「ウォールストリート」ライフ |
◆社会的地位(一般)
日本:低
最近メディアの報道や業務拡張のおかげで改善の兆しがあるものの、会社の規模も1,000人程度と小さく、東京以外に支店も一切無いため、恐らく人口の90%以上には存在すら認識されていない。日本ではどうしても「外資系」と言うだけで「よそ者、得体の知れない者」扱いされることが多く、メディアからも「ハゲタカ」の烙印を押されがち。社名も横文字でとっつきにくいが、新聞で「外資系証券」と呼ばれるため、証券会社であろうことは知られている(と思われる)。日本ではそもそも証券会社=「株屋」で、銀行と比べるとどうしても社会的地位が低い上、存在意義に対する評価も低い。最近は変わってきているらしいが、以前は外資系+証券のダブルパンチで、ローンを借りることすら困難だった。
米国:中
東部大都市では大量の業界人がいるため、社会的地位が確立しているが、それ以外の地域や金融・財務関係者以外からは、日本同様に存在が知られていないか、「スノッブ」、「無礼」と思われて敬遠されている。(それを知ってか、あからさまに偉そうな態度を取る業界人は比較的少ない。)
銀行系(JP Morgan)やブローカー系(Merrill Lynch)は支店も多く名前こそ広く知られているものの、「結局何をやってる会社?」と聞かれてしまうことが多い。Goldman SachsやLehman Brothersといったリテール部門を持たない純粋な投資銀行に至っては、支店もない上テレビCMや雑誌広告で目にする事もまず無いため、アパレルと間違われたりもする。
それでもアメリカでは株式取引や投資信託が一般に広く浸透していることもあり、日本と比べると証券会社(投資銀行)の信用と社会的地位は高い。
◆社会的地位(東京都心・マンハッタン)
日本:高
一般からの評価と異なり、東京都心部での地位・人気は極めて高い。流行りの六本木ヒルズや恵比寿ガーデンプレイスなどにオフィスを構え、消費性向も極めて高く、更に業界人の人口が少ないため、貧富の差が少ない日本において、「希少価値」感、ともすれば「セレブ」感さえある。社名が横文字なのも外資系なのも、プラスのイメージに働くことが多い。そんなこんなでよく「バブル期の日本企業のようだ」と揶揄されるが、高消費性向はリスクの高いウォールストリートの原動力であり、変え難いカルチャーでもある。
米国:中
高消費性向は日本と共通しているのだが、マンハッタンだけで数万人の業界人がいると思われ、文字通り「犬も歩けばバンカーに当る」。(ちなみに弁護士、医者、モデルにも同じことが言える。)更にエグゼクティブの給料が高いアメリカでは、事業法人でも出世すれば巨額の給料をもらえるため、バンカーだからといって特別感は「全く」ない。さらに、大富豪やら芸能人やらの「本物のセレブ」がゴロゴロいるNYにおいては、バンカーはむしろ「かわいそうな所得労働者」の感さえある。(マンハッタンの不動産屋と話していると明らかにそれが実感できる。)
◆生活水準
日本:高
日本は税金がアメリカと比べて安く、会社が住宅費のサポートをしてくれることもあり、生活水準は極めて高い。業界人のほとんどが港区、渋谷区、世田谷区の高級住宅地に住んでおり、景気のよい時のボーナスで買ったのであろう高級外車を普通に所有していたりと、それこそ海外赴任者のような生活水準を東京で実現可能。(もちろん過酷な労働環境がある上、日本企業ではありえない「解雇のプレッシャー」と常に背中合わせなのだが。)
米国:中~高
NYは税金も高い上、マンハッタンでは1LDKで20万円を切る物件はほぼ皆無であるなど、生活水準が高いとは言いがたい。日本のように住宅費のサポートもなく、手取り給料の半分以上が家賃と言うこともしばしばで、「いい暮らしをしている」と言う実感は日本と比べて少ない。それでもアメリカは一般的に生活水準が高く、マンションがホテルのようにキレイで、ドアマンやスポーツクラブ、クリーニングサービスが付いていたり、公園や美術館が整備されていたり、テニスコートやゴルフ場が安かったりと言うメリットはある。
◆給与水準
日本:最高
「横並び・年功序列」の日本文化を完全に無視して、実力主義のアメリカ本国のシステムを導入している。具体的数字は公表しない方針なので触れないが、最近報道などでも知られて来ている通り、サラリーマン社会では間違い無く最高水準。出世にMBAも必要なく(よって学費を貯金する必要もなく)、20代や30代で働きに応じた破格のボーナスをもらえる“ことも”ある。また、業界人が少ないため、競合間での引き抜き競争も熾烈で、給料水準を高めることに貢献している。類似業界を見ても、アメリカではPEの方が高い給料を払うケースもあるが、日本にはそのケースは当てはまらない。ただ、40歳以上まで働く人は少ないため、実態は単に生涯賃金を前払いされているだけとの話も。
米国:高
一般的に日本よりも若干給与水準が高いが、それはアメリカの方が業界が大きいこと、税金が高いことが関係しているものと思われる。ウォールストリートに限らずアメリカは実力給が広く普及しているため、熾烈な競争を勝ち抜ければ、破格の給料を稼ぐことも可能。ただ上り詰める人は数%な上、起業家や実業界が多いアメリカにおいては、バンカーはあくまで「富裕層の最下層」で、日本で感じられる特別感は「全く」ない。また、通常ビジネススクールかロースクール卒でないとそもそも就職できないので、就職後の数年間は給料を学費返済に充てることになる。給与水準が秘密のベールに包まれている日本と異なり、毎年ニューヨークポストなどのタブロイド紙が給与水準を詳細に報道している。
・・・要するに、若いうちに実力主義で頑張りたい人にとっては、金銭的報奨も十分に受けられる、魅力的な業界だと思います。ただ、世の中に「イージーマネー」はなかなか無いもので、専門職として相当の仕事へのコミットメントが求められるのと、常にリストラの心配をしながら働かなくてはいけない点は、一般の日本企業と比べると、かなりリスクが高いと言えると思います。
東京とNYのどちらが良いかについては、個人的なことになるのでしょうが、仕事面でも生活面でも、どちらもそれなりにプラスとマイナスがあると言うのが正直な所でしょうか。
とりあえずこの「比較ネタ」はこんなところです。何か他に知りたいことがあったら是非コメントください。