1999年頃のテックバブルとIPO熱は記憶に新しいところですし、ベンチャーキャピタルの投資先の大半は、テックかバイオセクターだと言われています。言うまでもなくエクイティ投資家はキャッシュフローよりもキャピタルゲインを好む傾向にあるのがその背景と言えます。
それが最近では状況は様変わりし、ウォールストリートはテック業界に厳しい目を向けています。例えば代表的なテック企業であるマイクロソフトは、成長性が鈍化したことで株式は厳しいプレッシャーを受け、溜め込んだ多額のキャッシュをどんなに自社株買いに回そうとも、株価を浮き上がらせることが出来ずにいます。
その理由として考えられるのは、エクイティの投資家は高成長の継続をマイクロソフトに期待しており、配当金や自社株買いで成長が限界に来ていることを認めて欲しくないからかもしれません。それでもマイクロソフトに言わせてみれば、やることは全てやっているし引き続き成長もしている上、更に余剰資金を株主に還元しているのだ、と言うことになるかもしれません。
それでもマイクロソフトを含む大手のテック企業にとっては、成長率が「鈍化」したというだけで、セルサイドのアナリストやCNBCの解説員に失格の烙印を押されることも少なくなく、経営陣もそんな現状にウンザリ、という状況になっていることは想像に難くありません。もちろんテック企業は、今までホットなIPOやストックオプションなどを通じてエクイティの投資家から散々利益を享受してきたわけで、その状況が変わってきたからと言って、その投資家(を代表するとも言えるウォールストリート)に文句を言うのはどうかと思います。それでも業界に市場(パブリックエクイティの投資家)に対するフラストレーションが溜まっているのは確かであり、そんな時に救世主のように現れたのが、LBOファンドと言うわけです。
投資先を必死に探しているLBOファンドにとって、規模が大きくキャッシュが潤沢で、昔のような業績のボラティリティもキャッシュのアウトフローも無いテック業界は、格好のバイアウトのターゲットです。またテック企業から見れば、会社をプライベタイズ(非上場化)してしまえば、上場企業として必要だったウォールストリート対応や、その他の様々な煩雑さから逃れられるわけです。(この話についてはもう少し色々とBusiness Weekに書いてあり、特に経営の自由度に関する話は興味深かったのですが、長くなって来たので次回にします。)
ともかく最近のアメリカのLBOにおいては、業界や規模の例外はほぼなくなって来たと言えます。前から書いているように、信用リスクの膨張から「ファンドバブル」を懸念する声も聞かれますが、資金面での需要が止まらない限り、今の勢いはなかなか収まらないのかもしれません。
これは面白い記事でしたね。IPOは多くのテック企業の夢と希望で、シリコンバレーのイノベーションの原動力の一つでもあると思っていたんですが、LBOでさらにプレミアムを得てクローズするというサイクルも出来るというのは。harryさんのおっしゃるとおり、この数年アメリカで公開企業であり続けるというコストとプレッシャーは経営者にとってかなりしんどいものだと思われ、そういう流れともマッチしたのでしょう。
ただし、Private owners also can be more demanding than Wall Street.というのがまったくそのとおりな気もいたします。この、非公開化を考えているとされる企業群のひとつに勤めるエンジニアの知人とちょっとこの記事に関して話をしたら、顔をしかめていました。
ただし、Private owners also can be more demanding than Wall Street.というのがまったくそのとおりな気もいたします。この、非公開化を考えているとされる企業群のひとつに勤めるエンジニアの知人とちょっとこの記事に関して話をしたら、顔をしかめていました。
公開・非公開の話は面白いのでまた書きますが、シリコンバレーのエンジニアを筆頭に、アメリカの人たちの成功への欲望はすごいですよね。IPOはまさにその代表な気がします。
ちなみに日本にも、高度成長時代には「欧米に生活水準で追いつきたい」というもの凄い欲望のパワーがあったと聞きます。それが経済成長の本当の原動力だったのかもしれません。
ちなみに日本にも、高度成長時代には「欧米に生活水準で追いつきたい」というもの凄い欲望のパワーがあったと聞きます。それが経済成長の本当の原動力だったのかもしれません。
タイミングを逸したコメントで申し訳ありません。
まさに「教科書どおり」に投資をしている僕らにとっては、やはりTech業界は対象になりにくいです。ビジネスのcyclicalityも然ることながら、やはりHigh capexがとても懸念されるところです。Cyclicalityは昔と比べるとだいぶ減った、と考えを整理することはできれもhigh capexはKBOファンドにとっては障壁になるような気がします。。。そのあたりtech業界に進出しているLBOファンドがどう考え方を整理しているのか、とても気になるところです。
まさに「教科書どおり」に投資をしている僕らにとっては、やはりTech業界は対象になりにくいです。ビジネスのcyclicalityも然ることながら、やはりHigh capexがとても懸念されるところです。Cyclicalityは昔と比べるとだいぶ減った、と考えを整理することはできれもhigh capexはKBOファンドにとっては障壁になるような気がします。。。そのあたりtech業界に進出しているLBOファンドがどう考え方を整理しているのか、とても気になるところです。
itsanyclifeさん、アメリカのPE業界の現場からのコメント、ありがとうございます。
恐らくLBOのターゲットになる大手テック企業は、Growth Capexが抑えられるようなマチュアな段階に来ているか、または絶対額はともかく「見通し」が極めてクリアなのかもしれません。ただ半導体業界のように、シクリカルでかつ継続的なCapexが求められる業界に関しては、キャピタルストラクチャーで資金需要に応じられるクリエイティビティが必要になりそうですね。コベナンツを工夫したり、レバレッジの計算にNormalized Capexを使うというのもその一つと言えるかもしれません。
ただ、高成長でGrowth Capexのニーズが強い企業は、別のポートフォリオ企業とのシナジーでも期待出来ない限り、やはりバイアウトは難しい気がします。これも適当なターゲットに関して実際にモデルを作って見てみたら、面白いかもしれませんね。
恐らくLBOのターゲットになる大手テック企業は、Growth Capexが抑えられるようなマチュアな段階に来ているか、または絶対額はともかく「見通し」が極めてクリアなのかもしれません。ただ半導体業界のように、シクリカルでかつ継続的なCapexが求められる業界に関しては、キャピタルストラクチャーで資金需要に応じられるクリエイティビティが必要になりそうですね。コベナンツを工夫したり、レバレッジの計算にNormalized Capexを使うというのもその一つと言えるかもしれません。
ただ、高成長でGrowth Capexのニーズが強い企業は、別のポートフォリオ企業とのシナジーでも期待出来ない限り、やはりバイアウトは難しい気がします。これも適当なターゲットに関して実際にモデルを作って見てみたら、面白いかもしれませんね。





























