不動産ファンダメンタルズ投資 |
10月16日のブログで触れましたが、アメリカの不動産投資は、リターンの大半がキャピタルゲイン(物件の値上り益)であることが通常です。ただ、単に「値上がりしそうだ」と言うだけで投資をするのは「投機的」と言わざるを得ず、特に昨今では住宅バブル論がしきりに取りざたされているので心配は尚更です。
その心配に対する一番の対処方法は市場価格より割安な物件を見つけることなのですが、それと同時に「物件がどこまで値上がりするか」について、ある程度のビューを持っておくことが重要だと考えています。
これはある意味で株式のファンダメンタルズ投資と同様の考え方で、今の市場価格はこれくらいだが、この会社(物件)の潜在価値はこれくらい、と言う見方に基づいて長期投資をするわけです。不動産の場合、その「潜在価値」は「物件のフェアバリュー(公正価格)」、「その物件の妥当な値段」と言うことになります。
その「潜在価値」の予想方法ですが、株式投資ではDCF(キャッシュフロー割引)モデルなどを用いて計算しますが、10月15日のブログにも書いた通り、不動産の場合には「住民の購買力」を見ることである程度予想できるのではと考えています。別の言い方をすれば、特定地域の所得水準に照らして「どの程度の値段までが購入可能範囲(Affordable)か」を見るわけです。
その際に、現在の住民の所得水準はもちろんのこと、所得水準の変化や失業率の推移、その地域の特性(学区のレベル、住民の属性(Demographic)、企業の誘致状態、コミュニティサービスなど)、道路建設計画や区画整備計画などの特定要因など、物件の価値に影響を与えそうなことを色々検討します。また、既に値上がりした地域の状況を分析することも「潜在価値」の予想に有用です。
こうして物件のフェアバリューがある程度予想できると、保有期間の期待リターンを計算することが出来ます。
例えば、今30万ドル(約3,500万円)の家があるとします。この家はとても魅力的な地域にあるため、過去数年に全米平均を上回る「年率15%」で値上がりしているとします。そんな時、「こんな上昇率が続くわけない」と単純に思うのではなく、仮に今後3年間同率で値上がりが続いたらどうなるかを計算します。そうすると、その家の値段は3年後には45.6万ドルと、円換算で5,000万円を超えることになります。その金額がその時の周辺住民の所得水準と照らして妥当な金額かを判断するわけです。
そして、仮に「38万ドル(約4,200万円)くらいが妥当だろう」という結論に達したら、その数字を使って期待値上がり率を逆算します。3年で30万ドル→38万ドルだと、年間8.2%(過去の約半分)の上昇率と言うことになります。この程度の上昇率でも、住宅ローンの「レバレッジ」効果があるので、投資利回り(IRR)は年利38.7%と言う驚異的リターンとなります。(30万ドルの家を10%の頭金で買ったとすると、3万ドルの投資元本が38万ドルの売り値-27万ドルのローン残高-3万ドルのクロージングコスト=8万ドルになるため。)
もちろん、前回のブログに書いた通り、その物件がプラスのキャッシュフローを生み出すことは必須です。また、景気の冷え込みなどで期待通りに値上がりしなかったり、最悪の場合には物件価格が値下がりして損失が出る可能性もあります。その時に備えて十分な手元流動性を確保するのが重要なのは言うまでもありません。
日本からアメリカの不動産に投資出来るか
こうやって考えると、色々なリスクはありますが、やはりアメリカの不動産は極めて魅力的な投資先です。そこで、「日本に居住したまま投資できないか」と日本にいる知人からよく聞かれます。
その答えは、一言で言うと「出来るけど難しい」です。最大の理由は、Social Security(納税者番号)やクレジットヒストリー(アメリカで一般に用いる信用調査基準)が無いため、住宅ローンの借入が困難だからです。それでも現在、不動産投資仲間と、色々な方法を模索中です。実際には不動産持ち株会社を作るなり、信頼できる人とパートナーシップを組むなり、いろいろ方法はあると思っています。いい方法が思いついたらまたご紹介します。
アメリカに来たばかりだがそのうち不動産投資を始めたい、と思われている方は、クレジットヒストリーを作るために、最低でも3つのクレジットライン(カードや自動車ローン)を最低2年間、アクティブに開けておくことをお勧めします。